50MHzSSB/QRP移動用トランシーバ
はじめに
50MHzは私の開局周波数として想い出深いものがあります。AMが主流だった60年代が過ぎ、70年代に入るとHFでユーザーの増えてきたSSBは50MHzにも波及してきました。75年頃からPSN方式SSB、DSB+ダイレクトコンバージョン、7.8MHzのフィルタによるSSBトランシーバと色々実験を行ってきました。ここではQRPのSSBトランシーバを試作しながら製作を進めてみたいと思います。
仕様
送信部
RFCについて考える(02/05/12)
送信部に使うRFCとしては、電源部に入れるデカップリング回路とファイナルに入れるものがあり、RF(高周波)C(チョーク)として高周波が電源系などに流れ込まないよう阻止するものです。自作する場合は色々な製作記事やメーカーの回路を参考にしますが、大きなものから小さなものまで様々で、一体何を基準に選んでいるのでしょう。
実験回路
デカップリング回路(02/05/12)
RFC1は当初100μHでしたが少し動作不安定(発振気味)になるため10μHに変更してみました。
リアクタンスは100μHの場合 ωL=2πfL=6.28*50*100=31.4kΩ
10μHでは ωL=6.28*50*10=3.14kΩ となります。
デカップリング回路に関する解説としてはJA3XGS局の設計TIPSがあり、50MHzにおいて10μHと0.01μFを使ったものでは
誘導性リアクタンス ωL=2πfL=6.28*50*10=3.14kΩ
容量性リアクタンス ωC=1/2πfC=1/(6.28*50*0.01)=0.3Ω
デカップリング回路に流れ込む高周波信号を ωL:ωC=3140:0.3=10466:1 の比で分圧し他の回路への影響を阻止しようと言うわけで、すなわち80dBの差でデカップリング効果を狙うということになります。ここにおいてRFCの持つ容量分や、パスコン0.01のインダクタンス分は無視していますが、10μHでも大きすぎのような感じがしますね。
ファイナルのRFC(02/05/18)
RFC2についてはアミドンのフェライトビーズの解説部分を読むと、30〜60MHzではFB225の6穴全てを使う事が書いてあります。特性図からは50MHzにおいてリアクタンスは500Ωになっています。またRFCの選択基準についてJA9TTT/1加藤さん、JR3KBU芦刈さんからアドバイスをいただきました。結果、終段回路のRFCのリアクタンスはコレクタ出力インピーダンスの5〜10倍とし、パスコンのリアクタンスは1/10以下とするのが良いようです。製作記事のRFCをいくつか調べてみると、ほぼその中にはいっていますが、中には更に低いリアクタンスのものもありました。
さて、上記回路にてRFC2を何種類か交換しながらデータをとってみましょう。なおリアクタンスは計算値であり実測値ではありません。また抵抗の上にUEWを巻いたものは、空心コイルのリアクタンス+抵抗の並列接続による合成値で計算し、浮遊容量は考慮していません。
| RFCの種類 | リアクタンス(50MHz)Ω | 出力(mW) | 異常発振 |
| FB225(6穴使用) | 500 | 250 | なし |
| 1.2μH(マイクロインダクタ) | 377 | 90 | あり |
| 10μH(マイクロインダクタ) | 3140 | 100 | なし |
| 100μH(マイクロインダクタ) | 31400 | 180 | あり |
| φ0.1UEWを100Ω1/4Wの上に20回巻く | 63 | 120 | なし |
| φ0.1UEWを3.3kΩ1/4Wの上に20回巻く | 162 | 150 | あり |
| φ3.5*16回(0.5UEW)空心 | 94 | 100 | あり |
以上の結果となり、FB225が一番良いようです。ただ終段の2SC2053よりも大きいので、どうも不釣合いな感じはします。hi
中央の黒いのが FB225(左)、終段2SC2053(右)
RFC再び(02/10/27)
RFCとしてのFB225は終段の2SC2053よりサイズが大きくてどうも不釣合いです。ここでRFCとして3.3uHのマイクロインダクタに1kΩの抵抗をパラにつないだ物を使い、出力および安定性でFB225と同じような結果を得ました。50MHzにおいて3.3uHのリアクタンスは約1kΩ、それに1kの抵抗をパラにつなぐことで合成抵抗は500ΩとなりFB225と同じになります。まあ、限られた電流の範囲でしょうが。。。
