ムジナモの栽培について

間渕通昭

【よくいわれる栽培の基本】
大きな甕、水槽の底に田土を入れ、スイレンや菖蒲などの水生植物を水質安定のために植える。水を張り、藁を投入、数日して藁からの浸出液で水が褐色になったらムジナモを放流。毎日上から水をやる。

まず水質環境について
1.弱酸性pH7.0弱を保つ工夫は?
* アオミドロが発生したりアルカリ性に傾き始めたらピートを使用する。夏にアオミドロが発生し始めた時などはアルカリ性になり始めている事が多いので、アクアリウムなどで使用するブラックピート(私自身は使ったことが無いので本当の効果は知らない)あるいは粒状のピートモス(私は最高級品を用いている。鹿沼土などもpH降下のみには効果があるが全般的にはピート類が好成績)を網袋に一握り詰めて1-2週間ほど沈める。水が澄んだ褐色になれば(タンニン酸のおかげか?)水質はかなり良好になるはず。植物が調子を崩さないようであれば入れたままでもかまわない。
* 自然のフィルタをフル活用する(ここは松井氏のHPの受け売り)
 戸外の栽培では、外的な要因で環境変化を招きやすいので、自然のフィルタである硝化バクテリアやアシなどの抽水性植物及びホテイソウなどの浮遊植物の相互作用をうまく利用し水質の浄化と安定化を計ることがポイントとなる。これらのシステムの良いところは、うまく稼働していれば足し水だけで手間いらずと言うこと。このシステムの流れは
 o 日光により光合成を誘発される。 足し水により水中のCO2含有率が上がる。
 + →光合成によって水中の酸素含有率が上がる。
 例えばより好気性に保つためロタラ・インディカを入れる、元々アクアリウム用のものだが、非常に丈夫で、無加温で凍ってしまっても全滅せず春になると芽を出す。
 + →酸素の量が増えたことにより硝化バクテリアが活発に活動する。
 + →バクテリアが活発に活動するため、水の有害物質が硝酸塩へ浄化される。
 + →ホテイソウなどの浮遊性水草が硝酸塩を養分として吸収し、窒素ガスとして空中へ放出される。(浄化終了)
 + →沈殿した有機物は抽水性植物の養分として吸収され、窒素ガスとして空中へ放出される。(浄化終了)
上記からもわかるように、足し水は毎日午前中に行った方が有効に働く。なお、水が濁るとバクテリアの活動が阻害されるので、底土は最初洗ってから入れる、「水が澄む錠剤(バクテリアの活動を促すらしい)」「麦飯石」を有効利用してみるなど。

2.熱帯魚屋で売ってるpH調整剤は有効?
水草をやっている人たちは「有効」、6.5以下にしても全然かまわない、原液が植物にかかっても大丈夫、とか。
食虫植物の関係者は「燐酸系バッファーなので他の不純物も含み、長期的には水の富栄養化など水質悪化やムジナモの生育障害になる可能性がある」。

3.水が腐るときの対策は?
4.どんなときに水が腐る?
水が動かないとき。アンモニアが発生、バクテリアが働く温度まで気温が上がらず、また浄化のバクテリアが働かず嫌気性のバクテリアが活動したとき。最初からやり直すというのが、根本的な解決策。底土の匂いをかいでみてどぶくさい腐敗臭がしたらアウト。上記の自然のフィルターの活用を参照のこと。こういうときは水を多めに入れ替え、また腐敗の原因となっている腐った藁などを取り除き、水が澄むというバクテリア錠剤を投入するとそこそこ効果がある。

5.どういう風にムジナモは消える?
枯れるときは成長点が貧弱になり、下葉が物凄いはやさで力を失いばらばらになるように消える感じ。あるいは茶色く透けるように消える。

6.藁の投入について
藁は懐疑的な意見がいくつか出た。藁を入れるのはゾウリムシの簡易培養と同じで微生物の栄養源にするのが主で、場合によっては水質の悪化を招くだけのこともある様子。微生物を育てるなら他の容器でパン酵母を餌としてミジンコなどを育て、良く洗ってから定期的に放流した方がよいのでは。また藁を入れると必ずといって良いほどすぐにアオミドロが発生する。
一方で藁を投入すると独特のピカピカした油(バクテリアの仕事の成果?)が浮いたような水面になり、このぴかぴかが出ているときは植物は元気、三重県柘植村のタヌキモ自生地でもそう。

7.雨水って水質安定によくない?
何ら問題は生じないという報告もよく聞くが、大雨で水質が変わることは時々ある。概して雨水は有機物が多く、腐敗が早い様子。本来は土壌にしみこんで磨かれた水(井戸水に代表される湧き水)でないと駄目。むしろ飲料用に調整された水道水の方が安全。塩素の功罪についてははっきりとはしないが「無い方がよいが順調に成育しているところに放水する程度ではあまり悪影響ない」

