商店街・市民の共同で行政を動かし、大型店出店に対抗 ['04.11.9]
         仙台市議会 日本共産党仙台市議団幹事長  福島かずえ

  この文書は、『議会と自治体』誌(日本共産党中央委員会発行)の依頼で福島かずえ議員(日本共産党仙台市議団幹事長)が 2004年5月に執筆し、同誌7月号に掲載されたものです。小見出しは、市議団がつけました。

 全国初の立地法にもとづくイオンへの「勧告」

 今年4月21日、仙台市は業界最大手のイオン株式会社(本社千葉市)の24時間スーパー「マックスバリュー仙台郡山店」(市内太白区)出店に対して、駐車場の改善がみられないとして、大規模小売店舗立地法に基づく「勧告」を出しました。

これは、2000年6月に同法が、施行されて以来全国で初めて出されたものです。

 これに対して、イオン側は23日、駐車場の場所を他に移すと市に変更の届出をだし、市の勧告に従う対応をしました。
 昨年6月に出店届出がされた「マックスバリュー仙台郡山店」は、イオンが仙台市内で展開する二十四時間型の店舗として、宮城野区幸町店に続く二番目のものです。

 店舗面積2,853u、駐車場収容台数は135台、生鮮三品や日用品中心のスーパーにドラッグストアを併設しています。規模こそ小さいものの、道路条件が悪い住宅地にむりやり24時間営業で乗り込んで住環境を悪化させるという、深刻な問題を持ち込んでいます。

 出店予定地は、かつての農地がミニ開発で宅地化され、農道がそのまま生活道路となり、狭隘な道路が多いという住宅地のど真ん中で、通学路に指定されている狭い道路に囲まれています。

 問題の駐車場は、イオンが当初予定した隣地の土地取得に失敗し、敷地内に必要な駐車場を設置しきれないため、店舗からさらに住宅地内に入り込んだ、離れた土地に設けようとした第二駐車場(34台分)です。周囲の道路は車の交互通行さえ困難な幅4bから5bの極めて狭いもので、小中学生の通学路にもなっており、住民は安全確保を強く求めていました。

 市の大規模小売店舗立地法専門委員会からも、この第二駐車場は「不適格」とされ、「店舗敷地内に駐車台数を確保する等適切な措置を講ずる」必要性が指摘されていました。

 市は、今年2月に、住民や専門委員会の意見を踏まえ、イオンに対して、交通や騒音問題について立地法に基づいた意見書を出しました。特に第二駐車場については認めず、敷地内に必要な駐車台数を確保することを求めていました。

 しかし、意見書に対するイオンからの回答では駐車場について適切な対応がされていなかったため、市は第二駐車場について「勧告」の措置をとったものです。
  (図 卸売・小売業は、仙台市の地域経済で大きな比重を占めています)


 深夜オープン、青少年非行問題でも市は独自の「要望書」

 立地法では、周辺の生活環境を維持するための条件をきわめて狭く、交通や騒音、廃棄物の問題などに限定してとらえ、しかも遵守する規準も絞り込んで定めているため、それ以外のことは、「意見書」や「勧告」に盛り込めないと考えられています。

 仙台市は立地法の運用指針に欠落している事項については、独自に「要望書」という形をとり、出店者に市の意向を伝えています。

 郡山店の出店に関しても、市は勧告に先立つ19日に「要望書」を出し、
@、
オープン初日(27日)の午前0時という開店時間の見なおし
A、 24時間営業について「青少年非行の温床となり、犯罪等の発生が危惧される」ので、施設管理者としての適切な対応を求める
B、 出店によって生ずる問題の防止や解決のため、町内会など地域団体等へ積極的に参加・協力し、地域社会の構成員としての責務をはたすこと―

をイオンに求めました。

 これに対し、イオンは
@、
午前0時の開店予定を3時間早めて26日午後9時に変更する
A、 従業員、ガードマン等による施設の頻繁な巡回等、非行の温床とならない環境づくり及び施設管理を行なう
B、住民や地域団体等からの意見等については、十分に検討していく―

という回答をよせ、実際に初日のオープン時間を変更し、オープニングセレモニーもしませんでした。
 仙台市がこのような要望を出したのは、イオン幸町店についで二度目です。

 ジャスコ幸町店出店反対の取り組みの貴重な成果

 イオンが、昨年11月にオープンした「仙台幸町ショッピングセンター(ジャスコ幸町店)」は、売り場面積約13,322u、駐車場収容台数890台で、この規模としては、市内初の24時間営業の店舗でした。

