花田仁の“この一冊”

第21冊

日本を囲む軍事力の構図

田岡俊次(たおかしゅんじ)

中経出版 (ちゅうけいしゅっぱん)

最近、マスコミが近隣諸国の脅威をしきりにあおりたてています。本当のところはどうなのかをわかりやすく述べた本です。

「弾道ミサイルについては、通常(火薬)弾頭ならば効果が乏しいことは軍事的常識の一つで、ミサイル弾頭になりうるほどの小型の核兵器がつくれるか否かが焦点」

「『北朝鮮が核爆弾一、二発分のプルトニウムを保有しているだろうという話が、一、二発の核爆弾を保有しているだろうという話にすり変わった』と国務省の高官は苦笑していた。……もし、北朝鮮が初歩的な核爆発装置のようなものを完成しているとしても、核実験を行なっていないので、ミサイルに搭載できるような小型の核弾頭は保有していないだろうというのが、アメリカの朝鮮半島専門家の多くの見解」などの事実が紹介され、「まるでテポドンが再び発射されると日本が滅びるような印象がふりまかれている」現状を批判しています。

また「中国は空軍が旧式機の退役で急激に縮小しつつあり、近代化の速度でも台湾に大差をつけられ、台湾の軍高官が議会で『中共の台湾侵攻は根本的に不可能であります』と答弁する状況」という事実を紹介し、「中国軍拡説」について「空騒ぎ」と批判しています。

在日米軍と自衛隊の関係がよくわかる著者の体験を読んだときは、思わず声をたてて笑ってしまいました。

80年代末に嘉手納基地を訪れた際、事前の調整で「通訳は必要ですか」と聞かれたので「英語で結構」と言っておいたら、基地の広報班長の空軍大尉が、アメリカから視察に訪れる議員や記者用のブリ―フィングを始めた。……「この基地はソ連から1000マイル以上も離れ、ソ連戦闘機の行動半径外。長距離爆撃機は日本・韓国の戦闘機が途中で迎撃するから安全」といった説明をする。大尉もこれを日本人にいうのはまずい、と途中で気づいたようだが、読み始めたテキストを途中で止めるわけにもいかず、私が「ライト(その通り)」と言って笑うと、困った顔をしていた。

米軍が日本を守ってきたというより、戦術的にはむしろ自衛隊が米軍を守ってきた。……沖縄の米空軍も海兵隊も自衛隊に守られているといったほうが正しいのだ

その他にも多くの興味深い事実がいくつも紹介され、近隣諸国の脅威論や「在日米軍は日本を守っている」などということが事実に基づかない俗論だということがよくわかります。

自衛隊の海外派兵、改憲論の論拠の一つとしてこうした俗論があげられることがありますが、それを打ち破るためにぜひ読んでほしい本です。

(2005年5月4日)

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