その他の環境について
9.日照はどの程度がいい?
10.暑さには強いというが、どのくらいの温度にまで耐えられる?
できれば終日当たるのがいい。タヌキモの方が高水温に弱いのに対し、ムジナモは水温が高いほど調子が良く、増殖も活発。ただし猛暑で水温が40度以上になる時は50%ほど遮光するほうが安全。下手をすると成長点が真っ白になる。しかし、ムジナモが半日陰でも十分生育できることは確認されている。半日陰に置いたら赤味を増したという報告も(他の要因もあるかもしれない)。
水温が33℃を越えないように注意する。水温を上げない工夫として、時々水を付け足してやるとか、水面を覆う水生植物(例えばヒシとかサンショウモ)などを浮かべてやる。ただ、このときはそれらの植物で水面が全部覆われてしまうと都合が悪いので、ムジナモが浮遊できる水面を確保してやる必要がある。

8.底土は何がいい?
11.水質の安定に入れる水生植物、あれは無駄?
水槽の中の水草栽培をする上で水質とCO2が保たれていれば底土と水生植物はなくてもよい。戸外栽培を行う上では環境を保つために「自然のフィルター」の小道具の1つとしてあるほうがよい。春先の?田んぼの土は微生物も良く発生するし、落ち着きが良い。PH調整に用いる?酸性用土-鹿沼土、ピート、桐生砂を入れるのもよい。スイレンと菖蒲は水質安定のためには殆ど無効。これを入れたから水が腐らないという保証は無い。とくにスイレンはムジナモの広がる水面を覆うのであまり好適でない。ガマ、ヒメガマ、シベラスの評判がよい。底土が無いときはホテイアオイが好都合。シペラスやホテイアオイは肥料食いなので水中の窒素分を吸収してくれるので藻類の発生を抑える。ウオーターキャベツはアオミドロの発生を誘発するようでよくないらしい。

12.アオミドロ対策は?
発生したらこまめに取り除く。これしかない。多少のアオミドロが発生する環境はムジナモはムジナモにとってベストではないにしろまずまず共存して生育できるし、多少絡まれてもムジナモは枯れることはない。しかし大発生し水面にアオミドロのカーペットができるようになると(雨によって水質が替わったときに多い)水質の点で問題あると考えなくてはならない。こういうときはpHは上がっていることが殆どなのでPH降下の手を打つ必要がある。状態が酷いときは焼きミョウバンを使う。一応ムジナモには影響はない。また木酢液とか過酸化水素が良いとか書いてあるが、ムジナモへの悪影響があるかはよく分からない。ミジンコを投入すると食べてくれるというが、これについても根本的解決ではないだろう。他の藻類の発生も同じ。

13.水槽は大きい方に越したことはないが、水深は深いほうがいい?
水深は深いほうが安定する。できるなら、容器は温度と容器の安定のために半分以上土に埋めたほうがいい。深いほうが越冬時にもよい。

14.ミジンコはえさとして必要? 肥培は?
強いて要らないと言う話もあるが、水質安定という観点からもあった方がよい? また、水草の本ではムジナモには水草用の液肥が効果が高いとある。水草用の一般市販の物でかまわないらしい。勿論、肥培は水質、日照などの条件を整えて初めて有効になるもので本末転倒になってはいけない。

15.魚やタニシは益なのか害なのか?
害のほうがある(?)。ボウフラなどを食うカワバタモロコがいいという噂があったが、そんなに役に立つ奴ではない。タニシは入れると確かに藻などを食べてくれるが、糞をするのでむしろ底面が汚れてしまう。増殖に注意。魚やタニシは入れずにとにかく頻繁に水換えを行い水質を綺麗にする方が良い様子。

16.エアレーション(ポンプでぶくぶく)はした方がいい?
NO。アクアリウムでの水草栽培では昼に二酸化炭素を添加、夜に酸素添加のためのエアレーションと分ける。昼間にエアレーションすると却って水中の二酸化炭素が飛んでしまうので、ムジナモのような光合成時に二酸化炭素を多量に必要とする水草には良くない。

17.水草栽培でよくやるCO2添加の効果は?
絶大。水草の本にはムジナモは光合成時に二酸化炭素を多量に必要とする水草でCO2の添加が特に効果ありとされる。飽和状態まで二酸化炭素を吹き込むと植物に物凄い勢いがつき人工灯でも見事に栽培できる、という報告もある。可能な限り入れてやるのがよいだろう。水を弱酸性にするという意味でも効果があるのかもしれない。

18.各種CO2添加GOODSを使用した感想について
水槽での水草栽培ではCO2ボンベを常備するが、ボンベ、レギュレータ、タイマー等一式揃えるとかなり高価。金のかからない方法としては、Niftyの水辺のフォーラムで紹介された砂糖水を市販のパン酵母で発酵させCO2を1週間くらい安定して発生させる装置を自作し使用される方も多い様子。手間と費用を考えると、市販のCO2のスプレー缶と拡散筒でもかなり効果がある。小さい容器ならこれでも1日1回で適正濃度(10〜20mg/L)はクリアできるが、撹拌もしてないので濃度ムラはあるだろうし、結構いい加減な方法。一応、1本のスプレー缶で2ヶ月くらい持った。大きい容器では量的に苦しいでしょう。結局、観賞用ならアクアリウム水槽でCO2ボンベというのが無難でしょうが、日本産ならCO2無しでも戸外で良く日光を当て水質を爆発的に増殖するコツをつかむ方が良い。日照が十分だとCO2濃度が低くても大丈夫なのかもしれませんね?以上。私もCO2缶とCO2リキッドを試してみましたが、結構効果があるように見えた。

