このように、ソフトウェアによってその動作を変更できる無線機をソ フトウェアラジオと呼んでいるようです。 もちろんこのような流れの中核にあるのはいわゆるデジタル信号処理(DSP)と 呼ばれる技術であり、それの占める割合が次第に増えているということでしょう。
今のメーカ製のアマチュア無線機でDSP機と呼ばれているものも、 ソフトウェアラジオと言ってもいいのかも知れません。 ただし、そのソフトウェアは公開されていませんから、 ユーザが変更して実験することはできません。
一方、ソフトウェアラジオに関する実験を精力的に行なっている アマチュアがいて、WebページやARRLのQEX誌などでその内容が発表されています。 そのいくつかを以下簡単に紹介します。
Visual Basicで書かれている信号処理と各種制御を行なうソフトウェアは オープンソースであり、自由に変更できます(ただし、信号処理の基本的な 要素はIntelのproprietaryなライブラリを用いてる)。
50MHz帯までの入力高周波信号を、DDSによる局発と Quadrature Sampling Detector(いわゆるTayloe detector、 つまりメリゴ方式と基本は同じ)でダイレクトにベースバンドに落し、 ある程度増幅したあと、PCのサウンドカードに入れ、 あとはソフトウェアで処理します。 ダイレクトコンバージョンと同じ構成と考えて良いのですが、 ただしIFのセンターは0Hzではなく、11.025KHzになっています。 これは電源ハム等の低域のノイズ、高調波の問題などから逃げるためです。
性能的にはMDSが-120〜-140dBm程度(設定による)で、3rd IMD ダイナミックレンジは 妨害信号がサウンドカードの帯域内にあるときで、90dB程度という報告があります。 なお、SDR-1000はトランシーバであり、受信の場合と逆の流れの処理で送信の処理を 行ないます。現在のキットでは出力は数W程度ですが、将来的には100W程度の リニアアンプもリリースされる予定です。
FlexRadio社のサイトには 元のQEXの記事のPDFファイルなども置いてあります。
SDR-1000を購入しました。インプレッション等についてはblog (JI3GAB/goo-blog)の方も御覧ください。
目標性能はかなり高いもので、たとえば20mバンドでの受信性能は IP3>+30dBm, NF=22dBm(MDS -125dBm @500HzBW)となっています。 A/D変換にはアナログデバイセズ社の14bit/65Mspsのものを採用しています。 なんだ、14bitって少な過ぎるのでは?と思うかも知れませんが、ことはそう 単純ではありません。最終的に必要な帯域が数kHzであるのに対して、 65Mspsという高いレートでサンプリングしているために、実質的に有効な 解像度を上げることができるのです(processing gainと呼ばれる)。 この記事によれば14bitでまったく十分とはいえないものの、 実用上ほぼ足りるということのようです。 この辺の話についてはまた述べたいと思いますが、詳しく知りたい方は 是非元の記事を読んでみてください(下のARRLのリンクを参照)。
ただし、SDR-14のハードウェアはベースバンドへの周波数変換と帯域の制限のみを 行なうだけで、復調や狭帯域のフィルタリングなどの処理はUSB接続したPCで行なう ようです。
PC上の処理ソフト(SpectraVue)はついてきますが、 これは多分ソースは公開されないと思われます。 ただ、USBで送られてくるデータのフォーマットは多分わかるので、 自分でさまざまな処理を行なうソフトを作成することは可能でしょう。
いわゆる普通の受信機というよりスペクトラムモニターみたいな使い方、 あるいは測定器としての使い方に主眼を置いている気がします。 アマチュアバンドの受信機としては、これの前に狭いBPFかプリセレを 入れた方がいいのではないでしょうか(実際、将来的なオプションとして BPFが検討されている模様)。MDSは500Hz帯域で-134dBmというデータが ありますが、IMD特性などについてはわかりません。
しかし、PC側のハードディスクや処理能力が許せば、かなりの帯域の 記録をとっておくことができ、それを後から処理して必要な部分を プレイバックすることができるなど、新しい使い方がいろいろ考えられそうです。
これはアマチュアのプロジェクトとは言えないのでしょうが、 開発しているのはアマチュア無線をやっている人達らしいです。 demoページを見るとアマチュアの信号ばかりですしね。