ファイナルのコイルと出力(02/05/19)
ファイナルの出力同調回路については出力を300mWとし、終段回路設計の式からL1は1.43μHとなり、トロイダルコイルはT25−10(黒)に0.26UEWを27回巻いたものを使いました。ためしにL1の巻き数を減らしてみると出力が増えていきました。
| L1の巻数 | 出力(mW) |
| 27 | 250 |
| 21 | 420 |
| 20 | 450 |
| 19 | 480 |
| 18 | 480 |
計算では出力500mWでL1は21tになりますが、もう少し減らした方が良い結果がでていますね。しかし調子に乗ると動作が不安定になる危険性があり、このままでアンテナをつないでみると2chに軽いTVIが出始めています。
フィルタの動作(02/05/19)
高調波を低減するためにはBPFかLPFを使う手段が一般的で、計算式はBPFとLPFのページにあります。50MHzのBPFはL=0.8μH、C=25PFになり、LはトロイダルコアT25−10に0.32のUEWを21回巻きました。ところがこのBPFを入れると出力は0.48Wから0.25Wほどに落ちてしまいました。あまりにも損失が多すぎますね。50%ほどの50MHzの出力がBPFによって損失したと考えるか、あるいは不要電波がカットされたと考えるか、ちょっと悩んでしまいます。試しに2段のLPFに替えてみると出力は0.3Wとなりました。これでも40%ほどロスしています。仮にK439のBM部で不要成分が発生し、その後の同調回路では取りきれないまま終段に入力として加え、その後のフィルタで不要成分をカットしているとなると、終段君に無駄働きさせてるようで可哀そうです。
BPF
こんな場合の私の評価方式は、フィルタを入れない状態でアンテナにつなぎSWRが低いままであれば、それほど不要電波は出ていないだろうと判断しています。我が家の屋根裏50MHzダイポールはSWR1.2程度ですから、上記実験回路のフィルタなしで測定してもほぼ同じレベルとなり、それほど不要成分は含んでいないだろうと判断しています。てぇことはフィルタのロスが多いのかなあと納得できない状態で、もうちょっと悩みましょう。
ファイナルでの歪み(02/05/20)
BPFがない状態で、L1の巻き数により出力は250mW〜480mWまで変わります。しかしBPFを通すと250mW時(BPFなし)が200mWに、480mW時(BPFなし)では230mWほどに落ちます。終段での出力が大きい時も小さい時も、BPFを通した後の出力に殆ど差はありません。出力が大きい時損失が多いということは、終段において歪みが発生し、それをBPFで取り除いているだけではないかと考えました。2SC2053は出力250mWくらいが動作の上限と考えるのが良いのでしょう。試しにもう少し容量の大きい2SC2851(コレクタ損失1W、fT=2GHz)に交換すると、BPFなしで300mW、BPFありで240mW、挿入損失は1dBということになりました。ちなみに50mW出力時においても同じ結果(−1dB)です。またBPFはトロイダルコアT25−10よりも空心コイル(φ0.8UEW、直径10mm、11回巻)の方が挿入損失は少ないとの結果がでました。
フィルタの効果(02/05/27)
50MHzの送信機では2倍波がTVの2ch(映像97.15MHz、音声101.75MHz)に近くなり(関西ではNHK)十分に気をつける必要があります。フィルタとして一般的なものにはBPFとLPFがあり、BPFは特定の周波数だけを通すフィルタですからモノバンドの送信機向きで、LPFはある周波数以下を通すフィルタのため、マルチバンドのHF送信機に向いていると思います。また高調波だけでなく局発の12MHz、VXOの38MHz、混合して作られた26MHzなど様々な周波数成分が存在します。送信部BM以降の同調回路で不要分をカットはするものの十分かどうかはわかりません。LPFの場合は通過しますが、BPFであれば低い周波数成分もカットされるため具合が良いわけです。
ドロ縄で作った吸収型周波数計。厚手のボール紙にバリコン、メータを取り付け、割り箸で補強。
