永遠の課題VXO もどる
VXOとの出逢い
1960年代の最後の頃でしょうか6mAMの真空管式送信機でQSOしていた時、トリオのTX88Aを使っていた人が、水晶ソケットに水晶+並4コイル+350PFのバリコンを直列につないでみると、VFOみたいに周波数を変えられるよと教えてくれました。当時VFOといえば外付けの鉄ケースに入ったがっちりしたものというのが常識で、発振周波数の安定したVFOを作るのはなかなか大変なことでした。それが水晶にLとCをつなぐだけでVFOの代わりになるというのは大変な情報で、早速実験したのです。誰が考えたのでしょう、動かないものをくすぐって動かすという実にアマチュア的な発想が好きで、以来このVXOという物にのめり込んでしまったのです。6mの真空管式AM送信機に応用したのが最初で、HC6/Uの3倍オーバートーンの水晶で500KHzは可変できました。水晶1個で運用していた私にとっては衝撃的な実体験だったのです。その後AMからSSBへとモードが変わり、AMではQRHもさほど気にしなくて良かったものが、SSBとなるとそうは行きません、VXOとはいえ気を配ってやらないと、なかなか周波数は安定してくれないのです。前置きが長くなりました。VXOについては各種の記事があり、私も随分参考にさせていただきました。ここで紹介するのは決してユニークなものではありません。しかし安定したVXOはどうやって作ればいいのかをこの際、一から実験してやろうとこのページを作りました。
VXO回路

可変周波数範囲は?
水晶の個体差があり一概には言えませんが、基本発振周波数の0.1〜0.2%が電波の質を考えた時に許容できる範囲と思います。VXOからの電波を直接受信した時、一定で綺麗なキャリヤ音ならば良いですが、可変範囲を広くとるとプルプルといった細かな振動を含み、音も少しかすれてきます。可変範囲は0.5%以内と書いてある文献もあり、できるだけ広く取りたいとの気持ちが優先し、私も長い間この値を基準にしていましたがQRHという観点からは問題無くても、電波の品質という観点からは無理があるように思います。VXOコイルのインダクタンスを増やし、周波数を少しづつ下げながらワッチし「此処までは大丈夫」、「そろそろ危ないな」と判断してみてはどうでしょう。
バッファは必ず付けましょう
実際にあった例ですが、送信時と受信時でVXOの発振周波数が変わる事がありました。回路図の発振部の後にFETのバッファアンプを付けていたのですが、C3の値が30PF程あり負荷の変動が発振周波数に影響を与えました。C3の値を1〜5PFほどにすれば良いでしょう。
コイル
コイルの温度特性
コイルは正の温度係数を持ちます。温度が上がればインダクタンスが増えるという意味です。すなわち温度が上がれば周波数が下がるということです。
コイルのインダクタンス
発振周波数によりますが数MHz〜10数MHzがVXOとして良く使われる周波数です。これにマッチするインダクタンスとしては数uH〜数10uHになります。
コイルの巻き数
VXOに使うコイルは一体何を使えばいいのか? 製作記事を読むとFCZコイルの1R9とか固定インダクタが良く使われています。だいたい10uH前後のインダクタンスになります。コイルを自作するには10K型のボビンが便利です。巻き込む線は0.1mmのウレタン線を使いますが、これは秋葉原のオヤイデ電気で購入できます。巻き数は水晶が13MHz台では40回、17MHzで30回程になります。水晶とコイルを並列に接続し、ディップメータで測定した時、ほぼ水晶の表示周波数(オーバートーンの場合は原発振周波数)になれば良いでしょう。
ボビンの種類(ベーク、コア入り、10K、タイト、トロイダル・・・)
これはかなり重要な項目です。結論からいきますと、コア入りボビンは使わず、タイトボビンにカット&トライをしながら必要数を巻く。そしてコイルはシールドケースに入れる。と言う事になります。フェライトコアは温度変化の影響を大きく受けますから、発振回路には使わない方がいいのです。しかし「微妙にインダクタンスを変えられる」という魅力があり、私は今でも使っているんですねえ。

