| 分蜂のしくみ |
■ 分蜂蜂球の温度調節お腹いっぱいハチミツを食べ、巣から飛び出したハチは太い枝などに分蜂蜂球を作ります。探索バチが新しく巣を作る場所を探してくるまでハチは静かに待っています。分蜂蜂球の温度を気温と同じくし、エネルギ−の消費を少なくしたほうが得策のように思われます。
ところが、分蜂蜂球の中心部の温度はセイヨウミツバチの場合、常に36℃近くに保たれています。セイヨウミツバチとニホンミツバチでは分蜂蜂球の形状に違いがありニホンミツバチの分蜂蜂球のほうがハチがコンパクトに集結しているように見えます。
そこでニホンミツバチの分蜂蜂球の温度を測定しました。普通の温度計ではハチが飛び立ってしまう危険があるため、熱電対でできた温度計(デジタルポケット型H−03)を使用しました。下の表に示すように、ニホンミツバチの分蜂蜂球の中心部の温度も、セイヨウミツバチと同様常にほぼ36℃でした。これは、巣板の育児域に生活する羽化して間がないハチや女王バチの温度環境を巣の中と同じく保つためと考えられています。
分蜂・逃亡蜂球の温度測定 年月日 外気温 蜂球最高温度 測定時刻 備 考 分蜂蜂球 1999.4.20 23.4℃ 35.6℃ 16:00 枚方市ウメに集結 分蜂蜂球 1999.4.25 19.4℃ 34.9℃ 14:32 守口市ヒマラヤスギに集結 分蜂蜂球 1999.4.26 16.9℃ 35.2℃ 19:34 守口市分蜂群誘導板に集結 逃亡蜂球 1999.5.14 27.7℃ 34.4℃ 17:25 守口市マツに集結 分蜂蜂球 1999.6.27 23.8℃ 35.6℃ 15:35 守口市アオガシに集結 ■ 分蜂蜂球の構造
自然の分蜂蜂球はいろいろな場所、高さに作られます。太く直立した幹にできた分蜂蜂球はべったり幹をハチがおおい布状です。一方横にのびた細い枝にできた分蜂蜂球は板状になり枝からぶらさがります。これらの分蜂蜂球では構造が明らかにできません。
幹に張り付いた分蜂群 枝にぶら下がった分蜂群 板に細かい目の網(ステンレス製)を張り蜜蝋を塗った分蜂群誘導板を使うと大変高い確率で分蜂群を集結させられます。しかもその分蜂蜂球はみごとな半球状になります。そしてみごとな構造を持つのです。自然の分蜂蜂球もきっと同様な構造をもっているのですが、形が多様なため気が付かれなかったと考えています。
分蜂蜂球の表面は、一層のハチでできた膜でおおわれています。これらの表層を形成するハチは頭を上に向けて脚と脚とでつながっています。分蜂蜂球に帰ってきたハチはそれらの表面を作っているハチの隙間を抜け分蜂蜂球の内部に入ります。表面のハチと内部にいるハチの体温は異なり、表面のハチの体温が常に低くなっています。そして、夜になり気温が低くなると表面のハチは頭を前のハチの下に入れ、隙間をなくし分蜂蜂球をコンパクトにし、中心部の熱を逃がさないようにします。
隙間のある分蜂蜂球(昼) コンパクトに集結した分蜂蜂球(夜) ■ 分蜂蜂球上のダンス
セイヨウミツバチの分蜂群では、その下部で探索バチが新しく巣を作る場所を仲間のハチにダンスで知らせます。ところがニホンミツバチではダンスを観察することがなかなかできませんでした。特に分蜂群誘導板に作られた半球状の分蜂蜂球では帰ってきたハチが分蜂蜂球にもぐりこみ、表面のハチの内部でダンスをしていました。時として表層構造が破れると分蜂蜂球の表面でもダンスが見られることもありますが、これは例外的なことです。ニホンミツバチのダンスはたいへん観察しづらいのです。
たまにダンスがみられる ダンスするハチ ■ 分蜂蜂球から飛び立つまでの温度変化
ダンスによる情報が仲間のハチに伝わると、いよいよ新しい巣を形成する場所への旅立ちです。しかし、ハチはすぐには飛び立てません。体温を高くしなければならないのです。2000年5月3日に分蜂した小さな群れが、5月4日に飛び立つまでを観察することが出来ました。
朝早く、分蜂蜂球はまだ表面温度がほぼ15℃です。朝日がさし探索バチが活動しだすと分蜂蜂球の内部も表面も温度が上がります。飛び立つ一時間前になると分蜂蜂球上のハチは多くが表面を動き回り、刺激しあっているようです。体温がだんだん上昇し多くのハチの体温が41℃になったとき、一斉に飛び立ちました。(赤外線拡大写真1 写真2はこちら)
午前5時15分
気温9.3度午前7時06分
気温11.7度午前8時06分
気温13.4度午前9時06分
気温15.9度
午前10時0分
気温18.5度午前10時15分
気温20度午前10時30分
気温19度午前11時
気温19.5度2001年の連休にはサ−モグラフィ−に加えて熱電対を4本利用して、分蜂蜂球の3ヵ所と外気温を同時に測定しました。この測定には多チャンネルの記録計を使用しました。キンリョウヘンに集まった一つの群れに加えて分蜂群誘導板に集まった三つの群れの測定が出来ました。
次のグラフがその一つの結果です。分蜂蜂球が形成されると次第に表面のハチの体温は下がります。分蜂蜂球の中心温度は気温が低くなっても36℃に保たれます。次の日、気温が上昇しハチが活動しだすと徐々にハチの体温が上がり飛び立つ直前にはほとんどのハチの体温が41℃ に上がります。キンリョウヘンに集まった群れも、分蜂群誘導板に集まった群れも結果は同じでした。
1981年ハインリッヒは、セイヨウミツバチで同じように分蜂蜂球からハチが飛び立つときの温度を測っています。それによると、セイヨウミツバチでは飛び立つときすべてのハチの体温は36℃になります。ニホンミツバチのほうが5℃も高いのです。分蜂蜂球の中心温度は両種共36℃なのに、分蜂蜂球からハチが飛び立つときの温度には大きな差があるのです。この差が何に由来するのかたいへん興味を持っています。

ニホンミツバチの分蜂群が飛び立つまでの温度変化