 この出店計画に対して、地域住民を中心に「幸町・周辺地域の住環境を考える会」がつくられ、さらに宮城県春闘共闘会議と地域住民が一緒になって「幸町ジャスコ出店反対連絡会」ができ、市に意見書や要望書を提出し、署名運動や交通渋滞調査にも取り組むという、大きな運動をつくりました。
 (写真 幸町・周辺地域の住環境を考える会「過車流」ニュース)


 そうした取り組みによって、青少年の非行など、二十四時間営業がもたらす地域住民の生活や住環境に与える深刻な影響について、市に懸念を表明させることができました。さらに市はイオンに対し、地域社会の一員としての「企業の社会的責務」を求めるようにもなりました。

 市は「商業施設もコミュニティの中に存在する施設である以上、地域社会との融和を図るために努力することは企業の社会的責務の一つ」という表現を用いて、24時間営業によって心配される問題に言及した要望書をつくりました。そして、それを千葉市幕張にあるイオン本社まで市幹部(経済局長)が出向いて、直接手渡すまでになりました。

 残念ながら出店阻止までには到りませんでしたが、基本的な理念や姿勢を明確にさせ、市に「要望書」までのアクションをとらせたことは貴重な成果といえます。

幸町店出店でのこれらの運動の経験や成果は、今回の郡山店出店に対する住民の取り組みや市の対応の中に引き継がれ、生かされています。

 郡山店でも、咋年九月には、周辺の住民によって「出店を考える会」がつくられ、ニュースの発行や懇談会を重ねながら、地域住民の声をくみ取り、市やイオンと交渉を続けてきました。
     (写真 深夜営業を批判する「出店を考える会」のポスター)

   仙台サティ出店を阻止した商店主と労働組合、住民の共同の力

 大規模小売店舗法(大店法)廃止が決定された1998年には、市内太白区西多賀へのマイカルグループが計画した「仙台サティ」を、地域住民、地元商店会、民商、春闘共闘会議が力をあわせて出店反対運動を展開し、出店断念に追い込んだ経験があります。

 学習会を重ね、出店反対署名に取り組み、県議会・市議会でも請願書を採択させ、決起集会、住民集会、パレード、デモも行い、大きな世論をつくりだしました。

1999年のメーデーには、西多賀商店街振興組合長が来賓で招かれあいさつしたり、労働組合が主催する学習会に西多賀商店街から講師を派遣したりしてもらうなど、労働組合と商店街の人たちとの連帯感が強まり、共同のとりくみが大きな力となりました。

 

 「元日営業を許さない」仙台初売りを守る共同の取り組み

 この労働組合と地元経済界の共同・連帯の取り組みは、藩政時代から続いている「仙台初売り」を守る取り組みでも大きく発展しました。

 仙台市の小売業は8,651事業所、従業員数69,500人、年間販売額が一兆三千億円(2002年調査)です。従業員数の業種別構成比をみると卸・小売業で働く人が39.3%で、最も多くいます。業種別の特化係数をみても卸・小売業の占める割合の高さが歴然です(図)。古くから「商都仙台」といわれ、「仙台初売り」はその豪華な景品で全国的に有名です。

 伝統的に「仙台初売り」は足並みを揃えて正月三日に行われ、経営者も従業員も「正月くらいは家族揃って過ごす」、それがこの地域の商習慣であり、文化でした。

 しかし、2000年の大店法廃止で商業調整が禁止され、大型店の出店ラッシュが続く結果、1999年から2002年の間に、市内の卸・小売業はともに年間販売額、事業所数、従業員数のすべての指標が減少しました。「仙台初売り」も危機に見舞われます。

 こうした商習慣は、24時間365日営業のイオンなどの大手スーパーや量販店とは相容れないもので、大手スーパーや量販店は元日からの「初売り」や営業をねらいました。

 「このままでは、たいへん。元日も働かなければならなくなる。せめて正月くらいは休んでこれまで通り、家族と過ごしたい。なんとかしないと。」という思いは、経営者だけでなく、働く人々のなかにもひろがりました。

 中小企業の労働組合である全労連・全国一般宮城一般労組をはじめ、労働組合からも「仙台初売り」を守れという声があがり、九四年から春闘共闘会議は「仙台初売り」を守る運動に取り組んでいました。