19.どんなときに花がつく?また種子のとり方育て方は?
やはり、水温がポイントか。種は水中にもぐった花茎に着き、水のなかで種が播かれる。PH低めでずんぐりした(長くはない)株の多い水槽では今なぜか狂うほど咲いている。自家受粉だが、助けてやらなければ結実の確率は少ないらしい。

20.うまくいくと爆発的に殖えるというが、増殖率はどのくらい?
絶好調のときは、5日から1週間で1株から3株は殖える。1週間で3倍!ムジナモが増殖できるだけの生育水面を確保してやることも必要。しかし、うまくいけば大量増殖ということのみに目を奪われ、実際そのような状態にするのは中々難しいということを忘れないよう。特に一度悪くなったら大半は回復できず消滅すると覚悟しておくべき。水槽を複数作る、調子を常にモニターする(実際上手く言っているときは本当に手間いらずだが)ことは必要。

 チェコの研究所にて絶滅危惧種のムジナモの環境と生育の関連に関する研究をしているLubomir Adamec氏が日本に短期滞在すると聞き、この秋教えを乞いに行ってきました。同時に研究施設でのムジナモの栽培状況も見せてもらってきました。彼らの栽培法は基本的な日本での従来の方法に類似で、異なるのは日照条件(後述)くらいのものです。戸外での桶に砂(特に気は使っていないらしい)、Caloxなどの廷水植物を植え、藁(多くなくてよい)を入れています。別のところで述べたようにこのところ藁の投入について疑問視されていますが、これでうまくいっているのを見るとやはり少々考えてしまいます。なお、アオミドロなどは全く見られませんでした。さて、豪州産の赤い系統について書いていきます。

 栽培は基本的には日本産と同じですが、我々がつくってみるとやはり少々気難しいようで日本産が上手く行っている所でもこちらは駄目という話を聞きます。決定的なポイントは未だ不明です。CO2添加すると機嫌がよいというのは事実ではあります。
 彼の指摘で気になったのは豪州産に限らず夏の水温上昇には気をつける、ということです。これまで言われてきたこととして「夏ばて知らず、日にはガンガン当てろ」ですが、自生地ではそこそこ大きな沼で、マコモやガマ植物の生える隙間にひっかかるように生育するのだから、水温と日照密度はさほど高くないのは当然で、それを再現するとすれば、マコモやガマを生やすか遮光するということのようです。実際、当方でDarwin産を40度以上にしたら芽先が枯れましたし、知人のところでやや日当たりの悪い環境の方がよくでき、赤くなったという報告も複数聞きました。さて、問題の1つは冬越しです。特にDarwinなどは熱帯に近いので耐寒性が劣るのではといわれてきました。そこで現在彼らはこのような3形式でやっています。

(1)25度程度に保って熱帯水草の栽培法に準じて栽培する。水質(酸度)保持は夏期同様、原則としてCO2添加。
(2)一応冬芽は作る(下葉は殆ど枯らさないで残るのが特徴)ので小さな水槽で室内の窓際におく。そのままで維持。彼のところでは藁くずを少し底に入れ、水もあまり替えない(水質管理はあまり気にしていない様子、これでいいのか?)、毎朝息を入れる(CO2添加のつもり?たんなるスキンシップ?)
(3)戸外では下葉もなくなり冬芽のみになる。但し日本産より細く(Sydney産は丸い、Darwin、Kimbary産は細め。色はいずれも条件があえば赤い)沈みにくいので、寒さに負けたり、消滅したりする可能性は日本産より大。こもをかけて(日照がなくても気にしない)保護。あるいは冬芽だけつまみ出して、冷蔵庫(2-3度で安定している、やはり光は気にしない)置いておく。春に通常の栽培に戻す。
最後に一番気になるところ、「どれぐらい赤いか」です。この種類はどれも微妙な環境で赤くなったっり緑だったりします。彼にも詳細は未知のようで、日照、温度、水質特に微量成分-特にBoron(ホウ素分)の濃度が関係するのではということでした。見に行った施設のものは全てイチゴの如く赤く染まっていました。当方では夏にDarwinの芽がオレンジ色っぽくなるのと、秋以降に夏まで日本産と区別がつかなかった紅葉なのかSydneyが赤紫っぽくなるものがありました。しかし同じ桶でも全て同じではないというのが現状です。うまくいけば観賞価値十分ですが、それが容易に達成とまで行ってはいないのです。

 最後に、私としては初の冬越しですが、1の方法は友人らに任せ、当面彼らの2と3の方法でやってみるつもりです。11月初旬現在、日本やヨーロッパ産のものは冬芽になっていますが、豪州産はまだ枝分かれしつづけています。