花田仁の“この一冊”

第51冊

ぼくは毒ガスの村で生まれた。 あなたが戦争の落し物に出あったら

化学兵器CAREみらい基金 編著  吉美義明 監修

合同出版

戦争中、日本は大量の毒ガスを製造し、実戦に使用しました。敗戦後、戦争犯罪として追及されることを恐れた日本政府と軍部は、毒ガスに関する文書は焼き捨て未使用の毒ガスは、土中に埋めたり海洋に投棄して、わからないように処分しました。

その毒ガスによる被害がいまなお増えています。中国では2000人以上の被害者がいるといわれています。

毒ガス被害のドキュメンタリーを制作した海南友子さんは、以下のように述べています。

「後遺症は神経、皮膚、内臓、呼吸器、そして生殖機能など全身に及ぶ。免疫力が低下するために極端な虚弱体質になり、そして、後遺症は一生治ることはない。大半の被害者が働けなくなり、重い病気と生活苦に苦しめられている。被害者は全員、戦争とは何の関係もない戦後の世代だ。

……現在も、中国に最低40万発の化学兵器弾が残されていることを日本政府は認めている。

その後も中国各地では事故が起きている。2005年春に中国で反日デモが沸きあがったとき、日本のメディアや政治家は中国の反日教育をあげつらって中国バッシングを繰り返した。

しかし、そんな単純でないことをわたしたちは知らなくてはならない」(25〜26P)

日本が引き起こした侵略戦争でアジアの方々に多大な被害を与えたことに向き合うことを「自虐史観」という勢力がいまなお存在します。そこまでいわないでも「そんな昔のことをいまさら持ち出さなくても」という感情をもっている人は少なくないのではないでしょうか。私も以前、役者として韓国の民話を上演することになって侵略戦争の実態を学ぶまでは「いまさら」と思っていたのではないかと思います。

しかしこの本で紹介されているように戦争中に製造された毒ガスが、実戦で使用されて当時の中国の人たちを苦しめたに留まらず、いまなお中国の人々を苦しめているのですから、「自虐史観」「いまさら」ではすまされません。以下の文章を読んでそのとおりだと思いました。

「過去に起きたことでも、いまそのことが問題になっているのなら、現在に責任を持っている私たちにはそれを解決する力があるはずです。そしてその解決のための努力は、過去の過ちを繰り返さない保証になるのです。

この本が『よりよい未来のためになにができるのか』を考えるきっかけになり、また、その参考になれば幸いです」(3P)

自分の国が犯した過去の誤りに向き合えない人々は自分が犯した誤りにも向き合えないことは、「安倍を選ぶか、小沢を選ぶか」といって選挙をたたかい敗れたのに、まったく辞職する意志がない安倍首相の態度を見ればよくわかります。

なにかと批判の多い安倍首相ですが、「侵略戦争の認識は現在の態度につながることをわかりやすく示したことが唯一の功績」と後にいわれることになるかもしれません。

(2007年8月3日記)

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