さてBPFはどの程度の効果があるのでしょう。送信機→ステップアッテネータ→吸収型周波数計 の順でつなぎ100MHz台の成分がどの程度減衰するか測ってみようと試行しました。吸収型周波数計の感度が50と100MHzで同じと仮定すると、フィルタなしの状態で100MHzの信号は17dB低い値です。これにBPFを入れると100MHzの信号は検出できないほど下がり、試しに2段LPF、3段LPF、100MHzの減衰極つき3段LPFでも実験しましたが、どれが良いというのはメータの値では評価できませんでした。次にテレビへの影響ですが、我が家の50MHzダイポールはTVアンテナの直下約2.5mの位置にあります。そこから電波を発射するとフィルタなしの場合2chには縞模様が入り色が薄くなりますが、フィルタを入れると色が若干薄くなる程度で縞模様は入りませんでした。
共通部
アンテナ切替&スタンバイ回路(04/07/21)
三菱のMI301を使ったダイオードスイッチで、消費電流は送信時6mA受信時2mAになりました。スタンバイ回路はTRスイッチで送信時の消費電流は約15mA。受信時の電圧降下は0.4Vほどになります。2SC2120と2SA950はコンプリ用のペアトランジスタで最大電流は800mAとなっています。
電池電圧低下表示回路(04/07/21)
移動運用の局と交信していると、変調のピークで音の揺れに気づく事があります。大抵は電池電圧が降下してきた場合です。このトランシーバでは電源にニッケル水素を6本使いますが、個体のバラツキがどうしてもあり、かなり使い切ってしまうと0Vに近くなった電池に対し、まだ容量の残っている電池からの電流が流れて逆充電がおこり、電池の寿命を縮めてしまいます。それを防ぐため電池を完全に放電しないうちに次の充電をしてやる必要があり、説明書には1セルの電圧が0.9〜1Vになった時がそのタイミングのようで、6本の場合安全を見込んで6Vになった時何らかの表示をする事にしました。回路図にはTR2石の電圧降下検出回路を示しています。半固定VRは6V以下になった時LEDが点灯するようセットします。ただ冬場に移動運用すると、気温の低さから電圧が早く降下してしまうことがありますが、体温で暖めてやるか室内に戻ると回復するため、その時その時で本当に充電が必要かは状況を判断する必要があります。
VXOのQRHを測定する(03/2/23)
可変周波数範囲を50.180〜50.280MHzの100kHzに設定し、周波数を3点変えて計測しました。1回の測定から次の測定までは半日〜1日おいています。連続送信状態にし30分間でリグ内温度は約3度上昇します。面白いのは周波数の上側と下側で変動の向きが違うことです。また50.230MHzで非常に良い安定度になっています(50.250付近なら殆どゼロでしょうか?)。VXOコイルのインダクタンスは一定ですが、ポリバリの容量(回転位置)が変わるため、温度係数の影響があると思われます。

製作
ケース(03/5/5)
50MHzの小型リグに1/4λ(1.5m)のホイップを取り付けるにはアンテナが大きすぎてバランスが悪いため、外付けのダイポールか八木を使うことを想定します。移動の場合にリグをテーブルか膝の上に置くことを考えると、平たく置いて使う事が便利でしょう。ケースは少し複雑な構造になりますが下の図の構造を考えました。しかしこの構造ではチューニングに減速機が使えません。ピコのようにバリコンに直結してツマミをつけ、100kHzほどをカバーしようと思うと少し苦しくなるため、ファインチューニングが必要に思えます。
ケース作り(03/5/5)
1mmのアルミ板からケースを作ります。机の上あるいは膝の上に置いて使うことを想定しているため、市販のリグには無い変わった形になっています。ケースのサイズは82*42*154mmで、操作部は18mmほど段をつけ、出っ張りのない形としています。
目盛り(04/07/10)
同調周波数を表示するための目盛りは、1mm厚の塩ビ板で作りました。直径32mmの円板を切り出し、表面は細かいサンドペーパーで磨き、レタリングをしたあと透明のスプレーで仕上げました。
電池ユニット(03/04/30)
単4を6本使った電池ユニットのサイズは22*37*55mm、容量は7.2V、800mAです。
基板の製作(03/06/22)
基板カット → 穴あけ位置写し → 穴あけ → 銅箔磨き → ランド塗り → エッチング → インキ落とし → フラックス塗り という工程をかけ、やっと基板の完成です。 途中、何度も何度も基板の設計ミスはないか、ランドの写し間違いはないかをチェックしました。これで一発動作をしてくれればありがたいのですが、まだまだ山や谷はあるでしょうね。
