キンリョウヘンの唇弁の色変化はハチを避ける戦略
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 多くのシンビジュウムは、花粉媒介が済むと(蕊柱から花粉が取れただけでも)唇弁が着色します。これは、花粉が取れることが刺激になり、植物ホルモンの一種であるエチレンが分泌され、唇弁内に赤色の色素であるアントシアンが形成されるからと考えられています。


【C.hookerianum】

 このような現象は、他の花でも知られています。特にランタナが有名です。この花は、黄色の花から赤色の花に花の色が変化します。この花の花粉媒介者である蝶は、花粉媒介が済んだ花を訪花しません。これは、花が色変化と同時に、蝶を誘う蜜を出さなくなり、蝶がそのことを学習し、蜜の出ない赤い花を訪花しなくなるからだと考えられています。花粉媒介者に余計な行動をさせないように、花が進化して来たのです。

 キンリョウヘンも多くのシンビジュムと同様、受粉によって唇弁が着色します。写真は受粉前と受粉後の花の様子を示します。花は色が変わるだけでなく、少しうつむきます。

受粉前のキンリョウヘン受粉後のキンリョウヘン

 キンリョウヘンは普通、10本ほども花茎が出来ます。その内二本だけ残し、片側を受粉し片側をそのままにして、花の数、花の向きも出きるだけそろえ、ニホンミツバチの訪花を観察しました。

 この結果は、ミツバチが受粉した花と受粉していない花を区別していることを示しています。しかし、受粉した花は、形態的に受粉していない花と少し異なります。形態的な差を取り除くために、エチレンの働きをする農薬(エスレル)を唇弁に塗りました。エスレルを塗ると受粉と同じように唇弁が赤く着色します。しかし、受粉時に見られた花の形態的な変化が見られません。

エスレル処理前エスレル処理後

 同じように、ニホンミツバチの訪花を観察すると、着色花への訪花が少し増えます。これは形態変化による訪花の減少が少しあった事を示すものです。
 結果的にキンリョウヘンは、花弁とがくから蜂を誘引する花香を出し、訪花に蜂を誘い、花に近づいた蜂を唇弁の色の変化によって、受粉していない花を受粉するように仕向けていると考えられます。もちろん、植物には意志もありませんので、これらの現象は長い進化の過程を通して出来上がってきたのでしょう。


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