巣の温度調節
ホーム|Part1|Part2|Part3|Part4
 「ミツバチは、冬眠するのですか」とよく聞かれます。昆虫は変温動物であるため、多くの昆虫は冬を生き抜くことはできません。普通、10℃より低温では生活できなくなります。成虫は死に絶え、多くは卵かサナギで冬を乗り切り、春になると次の世代に命が引き継がれていくのです。昆虫の中でもタテハチョウの仲間やスズメバチは、成虫で冬を越すことができます。しかし、これらの昆虫も気温が低いときは仮死状態(冬眠)になり、寒い冬を乗り越えます。
 多くの昆虫と違ってミツバチは、低い気温の日でも巣の中で元気に動いています。冬でも気温が10℃を越えると巣を出てミツや花粉を集めます。これは、ミツバチが他の昆虫と違って巣の温度を調節する能力を持っているから可能なのです。
 ミツバチの巣の温度は、33〜36℃(育児域−幼虫が育つ場所)に保たれています。ミツバチは、気温が低くなると巣の中で密集し(蜂球形成)、胸の筋肉を震わせ発熱します。蜂球の中心は、気温が低くなってもほぼ35℃に保たれます。
 一方、気温が高くなると働きバチは、巣の入り口に出て、羽を震わせ風を巣の中に送り込み巣を冷やします。これを扇風行動と言います。この時の姿勢がニホンミツバチとセイヨウミツバチで異なります。ニホンミツバチが頭を外に向けて羽を震わせるのに比べ(入口から風が巣の中に入る)、セイヨウミツバチは頭を巣の入り口に向けて羽を震わせるのです(入口から巣内の暑い空気が引き出される)。この違いはハチの天敵であるスズメバチが多い場所に住むニホンミツバチが、入口から出る空気によって入口をスズメバチに知られないために開発した方法だと理解されています。さらに気温が上がると巣の中に水をまき、巣の中の空気の流通がよくなるように多くのハチが巣の外に出ます(ハチの夕涼み)。

扇風行動をするニホンミツバチ夕涼みをするニホンミツバチ
扇風行動をするニホンミツバチ夕涼みをするニホンミツバチ

 冬期に気温が下がる温帯域では、このような温度調節能力を持っていても、巣が露出していては、ハチの生存は不可能であると考えられてきました。温帯域にミツバチが生息できるのは、閉鎖空間(入口が小さく、周りが囲まれている)に巣を作る能力をミツバチが獲得したことによると考えられます。ところでそれなら、市街地でしばしば見られる開放空間の巣でミツバチはどのように生活しているのでしょう。


Prev | Home | Next