144MHzSSB(出力1W)トランシーバの製作                          もどる

はじめに(06/6/18)
3エリアにおける144MHzSSBは比較的無線人口が多く、平日ならば夜、休日ならば昼間でもどこかでQSOの声が聞こえます。またQRP機と簡単なGPでも数10km位は安定してQSOができ、運用するにも自作するにも面白い周波数と思います。このページでは自作の雰囲気あふれる実用的なトランシーバを紹介します。

終段と出力0.5W→1Wへの変更(08/09/01)
このリグを作った2006年6月では終段に2SC2538を使い0.5W出力としていましたが、この石はサトー電気で販売中止となってしまいました。今回は終段をまだ通販されている2SC1970に変更し、1W出力とし回路の変更を進めました。


本機の特徴(08/08/23)

  1. 市販の手に入りやすい部品で回路を構成しました。
  2. 同調はツマミとバリコンを直結しているため、素早くバンド内をワッチできます。またファインチューニングで微調整が出来ます。
  3. バラモジは手に入りやすいFMフロントエンド用ICのTA7358Pを採用。サトー電気の通販で@76。
  4. 使用する水晶は池田電子の通販で購入(VXOは10個300円、クリスタルフィルタは@100円×5)
  5. 配線方式はカットアンドトライのしやすい平ラグ板を採用。
  6. ケースは1.5と1mm厚のアルミ板で自作しました。内部の回路に対し、最適な大きさで作ることが出来ます。

トランシーバの仕様(08/08/23)

  1. 周波数 : 144.150〜144.250MHz
  2. 送信出力 : 1W(12V時)
  3. 終段 : 2SC1970
  4. 電源電圧 : 10〜13.5V
  5. 受信部 : 高1中2シングルスーパ 
  6. 中間周波数 : 12.288MHz
  7. サイズ : 幅120×高60×奥行215mm
  8. 質量 : 750g
  9. 部品代 : 約10000円

回路について

受信部(08/08/30)

144MHzの場合HFのリグに比べ、同じ回路定数で組むと総合的なゲインが低下します。そのため、ゲインのある素子に換えたり、抵抗値を変えたりと、総合的なゲインを上げる所作が必要になります。HF〜50MHz用に設計したモノバンドトランシーバに比べ、変更した部分を示します。

  1. 高周波増幅と混合部 : 2SK241→2SK439
  2. 中間周波増幅部 : 2SK241のソース抵抗470Ω→47Ω
  3. 低周波増幅部 : 2SC1815のエミッタ抵抗100Ωに10μの電解コンデンサを追加

なお、2SK439はデュアルゲートFETの3SK51や3SK73に変更しても、ゲインを確保できます。ただし第2ゲートのバイアス回路を追加することが必要になります。

高周波増幅部、混合部
2SK439による高周波増幅で、ゲートにはAGCをかけています。混合部23K439のソースにはVXOからの信号を注入します。

IF増幅以下
クリスタルフィルタを通した後2SK241でIF増幅を2段し、1N60*4でプロダクト検波後、AF増幅を1段してLM386によりスピーカを鳴らします。386の2ピンには送信時に100Kを通して電圧をかけ動作を止めます。また受信から送信に切り替わるときのクリック音を止めるため、2SC1815によるスイッチング回路を設けています。AF増幅の後には更に1段増幅を行いマイナスのAGC電圧を作り、これでSメータも振らせます。


送信部

VXOを44MHz/3=14.667MHzで発振させた後、9逓倍して132MHz台を作ります。送信部の周波数変換部で局部発振の12.288MHzと混合して144MHzを作り、その後4段増幅しました。

144MHzの場合HFのリグに比べると @総合的なゲインの低下、 A逓倍段数が多いことや出力周波数とVXOの周波数が近いため、正しい周波数だけをアンテナに送り込みむためのフィルタ回路 を考慮することが必要です。HF〜50MHz用に設計したモノバンドトランシーバに比べ、変更した部分を示します。

  1. 周波数変換後にTA7358Pの1,2,3ピンによる増幅を1段追加。
  2. 周波数変換後のBPFを2段→3段、その後の増幅段にBPFを追加し、2段とした。
  3. 周波数変換後の増幅を2SK241から2SK439に変更した。

送信マイクアンプ&BM部
コンデンサマイクからの信号を1石のアンプで増幅し、局発との信号をTA7358PによるBMで混合し、DBMの信号を作った後、クリスタルフィルタによりUSBの信号のみ通します。

周波数変換部
TA7358Pは4,5,6ピンで周波数変換した後、1,2,3ピンで信号を増幅し3段のバンドパスフィルタを通します。局発の周波数が132MHzであり、144MHzとの差がわずかなため、多段のBPFで信号をより分ける訳です。

