関東・関西食虫植物フェスティバル(?) 〜関西‐神戸集会編〜

稲穂 徳人

11/1,事件は起きた。これは、食虫植物の世界においては一部の人間にとってまさに事件と呼ばずにはいられない出来事である。関東のみならず全国的にもうお馴染みの浜田山『食虫植物の部屋』と、こちらは浜田山に遅れる事半年後に発足した関西食虫植物連盟&探索会の会合がなんとブッキングしてしまったのだ!以前も、赤塚氏を中心とするTCPSの見学会がブッキングしてしまった事があった。さて困ったぞ、と思っていた矢先に私の携帯電話に一本のメールが。関西は勿論、関東にも度々足を運んで下さる間渕氏だった。内容は、関西の集会のスケジュールを中心としたものだが、最後に、私に浜田山を諦めさせる一言の殺し文句が。『内藤さん・土居さんが来ますよ』。この御両人は関西は勿論全国的にも言うまでもないビッグメジャークラスのエキスパートで、内藤氏は言うまでもなく関西の総元締、越川氏と並ぶ戦後の日本の食虫植物界を支えてきたオピニオンリーダーである。上居氏は、以前拙誌でも紹介したが兵庫フラワーセンターの栽培主任で、ネペンテスの質・量ともに日本最高レベルを誇るスペシャリストだ。サラセニア、ダーリングトニアの栽培にも力を注いでおられ、バックヤード(栽培温室などの育成の施設)には、土居氏が交配されたサラセニアの実生が沢山置いてある。そちらは、またゆっくりお話しよう。

新幹線に乗り込み、ふと思いついたのは今回のホストである星野氏と、関西の若き冒険家、そして関西の集会を引っ張る発起人でもある宮本氏の名前。また宮本氏とは同じJ-PHONEユーザー同志で、スカイメールという簡易Eメールも可能な機種だ。さっそく、神戸で落ち合おうとメールをする。そして、神戸の元町という駅に着いてみると、反対側の階段から星野さんが。そして、コンコースで雑談をしていると宮本氏が。「さんざんメール入れたんやけどねぇ。改札が2つあるから西日の方で待ってる、て入れたん届かんかった?」う〜ん、届かなかったなぁ、と言ってる間に二人の携帯がピーッ!私の方には宮本氏のそのメッセージが、宮本氏には私が新幹線の中で入れたのが届いたようだ。「なんや、今頃届いたんか」と大笑い。お喋り感覚でメッセージがやりとり出来るので実に楽しい。パソコン通信とはまた違った楽しさだ。といっても、私は今だにパソコンを持っていない身だが。

会場の県民会館12階に辿り着き、会場のセット。何時もは10人程度なので余り広い会場を取っていないそうだが、今回は関西でも久々のビッグイベントになるという触れ込みなので何人来るか分からない。暫く、宮本氏とカメラや携帯電話の話をしていた。「今から携帯買うなら絶対J―PHONEやで―。こっちの方は全国で使えるし」と、J―PHONEの便利さを強調している。

やがて、間渕氏登場。ピンギキュラをよく関東の集会でも植物を運ぶのにみんなが使う小さな手提げ式のコンテナボックスにいっばい詰めている。彼は、朝5時起きで内藤氏と大阪の新谷氏の栽培場に遊びにいってきたらしい。私も誘われたが、時間の都合で泣く泣く辞退させて貰ったのだが、「来なくて良かったんだか来た方が良かったんだか。・・・
。いや、来た方が良かったですねぇ。何しろ、ピンギのバカでかい開花株がもう気が狂う程ありましたからね」などと、またまた私を身悶えさせるような事を言う。みると、moranensis roseiの春及園系、macrophyllaの特大株、TinaだかGinaの花芽付き株などなど、珍品ではないが見事なものをゲットしてきたようだ。もっとも、春及園のroseiなどは開花したものを見る機会などまずないので、珍品といってもいいだろう。

やがて新谷氏も登場、間渕氏の言う通り、開花株か開花見込みクラスの大苗を20鉢は携えている。その後も続々と参加者が来場し、10数人の人で会場が埋まった。まずは宮本氏の写真展。といってもただの写真ではない。南アフリカで撮影してきた、超々貴重な写真ばかりだ。中には、まず自生地の姿を見た人はいないであろうD.regiaや D.alba,D.sp floating Roridula…とにかく、テーブルいっぱいに並んだ写真のほばすべてが初公開のもので占められている。本人は至って気楽な田調で解説しているが、実際は命懸けの旅だったらしい。私も、多肉植物を見に南アフリカヘ何時か行ってみたいと話した事があったが、「やめとけ、食虫植物の比やない程苛酷な所に生えとる。はっきり言って死ぬで」と脅かされた。考えてみれば、どちらも苛酷な所に適応する為に一方は虫を捕らえて栄養にし、もう片方は葉の形を変化させて貯水能力を高めたのだから、観光気分で行ける訳がない。「せやったら、オーストラリア行こうで。ノーザンテリトリーのビブリスの自生地とか探そうや」と。来年の夏に向けて、今から貯金をしなくてはなるまい。