 年末商戦でクタクタになるまで働きづめの商店主・従業員ばかりでなく、豆腐や生菓子などの製造業、卸問屋、運送業、金融機関、ごみ回収業、警備会社、公共交通など多くの働く人々とその家族から正月を奪う元日営業を許すなという呼びかけは「せめて正月くらいは家族で過ごしたい」というコピーとともに、市民の共感を呼び、地元経済界からも歓迎され、大きくひろがりました。

 議会や市長にあてて、仙台初売りを守る要望が春闘共闘会議や商工会議所から提出されました。こうした動きに対して、市長は大手スーパーや量販店に対し、「初売り」実施の足並みを揃える協力要請を行い、市議会では、2000年10月に、「仙台初売りが整然と行なわれますよう、関係各位が特段の努力を」することを求める決議を全会一致で挙げています。

 現在でも、大手スーパーや量販店は元日に通常営業をおこなうものの、景品付きの初売りは二日から行なう形をとっており、地域の商慣習に従っています。

 大型店出店に対する仙台市当局の姿勢や他自治体からみれば先進的な動きは、こうした広範な市民の息の長い運動によってつくられています。

 

 国に立地法「指針」改正を求める要望書を市が提出

 仙台市は昨年八月に神戸市で行われた政令指定都市の連絡会議の席上で、経済産業省の指針改正に向けて、「国への要望事項」取りまとめを提案し、積極的に取り組んできています。

そして、今年の四月二十六日に東北経済産業局に対して、仙台市は次のような立地法に関する要望書を独自に提出しました

 @、大型店が届出どおり実施しない場合、その内容について市が公表できる規定を新設すること。
 A、
以下について指針にくわえること。

 B、深夜営業についての青少年非行、防犯対策等に配慮する事項

 C、通学路や生活道路などの狭隘道路を来店経路にすることの制限

 D、公安委員会等の関係機関との事前調整の義務づけ
 E、
同一敷地内に併設される飲食店、映画館などサービス業店舗の騒音低減

 F、都市緑化等の観点からの緑地確保

 これらの要望は、立地法の不備を補うもので、この間、幸町や郡山地区の住民から突きつけられてきた問題を解決するために必要な規定であり、政令市が連名で同26日に経済産業省あてに提出した要望書より、踏み込んだ内容になっています。

 国は2004年度末までに運用指針の改正など、立地法を見なおす予定です。

 経済産業省では、昨年12月に各都道府県・政令市に対して「現行指針の課題、その対応策、修正又は追加すべき点はあるか」という調査をおこなっています。また、今年二月の政令市の連絡会議にも、参加し意見交換を求めたり、各地にヒアリングに出向いたりしています。 仙台市にも、今年二月に専門官がヒアリングに訪れ、マックスバリュ―郡山店の現地調査を行なっています。

 今が指針のみならず、立地法そのものをもっと実効性あるものに変えていく世論と運動を起こしていく絶好の機会と思います。

 当市議団は遠藤いく子党書記長とともに、4月16日、大門みきし参院議員を紹介議員にしておこなった経済産業省との交渉のなかで、指針の見直しによる改善と、大型店出店がもたらす既存店への影響を防ぐよう、抜本的な法改正をあわせて要望。指針については、「県や政令市が運用しやすいものに見直していく」という回答を引き出しました。
  (写真 大型店の規制を経済産業省に要請した(右から)嵯峨サダ子議員、福島かずえ議員、遠藤いく子・党県書記長、高橋ちず子衆議院議員、大門みきし参議院議員=4月16日)

 東日本最大級のイオン・ダイヤモンドシティの出店表明   

 一方で、2002年度に事実上西友を買収し日本進出を進めている世界一のウォルマートに対抗するかのように、イオンは仙台商圏への出店攻勢を強めています。すでに2000年、2003年に相次いで、東に隣接する利府町と仙台北部に接する富谷町にそれぞれ43,000uの店舗を出店しています。

 さらに、イオンは、昨年11月に、今度は仙台市の南に隣接する名取市に開発面積165,000u、売り場面積75,000u、駐車場4,500台という巨大商業施設ダイヤモンドシティの出店表明を行ないました。

 来年12月に立地法の届出、2006年2月着工、2007年3月頃の開店予定で、仙台駅から南の福島県、西の山形県までを商圏にして、年商350億円を見込む「東日本最大級」の複合型ショッピングセンターをめざしています。