右端はφ8のベークボビン。左3つはベークボビンの台部分のみ残して切り取り、そこにφ6のタイトスペーサをはめ込み接着剤で固定してからコイルを巻いたものです。周波数の安定度は良いですが、微妙な周波数調整ができないのが欠点ですね。
コイルの作り方
ここではサトー電気の通販で購入した7K型のボビン(@80 ボビン、中心コア、キャップコア、ケース)を使って14.7MHzに使うVXOコイルを作ります。ウレタン線は0.05mm(オヤイデ電気)。高周波ワニス(@170 共立電子)が必要です。ワニスが無い場合は溶けたローソクを垂らしても良いでしょう。

使用部品 末端処理 コイルを巻く

高周波ワニスを塗る ケースに入れる 完成
水晶
特注水晶の購入先
CQ誌にのっているのは川崎電波とアルト電子の2社です。以前は大松と三田でしたがいずれもCQ誌からは姿を消しています。14.7MHzに限って言えば川崎は@1700+消費税で送料不要。アルトは@1200+消費税+送料480円で、1個注文の場合は大差ありません。しかしアルトの場合、複数個注文しても送料は480円一定ですから、その分少し安くなります。また同じ仕様のものをまとめて注文すると割引があります(5個で5%)。いずれも注文後3週間位で届くようです。川崎はCQ誌の広告欄に価格が書いてありますが、アルトは書いてありません。電話で身元(住所、名前、電話番号、コール)を明らかにしてこちらの意思を伝え、その後お金が届いてから製作を始めるとのこと。FAXやメールでは情報が一方的であり購買者の意図が伝わらない為、電話をすることが必須とか。少し面倒な気もしますが、色々とトラブルがあったためこのような手段をとっているのでしょう。受付が始まる9時過ぎに電話をかけるとヒット率が高いようです。昼間は数回かけましたがいつもお話中でした。
水晶のケースはアースする
VXO回路を動作させ手を水晶のケースに近づけるとボディエフェクトでQRHを起こしますが、そんな時は水晶のケースにリード線の切れ端を半田付けしてアースに落とせばQRHを防ぐことが出来ます。
バリコン
バリコンの種類(エアバリ、ポリバリ)
エアバリコンで容易に入手できるのはタイトバリコン位でしょう。容量直線型ですが周波数直線にはなりません。下側がやけに広くなり、上側はつまって面白くありません。VXO用として使いやすいのはサトー電気で通販しているFM用の20P 2連のポリバリコンです。周波数もほぼ直線になります。
エアバリコンの温度特性
エアバリコンは正の温度特性を持ちます。温度が上がればキャパシタンスが増えるという意味です。すなわち温度が上がれば周波数が下がるということです。(SSBハンドブックより引用)
ポリバリの温度特性
ポリバリは負の温度係数を持つようです。これは私の実験結果から想像したもので、文献からの引用ではありません。ポリバリは極板の間にポリエチレンのシート(比誘電率は約2.1)を挟んだもので、どうもこのポリエチレンが負の温度係数を持つようです。したがって温度が上がればキャパシタンスが下がり、周波数が上がるということです。VXO回路を組んだ場合、コイルが正でポリバリが負なら丁度打ち消しあいそうですが、ポリバリの変化の方が大きく、結果的に周波数は上昇傾向にあります。
発振素子
室温一定なのにどうしてQRHするの?
QRHの原因には、電圧の変動・振動・周囲温度の変化・負荷の変動などが考えられます。しかしケースの中に入れた1石だけの発振回路でQRHが起こる? 室内の実験で振動はなし。電圧は安定化された外部電源。負荷は周波数カウンタのみ。室温は0.1度の精度で一定。電圧5V、電流は3mA程。回路の中で発熱の影響を直接受けそうなのはTRが有力。しかし、たかだか3mAで発熱? 発熱といえば「手で触って明らかに熱くなった」というのがそれまでの感覚でしたから、なかなか信じられなかったのですが、電源投入後の初期的な周波数変動はTRにありと思います。
発振素子の発熱を押さえてみると(コレクタ電流と周波数ドリフトの関係)
発振素子の2SC1906に流すコレクタ電流を0.5mAと3mAで変えてみます。回路的にはCーB間の抵抗を1MΩと100KΩで交換しました。周波数は14MHz台で可変範囲は20KHz。10分間の測定ですが3mAの時16Hz、0.5mAの時12Hzとなりました。約60%ですね。
発振素子はTRかFETか
QRHを押さえるため微少電流にて発振させようとすると、コレクタ(ドレイン)に流す電流を制御しやすいという意味からはTRの方が使いやすいですね。FETには電流を一定に流そうという特性がありますから。
電源
電圧の安定
特に発振部は電圧の安定化が必要です。3端子レギュレータは50円位で買えますから大いに使いましょう。ただし滅多にはありませんが不良品もありますので、本当に安定して電圧が出ているかは一度確認しましょう。.また入出力にはそれぞれ0.1uF程度のバイパスコンデンサをつけてアースに落とし異常動作を押さえます。
QRH測定
周波数カウンタの安定化(04/12/03)
私が使っている周波数カウンタの八重洲YC−500Jは、測定前に2時間以上通電し基準発振器を安定化しておきます。以前はいきなり電源を入れて測定していましたが、後で確認してみると14MHz台を測定している時に、カウンタ自身が通電後90分で60Hz程変動していることがわかったためです。同じシリーズの恒温槽型や温度補償型はもっと精度が良いのでしょうが、私が買った標準型の精度はここまでのようで、その分測定前にしっかり通電しておき、測定器を暖めておいてから計測を開始するようにしました。

