Nepenthes栽培ノート(T)
越川幸雄
ネペンテスの栽培に関しては、今までにもいろいろな手引書に出ていますが、それは普通の入門者用のものが大部分で、それ以上突っ込んだ栽培方法は書かれていないようです。そこで、今度各季節ごとのポイントを少し詳しく拾い出して、連載の形で発表してみたいと思います。
現在、この原稿を書いているのは10月で、秋の中頃ということになります。いかに暑さ好きのネペンテスでも、日本の真夏の暑さは応えています。今になってその疲れが出ています。植え替えは今が適期かと思います。ネペンテスは根が弱い植物で再生力も弱いので、取り扱いは慎重にしたほうがいいでしょう。細い根はできるだけ切らないように、外側の根鉢を崩さないように、内側の古い植え込み材料を出来るだけ取り出して、新しい植え込み材料と換え、外側から古い根鉢を押しつぶすようにして、前より一回り大きい鉢に植え、、回りに新しい植え込み材料を詰め込むのが良いと思います。時には完全に古い根を整理する必要もありますが、この場合はミズゴケで一度小さな鉢に植えて、新芽が伸びてくるのを待ちます。
植え込み材料はミズゴケが良いのですが、植え替えの手数がかかる上に、長持ちしないのが欠点です。砂利系のものは水切れを起こしやすいですが、腰水にしておくのもひとつの方法です。砂利に細かく切ったミズゴケを混ぜて使うのも良いでしょう。現在私は砂利系のものにベラボン(ヤシの樹皮)を混ぜて使ってみています。ベラボンだけでは一寸水切れが悪いので、これで調度良いのかと思ってます。砂利としては鹿沼土、軽石、日向土などがありますが、やや酸性のものが良いようです。鉢は深さが10cm以上のものはかえって悪いので、直径が大きくなったら浅鉢にするか、そこに発泡スチロールなどを詰め込んで、浅くします。根はどちらかというと表面に浅く広がりますので、大鉢になったら、表面積を広くする必要があります。その意味で、深植えは駄目でグラグラしても浅植えにして、支柱で保護してやりましょう。
潅水は原則として毎日十分にやります。ネペンテスに限らず一般に食虫植物は根部にいつも水が通っていることが好きなので、必要なだけをやるのではなく、充分鉢の中を水が通ってゆく様に潅水します。毎日潅水して鉢が湿りすぎる様なら、植え込み材料で加減する必要があります。砂利系のもので植えたときは砂利が流れ落ちるのを防ぐことと、乾きすぎを防ぐ意味でミズゴケを表面に薄く並べるのも良い方法です。
毎日の潅水は朝がいいでしょう。そして出来れば夕方から夜に葉を軽く濡らすように、水をやるのも尚良いでしょう。これでハウスを締め切れば、夜の湿度が保てます。これは加温が始まれば、なお必要なことです。
夏の暑さで少し疲れたネペンテスは、今新しい葉が伸びている筈です。この葉は、夏に出たものよりも大きめになっているはずです。このよう状態が暫く続いて加温とのバランスがうまくゆけば、良い状態が続くはずです。加温さえうまくいけば、かえって冬のほうが栽培しやすいものです。
剪定のことを一寸付け加えておきます。ネペンテスは普通は枝が出ませんから、茎はだんだん長くなってしまいます。そしてやがて下から新しい芽が出てきます。このとき古い枝の勢いが無くなってしまうようでは、根の発達が充分ではないのです。 大きめの鉢で根が充分に発達していれば上の枝も弱りませんし、下の芽も大きく立派に出来ます。そしてこの下の芽に袋がつくと良いのです。
さて、この上の枝の剪定方法です。昔は大体この枝は根元から切ってしまって、挿し穂を取るか、捨ててしまうことになるでしょう。挿し穂をとるにしても、頂芽の部分と途中の部分では、活着率に大きな開きがあることは皆さんご存知でしょう。それに管挿しで作った苗は下から脇芽が出てくるチャンスが少ないので、その後の株の出来に問題があります。頂芽で作った苗は土中に発芽部があるので、この点うまく行くのです。そこで、長い枝をいきなり根元から切らずに、先ず先端の4枚〜5枚くらいのところで、切って挿し穂を一本取ります。そして暫く栽培すると、切った所から脇芽が出てくるはずです。これを約3ヶ月〜6ヶ月後にかき取って挿し木をしてやれば、発芽率もよく、出来た苗も上等のものになります。なお、この脇芽をかき取ったあと、そのまま栽培を続ければ、又次の側芽が取れることがあります。
挿し木のことも一寸書きましょう。挿し木の方法もいろいろ言われていますが、決定的な方法は残念ながらありません。ただひとつだけ言える事は、切り取った穂をすぐ挿すより、暫くおいて切り口が治ってから挿した方が良いようです。
方法は、切り取った挿し穂をビニール袋に入れ密封し、しおれないようにして4〜5日おき、切り口が乾燥してから挿し木をするのです。これで初期に腐敗菌にやられることを防げるようです。