原種シンビジューム−デボニアヌム、スアヴィシムムもミツバチを誘う
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 デボニアヌム

 キンリョウヘンの交配種がハチを誘引するかどうかを検定していた過程でミス・ムフェットがキンリョウヘンと同じか、それ以上の誘引力を持っている事が明らかになりました。ミス・ムフェットは、キンリョウヘンとデボニアヌムの交配種です。「きっとデボニアヌムもハチを誘引するにちがいない」と思いました。
 いくつかのラン園に問い合わせた結果、高木農園の小島さんの好意で花芽が一つ付いたデボニアヌムを手にすることができました。2001年4月15日、たいへん落ち着いた色の花が咲きました。キンリョウヘンより一回り大きな花でした。早速、花を付けた株を屋外に出すと働きバチが訪花し花に潜り込みました。5つの花を花茎から切り離し、ハチが誘引されるかどどうか検定しました。下の写真にあるように、みごとに誘引されました。その強さは、キンリョウヘンやミス・ムフェットと同じくらいでした。
 デボニアヌムはインド北部からタイの山岳地帯に自生するといいます。きっとそこに住むトウヨウミツバチ(A.cerana indica)を誘引し、ハチが集まることでランの生活がプラスになっているに違いないと思えるのです。野生のデボニアヌムとハチとの関係を知るために、今すぐにでもタイの山岳地帯に飛んでいきたい気持ちになっています。

デボニアヌムを訪花する働きバチデボニアヌム5花へのハチの誘引

 スアヴィシムム

 シンビジュムの本(The Genus Cymbidium(David du Puy &Phillp Cribb 1988))によるとキンリョウヘンとデボニアヌムにはさまれもう1種、スアヴィシムムという名前のランがあることが記載されています。スアヴィシムムは、ミヤンマー北部に原産地があります。キンリョウヘンとデボニアヌムがハチを誘引するので、スアヴィシムムもニホンミツバチを誘引する能力があるのではないかと本を見ながら考えました。
 スアヴィシムムを購入したいと、幾つものラン店に聞きましたが、入手できませんでした。たまたまインターネットのサイトに販売先が出ているという情報を得て、2003 年4月 19日 Santa Barbara Orchid Estate(California USA)より2株購入できました。他のシンビジュウムと同様な栽培方法で栽培しましたが、2004年は開花しませんでした。2005年は、小島勝也さんの指示に従い、4月中1ヶ月間は水を1滴も与えず栽培しました。原産地では乾季が存在するという理由からです。5月になり通常の栽培に戻したところ、2株の内1株に花芽が1つ付き、6月25日には開花が見られました。花の数13、キンリョウヘンの花と大きさ色合いが大変よく似た花であり唇弁の模様だけが異なっていました。花を室外に出すと、ニホンミツバチの働きハチが、デボニアヌムの時と同様、早速訪花し花に体を挿入しました。

       スアヴィシムムの花  スアヴィシムムの花に体を挿入するニホンミツバチ

 スアヴィシムムの花を5個、ベニヤ板の上の黒画用紙上に置きハチの集結を見ました。ハチは、2分以内に花に集結し、対照においた画用紙には全く見向きもしませんでした。写真で示すように花がハチで見えないくらいです。ベニヤ板上に落下したハチのうちどれだけの割合のハチが花に集結したかを求めたところ、落下したハチの79.7%が花に集結しました。これは、スアヴィシムムの花がキンリョウヘンやデボニアヌムと同じ程度の誘引力を持っていることを示しています。

スアヴィシムムの花5個に集結するニホンミツバチ、落下2分後

 今回の検定結果から、この花香は花に分蜂群や逃亡群を集結することが出来るくらい強いと思われます。開花時期が、分蜂が多く見られる4月〜5月から離れるため、実際にその現象を目にすることは困難であるかもしれませんが、市街地で見られる夏分蜂や逃亡と開花時期がうまく合えば分蜂群や逃亡群の花への集結も十分観察することができると思っています。
 キンリョウヘンのエーテル抽出物にニホンミツバチだけでなく、台湾のトウヨウミツバチ(A.cerana cerana)やタイのトウヨウミツバチ(A.cerana indica)も誘引されることから、これら3種のシンビジュムの出す花香には共通して、トウヨウミツバチを誘引する成分が含まれていると考えられます。


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