測定方法
VXO部分はケースに入れ、ボディエフェクトとか風の影響を少なくします。測定は室温変化の少ない日が好ましいです。例えば曇りの日とか、日中よりも夜とか、また冷房や暖房はやめましょう。コイルや水晶、コンデンサ、バリコンなど発振部を半田付けしたり、コアを回した場合は落ち着くまでに時間がかかります。出来れば1日置きたいものです。私は半田付けや測定器への接続など試験準備を終えた状態で1日放置し、熱的・機械的に安定してから測定に入ります。1つデータを取ってから条件を変えてセットし、明くる日会社から帰ってから次の測定に入るという訳で、随分気の長い測定になりますが、結局その方がデータの信頼性が高くなります。室温はデジタルの温度計を使い、VXOケース内の温度も測定できれば更に良いでしょう。
周波数カウンタの値がそのままパソコンに取り込めれば便利ですが、そうも行きませんので、時計(ストップウオッチ)とにらめっこしながらカウンタの値をレポート用紙など書き込みます。測定開始から10分位は1分おきに、あとは5分間隔で記録し30分程計測します。データはエクセルに入力すればグラフ化できますし、方眼紙にプロットするのもよいでしょう。測定条件を出来るだけ書き込み、記録として残すと後々の参考になります。
QRHはどの程度まで我慢できる
これは私独自の基準ですが10分で100Hz以内に押さえる事を目標にしています。10分というのは1回のQSOの平均時間です。100Hzはチューニングをし直さなくても良いと思うQRHの範囲です。
周波数の安定化
機械的にガッチリ作るのは基本です。また発振部分は温度変化を受けやすいため、小型のシールドケースに入れることが出来れば、周囲の急激な温度変化を緩やかに受けることが出来ます。
ポリバリとコイルを断熱してみる
VXO部分をシールドケースに入れる事ができない場合、ポリバリとVXOコイルをスポンジで覆うことで、温度変化の影響を緩やかに受けることができます。実験では断熱により初期変動を1/4〜1/5に押さえることができました。

トラブル対策
VXOが発振しない時には
発振周波数の関係があるので一概には言えませんが、回路図中のC1が大きい場合(例えば100P)発振しない事があります。そんな時は30P程度に代えてやると発振する事があります。
異常発振の見分けかた
VXOが異常発振すると受信機で聞けばVXOのVCを回すとそこら中でプチプチと信号が入感します。RFプローブをOUT部に当て、バリコンを回すと針が大きく上下することからも判断出来ます。周波数カウンタを当てても周波数がめまぐるしく変化します。
異常発振対策
雑誌の記事で発表されるVXOの回路には、ほとんどこのR1が入っているのであえて言う程の事は無いのですが、10k〜47k位の範囲でLと並列に入れると効果があります。