
第48冊
以前、『日本を囲む軍事力の構図』の著者が、嘉手納基地の広報班長から受けた説明を根拠に「米軍が日本を守ってきたというより、戦術的にはむしろ自衛隊が米軍を守ってきた。沖縄の米空軍も海兵隊も自衛隊に守られているといったほうが正しいのだ」と述べていることを紹介しました。
今回紹介する本の防衛省元幹部の文章を読み、「日本に米軍に守ってもらわなければならない脅威などない」「米軍が日本を守るために働いているのでなく、自衛隊が米軍の利益のために働いている」ということを改めて感じました。
戦後の日本は、海外における植民地や国家権益を失い、この狭い島国に軍事的に閉じこもり、平和憲法を護持して、もはや周辺隣国との間には戦うべき一片の軍事争点もありません。冷戦期にあっても極東ソ連軍が日本にのみに一方的に侵攻してくる軍事シナリオは米軍ですら否定していました。
かつて私が防衛庁に在勤していた当時、陸上自衛隊は、自分たちの唯一の出番と考えていた極東ソ連軍の北海道振興を要撃する演習に際し、在日米軍が参加してこないのが不満でした。「一体何のための日米安保か」と陸上自衛隊は怒りましたが、米軍は「冷戦下のソ連軍は西に200万のNATO軍、南に中国の400万、東に200万の米国軍と一触即発の対峙の中で、どうしてノコノコと日本のみに一方的に侵攻してくる馬鹿があるか」と陸自案を一蹴したといいます。……日本の有事は「“巻き込まれ有事”しかない」ということです。……
現在はどうか。脅威とは、日本に届き得る距離にある周辺隣国、即ち中国、ロシア、南北朝鮮の四国いずれかの国が、少なくとも数十万の大軍を率いて、一方的に日本本土に上陸侵攻して来るときでしかありません。さきに有事法制として立法された「武力攻撃事態」がそれです。
もちろん私はそのような有事は起こり得ないと確信しています。……在日米軍再編の「中間報告」や「最終報告」も、このような四国からの本格的な対日上陸侵攻などには一切触れてもいません。
現在の日本が北欧諸国やカナダと同様にイスラム原理主義者を敵視していない以上、米国や自衛隊が警戒しているような日本国内への国際テロの侵略を恐れる必要もありません。米国などのイスラム攻撃に加担しないかぎりは。
日本の有事とは、まさに在日米軍を含む米軍と日本周辺国家との戦争に巻き込まれる波及有事のみです。……
敗戦後、米軍がポツダム宣言に反してまで日本(特に沖縄)に引き続き軍隊の駐留を強く求めたのは、戦後のアジア・中東における軍事覇権の確立にあったのでしょう。
(第二部 竹岡勝美の決意 62〜65p)
この日米安保条約があるために、アメリカは日本を基地として、全アジアあるいは世界にまで防衛網、安全保障網を広げることができているわけです。
海上自衛隊一つとってみたところで、日本は100機の対潜機を持っているわけですね。世界2位の勢力でございますよ。昔から。この100機の対潜機が、かつてソ連華やかなりし頃に、「レッド・オクトーバーを追え」のごとく、ソ連の潜水艦を一つ一つ全部、その位置を確認するため、どれだけ大きな役割を果たしたか。アメリカの世界防衛戦略に、どれだけ日本の海上自衛隊の対潜機をはじめ、そういうふうないろんなものが貢献したか。そこだけとっても、アメリカは大きな利益を受けております。だから利益を受けているのがもっぱら日本で、アメリカはあまり利益を受けていないよというような考え方は、非常に問題があるわけであります。
(第一部 小池清彦の主張 29〜30p)
憲法9条をつぶそうとする勢力は、米軍再編や憲法改定を「日本の平和と安全を守るため」「国際社会の平和と安全を守るため」であるかのように宣伝します。しかしそれは、防衛省元幹部が述べているように、まったくのごまかしです。
在日米軍は日本防衛とは無縁の殴りこみ部隊であること、この殴りこみ部隊と一体に自衛隊が海外で戦争を行えるようにするために米軍再編や憲法改定を行おうとしていることをしっかり伝えていかなければと思います。
【2007年5月1日記】