励振増幅
2SK439にて増幅してから2段のBPFを通します。その後2SC1906でドライブ増幅し、終段へ信号を送ります。

ファイナル部(08/08/23)

  1. 2SC1970は三菱のTRで、175MHz、13.5Vにおいて入力0.12Wのとき出力1.3Wという定格です。
  2. 15×35mm(1mm厚)のアルミ板をコの字形に曲げて作った放熱板を、絶縁シートを挟んで取り付けました。放熱板はアースせず宙に浮かしています。アースすると2SC1970のフィンであるコレクタとアース間に容量が追加され、出力1Wが出なくなってしまいます。
  3. L1は不要な結合を防ぐためトロイダルコア(T25ー12)を使いました。
  4. コレクタ側は常に電圧がかかっていますが、送信時にベース電圧を加えて動作させます。これは送受切換回路への負担を軽減するためです。


共通部

VXO(08/08/23)
44MHz(3倍オーバートーン)の水晶を使い、可変範囲は144.150〜144.250MHzまでの100kHz。ボディエフェクトを防ぐため、水晶のケースはアースしておいて下さい。2SK241と2SC1906で3逓倍を2度行い132MHzを得ます。またVXO部の発振部には3端子レギュレータで安定化した8Vの電圧をかけています。

ファインチューニング(08/08/31)
メインチューニングはバリコン直結のツマミで100kHzをカバーしますが、素早くバンド内をワッチできる反面、微妙な調整は不向きです。それをカバーするのがこのファインチューニングで、バリキャップを使い±1.5kHzほどの微調整ができます。バリキャップは秋月で買った1S2683というものですが、無ければ数Vで動作する10〜30P前後の物を探してください。

電圧安定化(08/08/31)
VXOやバリキャップに供給する電圧は安定化することが絶対に必要ですが、3端子レギュレータで簡単に安定化することが出来ます。注意点としては

  1. 出力電圧より1.5V程高い入力電圧が必要。
  2. 入出力部には104(0.1μF)の積層セラコンをつけ、発振防止対策し、異常電圧が発生しないようにする。

このリグでは最低電圧を10Vと設定し、3端子レギュレータは78L08(8V)を使うことにします。電圧は出来るだけ高い方が、バリキャップの可変範囲を広く取れます。

局発部(08/08/30)
TA7358Pの7,8,9ピンを使いコルピッツ無調整回路で発振させ、送信BM部と受信検波部に注入します。

キャリヤポイントの決め方

  1. アンテナ端子にQRPパワー計を繋ぎます(測定レンジは100mW)
  2. 送信状態にしてトリマを回しながら、メータの振れが1mWを切り、ゼロになったところにします。このリグでは12.2845MHzになりました。

クリスタルフィルタ
12.288MHzのHC18U型水晶を5個使ったラダー型フィルタです。両端のコンデンサは75P、中央は150Pとしました。測定した結果、帯域は約3kHzです。

  

スタンバイ回路
スタンバイ回路はTRスイッチで送信時の消費電流は約15mA。受信時の電圧降下は0.4Vほどになります。2SC2120と2SA950はコンプリ用のペアトランジスタで最大電流は800mAとなっています。

BPF、アンテナ切替部
バンドパスフィルタはT型フィルタを採用。空心コイルは互いの影響を避けるため直角になるよう取り付けます。またアンテナ切り替えはオムロンのG5V−1という12Vのリレーを使い、コイル端子には整流ダイオードの10D1をパラに接続し、サージ電圧をカットします。


主な部品について

バリコン、目盛り、ツマミ(06/07/28)

  1. AM、FMラジオ用のもので、FM用の20PFの部分を1カ所使うことにします。軸が短いため、外形6mm長さ15mmのスペーサを2.6mmの皿ビスで固定し、延長シャフトとしました。
  2. 目盛りは1mmの塩ビ板を丸く切り、表面を細かいサンドペーパーで磨いた後、レタリングをし、クリヤラッカーで固定します。
  3. ダイヤル部の指針は、2mmの透明アクリル板を糸鋸で切り、ツマミの裏に接着剤で貼り付けました。

  
          ポリバリコン                  延長シャフト、目盛り                   ダイヤル部

7Kコイル
コイルはすべて手巻きです。通販のサトー電気で7mm角(コアの着色は黄緑色@100)を購入。0.1mmのウレタン線を巻き、VXO用のみ0.05mmを使用。

コイルの巻き方(08/09/06)
FCZコイルでは1,2次コイルは隣の溝に巻かれていますが、この144MHzトランシーバでは、コイルの結合度を高めて効率的な電力伝送を行なうため、1,2次コイルは重ねて巻いています。