 大型店としてジャスコのほか、150〜180店舗の専門店、さらにサービス業務棟からなるモール形式の商業施設を計画し、投資額は160億円といわれています。イオンが三菱商事と共同出資で設立した商業専業デベロッパー、ダイヤモンドシティ(本社・大阪市)が手がけます。

 予定地は、名取市の関下土地区画整理事業地内にあり、仙台空港アクセス鉄道沿線に位置し、現在は良好な水田地帯です。アクセス鉄道は仙台空港からJR名取駅までの約7キロbを第三セクターによる旅客輸送用鉄道でつなぐもので、宮城県が進めている事業です。採算性が疑問視されているアクセス鉄道推進のために、このダイヤモンドシティの開発計画が進められているとの声もあります。

 このダイヤモンドシティ進出計画に、仙台市内の商店街幹部は強い危機感を抱いています。春闘共闘会議や民商などの主催で今年一月末に行なわれた「『ダイヤモンドシティ仙台名取ショッピングセンター』進出とくらし・地域経済を考える」フォーラムには約140人も集まり、「市民合意のない進出には強く反対を表明する」とのアピールが採択されました。

 

 まちづくり条例制定運動のひろがり

 今年3月、仙台商工会議所小売商業部会と仙台商業政策協議会(商政協)は、立地法などの現行制度を補完するための「まちづくり条例」制定にむけたシンポジュウムを開催しました。これに先立ち、昨年3月には「仙台市まちづくり条例」制定に向けての提言を発表し、今年1月には市長と市議会あてに条例制定の要望書を提出しています。

 党市議団でも、1999年12月議会で地域経済と住民の住環境をまもるために市独自のまちづくり条例制定を求めて以来、一貫してその必要性を訴えてきました。

 当初、市当局は条例の必要性を認めていませんでした。しかし、イオン幸町店や郡山店などの経過を通じて、現行法の不備を認め、「市独自の対応」や「新たな枠組み」が必要との認識を示し、まちづくり条例制定への姿勢が変化、前進しています。現在、企画局、都市整備局、経済局の三局でそのあり方についての検討が始まっています。

 幸町ジャスコ出店反対連絡会も、6月16日には商政協副会長を招き、まちづくり条例の制定をめざす「学習交流会」を計画しています。また、同時に名称も「大型店出店対策連絡会」と変更し、各地の取り組みの経験を生かし、その交流・蓄積をはかり、県や自治体へまちづくり条例制定を働きかけていく組織へ発展させようとしています。

 対話と共同の取り組みひろげて国政の変革を

 西多賀サティの時も、イオン幸町店、郡山店出店のときも、党市議団は住民の不安や切実な要求に耳を傾け、地域の党支部とともに積極的に住民の要求実現のための取り組みをすすめてきました。住民を励ましながら、議会でも、そのつど取り上げ、問題点を明らかにしてきました。大型店の横暴な出店から住民の暮らしと住環境、地域経済を守る市の姿勢や施策について重ねて質しました。また、初売り問題やまちづくり条例制定のとりくみでも、積極的に提言しています。

 「大型店出店問題を本気で取り上げているのは、共産党だけだ」という励ましの声も商店街の幹部から、寄せられています。野党でありながら、自民党以上に規制緩和万能論をふりまき、弱肉競争社会を持ちこもうとする民主党への失望もよく耳にします。日本共産党への期待がこの分野でも、高まっていることを実感しています。

 5月14日に党国会議員団が大型店・商店街・まちづくりに関する政策提言を発表しました。この政策をつくるために、今年3月に高橋千鶴子、塩川鉄也両衆院議員が仙台市に調査に訪れ、副市長や市商工会議所、商政協幹部などと懇談しました。  

 党市議団では、さっそく宮城県委員会とともに、六月七日、この政策発表と懇談の会を開催することにしました。調査に協力いただいた市商工会議所、商政協幹部、商店会の役員はもとより、卸・小売の組合や民商、労働団体、幸町や郡山の地域住民など、広範な方々に政策を届けながらご案内し、対話をすすめているところです。

 これを機会にさらに共同の取り組みをひろげて、市や県に独自のまちづくり条例をつくらせること、そして、参議院選挙で党の躍進を勝ち取り、立地法の抜本改正など、発表した党の商業政策が実現できる国政の変革めざして頑張る決意です。
                                                 (了)