へっぽこ通信士航海日誌その12

アルゼンチン共和国 ロザリオ港

ブラジルのサントス港を後にして本船は同じブラジルのサルバドールに向かいました。サルバドールではとうもろこしを積んでリオグランデへ、その後に確かロザリオに向かったような記憶があります。
地図で見ますと北へ戻ってまた南へ、そんな航路だったと思います。
何せもう25年ほど前の話になりますので記憶が定かでありません。

アルゼンチンのロザリオ港は首都のブエノスアイレスより内陸に位置しております。
ここへ行くのに本船はパラナ川をさかのぼって行きます。

総トン数約7万トンの本船が河川を航海していると不思議な気分になります。
いつもは四方が海ばかりの航海ですが、この時は南米の湿地帯が回りに見えてまるでドライブでもしているような感じでした。
大きな船が航海中に、大海原以外で回りの景色を楽しめるのは、スエズやパナマの運河を通過したり、入出港時のときぐらいでしょうか?
写真を撮っておかなかったのが残念です。

もっとも外の景色をのんびりと眺めることの出来るのは通信士ぐらいのもので、航海士は衝突防止のために緊張してワッチを機関士はエンジンルームでワッチをしていおります。
そうは言っても通信士であります私も、目はポールドの外の景色を、耳は500khzと16ch、2182khzを真剣にワッチしておりましたことを付け加えておきます。

左の写真はロザリオ港入港中の写真です。
 外気温は低くかなり寒かったように記憶しております。

 この日は、防寒服を着てアンテナの点検をしました。
 碍子に塩がついて絶縁が悪くなりますので、定期的に真水で
 洗ったり、アンテナワイヤーの磨耗を修理したり、バッテリーの
 点検をしたりと停泊中もいろいろと仕事があります。
 

 一番怖かったのはレーダーマストに登ってレーダーアンテナ(クルクルと回るやつです)
 の表面に防水用のスリロンジを塗ることでした。
 危険な作業ですので、本船の動揺が少ない停泊中にするのが通例となっています。
 レーダーマストはハシゴをつかって上っていきます。
 海面から約40メートルほどの高さになります。
 怖いので、下を見ずに一気に上って行きます。
 それでもやっぱり怖いのです。
 しかしこれも仕事、学校の時は通信士は通信していれば良いと思っていたのが間違いでした。
 理想と現実のギャップは多々ありますね!


そんな停泊中に休暇を頂くことが出来ます。
荷役に時間が掛かり、停泊が長引くほど陸に上がるチャンスが増えるのです。

ここロザリオ港では、夜に上陸して次の日の昼頃に帰ってきたような記憶があります。
おいしいものを頂いて、バーを数件ハシゴして、それからどこに行ったのか定かではありませんが翌日に呼んだタクシーの運転手に「ムーチョ・モスキート」とからかわれたのが妙に記憶に残っており ます!
 (「ムーチョ・モスキート」・・・直訳しますと「蚊がたくさん居たね!」みたいなものですが、お分かりにならない方は直接メールでお尋ねください。)

もちろんロザリオの街並みもそれなりに堪能してきました。
アルゼンチンは南米のヨーロッパと呼ばれるだけあって歴史のある建物や街並みはヨーロッパのそれを思い出させます。

この後ホーン岬海峡を通って太平洋に出て遥かかなたの日本に向かいます。
1年以上も会っていない彼女は迎えに来てくれるのかな?
まだまだ何ヶ月も先のことを考えながらの長い航海が続きます。

続く