1次コイル=3回、2次コイル=1回の場合

  1. ボビンの一番下の巻き溝(ピンに近い方)に2次コイルを1回巻く
  2. 2次コイルの上に1次コイルを3回重ねて巻く

7kボビンの1溝に対するΦ0.1のウレタン線の巻き数は10回までとし、12t/4tのコイルでは2つの溝に分割して巻きます。すなわち、2次コイルは2回ずつ、1次コイルは6回ずつを2つの溝に巻きます、

 

トランジスタの種類(08/09/06)

  1. 低周波部分は安価で手に入る2SC1815を使用。
  2. 周波数の高い部分は、fT=1000MHzの2SC1906を使いました。
  3. スタンバイに使う2SC2010と2SA950はIc=800mAという定格のものです。
  4. 終段の2SC1970は三菱のTRで、175MHzにおいて入力0.12Wのとき出力1.3Wという定格です。

 本機に使用しているトランジスタ

FETは2種類(08/09/06)
FETについては144MHzの流れる部分は2SK439を使い、中間周波部は2SK241としました。規格表では100MHzにおいて2SK439の方が2dBゲインが高くなっています。実際に144MHzで使うと、それ以上のゲイン差があるように思います。2SK439はすでに製造中止となっていますが、サトー電気で@210にて購入が可能です。ゲートが2つあるFETの3SK51や3SK73を使うことも出来ますが、第2ゲート用のバイアス回路が必要になります。2SK439が手に入らない場合は、2SK241を使い、高周波増幅か中間周波増幅を1段追加するという手段があります。

 2SK241 と 2SK439

IC(08/09/06)

  1. バラモジに使っているICは東芝のTA7358Pという、FMラジオのフロントエンドに使うもので、高周波増幅、混合、発振部が1つのパッケージに納められています。特に何メガまでという規格はありませんが、FMラジオに使えるのなら144MHzでも大丈夫だろう、と採用しました。
  2. オーディオ用のアンプは、あまりにも有名なLM386を使用しています。

 TA7358P と LM386

水晶(08/09/07)
池田電子の通販で購入しました。

  1. VXOに使うものは10個300円のHC25U型、ただし、いつまでも売っているとは限りません。
  2. フィルタ用は12.288MHzで1個100円のHC18U型です。

リレー(08/09/07)
送受のアンテナ切り替えはオムロンのG5V−1という12Vのリレーを使いました。消費電流は15mAです。アンテナ切り替えはダイオードを使う手もありますが、リレーの方が回路が簡単で、受信時に電流を消費しないというメリットもあり、採用しました。


製作編(06/07/28)

◆ケースの製作
製作方法については別のページをご覧ください。サイズは幅120*高さ60*奥行215mmとしました。

◆配線
別のページにもありますが、平ラグ板(20P)を4枚使って配線しています。ラグのピン数が足らないところは一部空中配線をしていますが、配線距離を短くできるためかえって良かったかなとも思っています。回路図ではどこにシールド線を使うとか、配置の関係上短く配線しなければならない所が長く書かれているとか、実装上のノウハウは表現できていません。144MHzの信号が流れる部分は特に配線を短くして下さい。抵抗・コンデンサ・TRなどリード線は短く切って使うこと。またL型のラグ板も適宜使います。


調整する(08/08/23)

調整に必要な道具・測定器
セラミックドライバ(コイルの調整用)、周波数カウンタ、2mの受信機(トランシーバ)、RFプローブ、AF発振器、QRPパワーメータ、クリスタルイヤホン、テスター、50Ωのダミーロード(1W以上)

VXOから調整

  1. VXO部の配線が終わったら発振部2SC1906のエミッタ(TP1)にRFプローブをあて、発振しているかどうかを確認します。メータがとりあえず振れればOK。
  2. 確認できたら周波数カウンタ発振周波数が14.652〜14.663MHz付近になるようにT10のコイルを調整します。この時ポリバリコン内蔵のトリマは最小容量にしておきます。
  3. バリコンを回した時RFプローブのメータの針が殆ど一定の位置にあればOKです。針の振れが細かく上下すれば異常発振の可能性があります。VXOコイルに並列につないでいる抵抗の値を少し減らしてみましょう。
  4. 次に2SK241の出力側(TP2)にカウンタとプローブをあて、44MHzの出力が最大になるようT11のコアを調整します。同じく2SC1906の出力側(TP3)で132MHz台の信号が最大になるようT12、13のコアを調整。最終的には送信部調整の時、出力が最大になるよう以上のコアを再調整します。

局発部
TA7358Pの7ピン(TP9)にカウンタをつなぎ12.2845MHzになるようトリマを調整します。次にマイク端子にAF発振機をつないで800Hzほどの信号をいれ、T16の2次側(TP7)にRFプローブをあて、出力が最大になるよう調整します。

受信部
同調ツマミをまわして、すぐに通信が受信できればラッキーですが、そうはいかないでしょう。VXOと局発の調整は終わっていますから、周波数は正しいものとします。