そうこうしている内に、内藤氏登場。何時もながら大量の荷物を抱えている。展示品はサラセニアとピンギキュラの開花株が中心。特に、余りにもでか過ぎる巨大なS.psittacinaに皆が圧倒されていた。
次に、内藤氏のスライド上映。古い貴重なものから最新の写真まで、色々取り混ぜながら栽培に関するお話をして下さった。「栽培は、何時でも一年生。その年の気候によっても栽培する技術は変わってくるし、その会得した技術はその人が死んでしまったらもうその代で終わり。勿論、何処まで行っても完全な栽培法はありません」という言葉は、内藤氏のように何十年も続けてきた人だから言える言葉だ。また、「植物は3年目まではうまく作れる。それまでは上手な人に教わった通りに作るからうまくいく。でも、3年目くらいになると我流が出てくるので、そうすると気候の変化などに対応しきれず、枯らすものが出てくる」というお言葉は、まるで私に向けられたようで胸が痛かった。だが、「それを乗り越えて初めて園芸はうまくなる」という言葉に救われた思いがした。また、葉面散布剤の話や、普段何気なく使っているもののエピソードも話題に昇った。滅多に聞けない話なので、みんな熱心に耳を傾けていた。
堅い話はともかく、写真の方は実に面白く、兵庫のフラワーセンターの展示会の時のものでは、土居氏が実生してバットいっぱいに育てたハエトリソウに全員が歓声を揚げ、見事なネペンテスの写真が飛び出すと、棒で指し示している間渕氏が「これこれ!」と興奮している。彼は確か現地で実物を見ている筈だが、それで尚この有様なのだから凄い。

展示解説では、内藤氏が持ち込んだP.zecheriの花が違う、とぼやいている。内藤氏や新谷氏が分からない、間渕氏も分からないでは誰も知っている者がいない。問渕氏、「あそこに煩さ型の人がいますよ」と棒で私を示す。それは、どうも私のようだ。花の色と、出所は国松氏だと聞いたので、すぐにP.zecheri x agnataだと分かる。私も同じものを持っているが、購入した業者がラベルを混同してしまい、間違って普及したものと思われる。新谷氏のP.marcianoも国松氏からのもので、多分同じ業者だと思うがP.moranensis mexicanaという名で売られていたものらしい。また、交配種やモラネンシス系のものを頼むとP.Weserが来るという話は有名で、値段も高い事とトリフィドがポピュラーになって来た事で今は殆ど買う人はいない。ただし、サラセニアなどはいいものが来るし、トリフィドにはないものも勿論ある。リスクを冒してでも手に入れたいものがある人にしか勧められない。

また、関西では余り見られない特大のP.giganteaも注目株で、即売では飛ぶように売れたようだ。また、即売といえば、新谷氏の特大ピンギは人気が高く、200円という安さも手伝って一人2個も3個も買う人が多かった。しかし、一番長距離(広島から来ている方以外は殆ど近県の方)から来ているのに、5個程残っていたものを全部買い取ってしまった馬鹿者がここにいた事を特記しておこう(要するに、私です)。新谷氏とは、ピンギの交配について色々話をした。新谷氏はまめに交配を行なっており、P.agnata x emarginataという品種を作出、開花させたとの事だが、いまいち花の形に不満が残ると仰っていた。セルフ交配では、交配種の場合ではなかなか花粉が着かないものがあり、どうしても異なる親同士の花粉媒助をしなくてはならないそうだ。しかし、同一個体を沢山持っていなければ出来ない話で、羨ましいといってしまっては失礼だが、新谷氏や内藤氏でなければ出来ない仕事だ。関東では佐藤大作氏や服部氏が頑張っているから、年配のベテラン勢ばかりという訳でもない。私もピンギ再興をはかり、交配に取り組まなくては。 会が退けても、会場の1階の喫茶コーナーで話が弾み、更にその内の半分以上はラーメン屋に、という関西系パターン。私は星野氏と阪神ラーメンを頼む。何だか分からずに頼んだら、ラーメンの上にトンカツが乗り、薄焼き卵と海苔で黄色と黒の虎縞模様が描かれた、トンコツスープのラーメンだった。800円と関西にしては高めだが、なかなかいけるので神戸・元町にお越しの際には探してみてほしい。 これから、私は翌日のセカンドステージ、そしてインターミッションが控えているのだが、ひとまずここでワープロの電源を落とそう。

展示品

星野
D. ordensis, D. petolarais, D. fulva, D. caduca

宮本
D. sp. zambiana N. rajah

間渕
D. sp. miyamotii in dormant form? (small rosett species like D. trinervia,  discovered by Miyamoto at Gifuburg, SA, and collected by Eric Green)  D. curviscapa var. esterhuizenae D. unknown sp. " Cape, SA" (large rosett species like D. curviscapa, discovered by Thomas Carow and E. Green)  D. stemless chrysolepis (small)D. ascendens glabrous x ascendens hairy   (small, similar to D. villosa so called) D. sessilifolia from A. Lowrie, maybe burmannii  D. sp. pretty rosette H. heterodoxa x minor

内藤
S. leucophylla true (inported in 1966) S. alata, S. flava, S. minor, S. oreophila S. purpurea, S. rubra, S. psittacina S. psittacina 'extremely big(>5cm) top' S. leucophylla hybrid P. zecheri x agnata (flowering)P. Gina (will flower soon)  P. macroseras群植

山崎
P. pumila (flowering)

新谷(分譲品ですが素晴らしいものばかりでしたので載せておきます)
P. moranensis "Shunkyu-en rosei" P. agnata x gypsicola など開花株多数