部品の取り付け(03/06/28)
SSBジェネレータ部の部品取り付けをしました。注意深くチェックしたつもりの基板でしたが、3箇所のミスがありました。グランドにつながってなかったパターンが1箇所と、送受切り替えの半導体スイッチでは送信と受信の接続が反対になっており、ランドを切って修正しました。パターン図と回路図を見比べながら赤鉛筆で塗りつぶしてチェックしていたのですが、思い込みやアース部分のチェックがおろそかになっていました。
高輝度LED(04/07/03)
リグの状態を示すものとしてLEDは重宝です。@30程で購入できるためパイロットランプとして多用してきました。屋内で使う分には5mAほど流せば程々の輝度で充分なのですが、屋外で使うと太陽光の下では点いているのやら点いていないのやら。そんなこともあり移動用のトランシーバには高輝度のLEDを使うようになりました。価格は高いもので@250ほどしますが、0.5〜1mA程の電流でチカリと輝き充分な輝度が得られます。私の場合、送信は青、受信は緑、充電池の電圧降下表示は赤、そして充電中を示すものとして自己点滅する黄色のLEDを使っています。
スピーカーのビビリ(04/08/15)
直径36mmの薄型スピーカ(@100)の4隅を1mmのアルミ板で作ったスピーカー押さえ金具で固定しています。ただボリュームを上げるとケースと共振し、音がビビルるという問題点が見つかりました。何か防振材を入れるか、ケースを補強するか、簡単そうで厄介な課題です。このSPは小型で安く出回っているため便利に使っていますが、能率が悪いので、サイズが許せばもう少し大きな径のスピーカにしたいところです。
調整と修正
高周波の回り込み(04/07/10)
試作ではうまくいっていたトランシーバですが、プリント基板化するとトラブルが発生しました。送信状態にしてモニタすると割れた音がします。
これは高周波の回り込みと判断しました。回路図と基板を調べてみると、試作ではマイクアンプ部の電源回路にデカップリング回路を入れていたのですが、プリント基板化した時パターンの描きやすさから省略していたのです。パターンを切って電源部に470Ωと0.01uF*2+10uFのデカップリング回路を追加すると高周波の回り込みを阻止することができました。
反省(04/07/10)
試作ではちゃんと入れていたのに、本番になってデカップリング回路を省略したことがトラブルの原因でした。このデカップリングは無くても済む場合があったため、「まあいいか」と思ってしまったのです。高周波を扱う場合の基本がおろそかになっていました。
電源電圧と送信出力の関係(04/07/21)
マイク端子にはオーディオジェネレータから700Hzの低周波信号を加え、アンテナ端子にはQRPパワー計をつなぎます。電源電圧を5〜9Vまで変化させた時の送信出力を下のグラフに示します。なんともリニアなグラフになりました。

TVIの発生(04/07/28)
50SSB移動機と、ベランダに取り付けた移動用ダイポールで運用してみると、2CHにTVIが発生しました。今まで使っていた固定のダイポールではわずかに縞模様が入る程度でしたが、移動用ダイポールの固定位置がTVアンテナのビーム前面にあるためか、画面が白黒になるほどのひどさでした。
1段LPF 3段LPF
カットオフ周波数55MHzの1段と3段のLPFを作り、リグとアンテナの間で入れ替えてみると、1段でも効果がありました。現在はリグの中の基板とBNCコネクタとの間に1段のLPFを追加しています。もともとBPF(ツインTフィルタ)が入っているのですが、これだけでは不十分だったのかと思います。
運用
(04/07/11) 300mW出力と8mHのダイポールで六甲山移動局と59でQSO。見通しで8km程の距離ですから、これは当たり前の結果です hi。
(04/07/18) 箕面市六個山移動のJA3PAV仁木さんとQSO。両局同じ300mW機+ダイポール、RSも双方55、距離8km。
(04/07/25) 徳島県名西郡神山町移動局と59でQSO。距離70km。
(04/07/25) JA3PAV仁木さんとJE3KOF川島さんに変調音をモニタしていただいた結果、「やわらかい音」との評価をいただきました。
(04/08/07) ADQは宝塚市・山手台移動(標高約100m)、V型ダイポール使用。枚方市移動(フィールドデー準備中)JA3CWL局と59。
距離25km。出力300mWということで驚いてみえました。