  1. スピーカをつないでサーという雑音が出ていればオーディオ段はOK。
  2. 試しにLM386の入力部や、その前の2SC1815のベースに指を触れて、ブーンと言うハム音がでれば正常。
  3. 中間周波増幅部にあるT14とT15のコアを回してスピーカから出る雑音が最大になるようにします。
  4. MIX段T3を同じように回して雑音を最大にします。
  5. アンテナをつないでから最後にRF段のT1、T2を回して雑音を最大にします。
  6. もし144MHzの送信機があれば軽く信号を出しSメータの振れが最大になるようにして下さい。またメーカー機があれば受信感度を比較してみましょう。極端な差が無ければ受信機としては正常に働いています。

BPF
とりあえずは受信音が最大になるよう回す。次に送信部の調整段階で、送信出力が最大になるように回す。

送信部
送信出力部にはQRPパワーメータをつないでおきます。

  1. マイクをつなぎ送信状態にして2SA950のコレクタから12Vの電圧が出ていることを確認。
  2. クリスタルイヤホンをマイクアンプの出力(TP8)につなぎマイクに向かってしゃべり、澄んだ音が出ていればOK。
  3. RFプローブをT16の2次側(TP7)につなぎ、マイクに向かってしゃべった声と共にメータが振れればOK。
  4. マイク端子部にAF発振機の音を入れ、その出力が最大になるようT4〜T9を調整。この時144MHzではなく122MHzに同調することがあるので注意。
  5. ファイナル出力部のトリマを回し最大出力になるよう調整。この時パワーメータで約1W。
  6. 同時に144の受信機で自分の声をモニターし、歪み音が無いか、マイクに入力する音の最小から最大まで切れ目無く素直にのびているかをチェック。
  7. 4〜6までを数回繰り返す。

トラブル対策(06/07/30)

ここまで問題無くくれば素晴らしいですが、だいたいはトラブルに悩まされます。その辺の手順を紹介しましょう。とりあえずは見つけ方から。

異常動作の見分け方

  1. マイクからの入力
    マイクから口笛とかAF発振機からの音を入れてモニターし、変調が小さな音から大きな音まで途切れなくスムースにかかっていれば大丈夫です。しかし、どこかで変調音に途切れがあったら送信機としては動作がおかしいです。
  2. ラジオでモニターする
    携帯ラジオをトランシーバの近くに持って来て、AM&FMいずれのモードでも変な雑音が出ていないかを確かめる。
  3. パワー計の振れ
    マイクから一定音を入力しファイナル出力のトリマ2個を回した時、パワー計のメータの振れがスムースに変化すればOK。どこかに変なピークがあれば、仮に今正常に動作しているとしても、気温の変化やアンテナ負荷(インピーダンス等)の変化によって異常動作をする可能性があります。
  4. アンテナをつなぐ
    ダミーロードでは正常に動作しても、2mで実績のある(SWRの低い)アンテナをつなぐと異常動作(出力メータが振り切れ)する。これは144MHz以外の電波が出ている可能性が高いです。

止め方

  1. 回路図に書いてありますが送信部の電源回路にはデカップリング回路をいれ、各増幅部の電源部分を高周波的に切り離します。これがないと送信部での異常動作が起きやすくなります。
  2. ファイナルのベースと直列に1〜5Ω程度の抵抗を入れてみてください。
  3. マイクアンプの電源回路に1KΩと0.01uFのπ型フィルタを入れていますが、これは高周波の回り込み防止用です。
  4. 送信部の近くを通る長い線は高周波を拾う可能性が高いのでシールド線にする。このリグでは送信出力を検出するダイオードからメータまでの線が18cm近くあります。回路的には直流しか流れないし線の両端にはパスコンを入れているのですが、線が送信時の高周波を拾いどこかへフィードバックしているのか、変調音がパリパリという音を含むようになりました。結局この線をシールド線に替えて解決です。

消費電流(08/08/23)

  1. 受信(無信号時) : 50mA
  2. 送信(無信号時) : 150mA
  3. 送信(最大時)  : 350mA

運用実績

当局のアンテナは 地上高7m 1/4λGP 、運用地は兵庫県伊丹市(自宅)です。

 日付    相手局   My His   運用地         距離
2008/9/1  JK2KQO/2  55  59  三重県伊賀市       70km
2008/9/7  JN2JBN/2   59  59  三重県伊賀市       70km
2008/9/7  JF3XSA/3   59  59  大阪府東大阪市      30km
2008/9/7  JM3GNE    59  59  大阪府枚方市        30km
2008/9/13  JP3IHT/3   59  59  奈良県桜井市        54km
2008/9/14  8J3WSF/3  59  59  和歌山県岩出市      64km
2008/9/14 JO3DFE/3   59  59  和歌山県日高郡日高町 101km