・・・すべてはこの一通の手紙から始まった!


 ◆「黒い二月の会」発足

 【1980年(昭和55年)229日】TBSラジオ
 「野沢那智・白石冬美のパック・イン・ミュージック」(※Mr.ORANGE CATさんによると、657回目)


  (野沢→ナ 白石→チ)

 ナ「お二人様 おはようございます。初めてお便りいたします。
   少し遅れましたが、あの本当に嫌な2月14日、そう、例のチョコレート大売出しの日」

 チ「バレンタインデーね」

 ナ「かたちがどうあれ、ボクが初めてチョコをもらったのは、二年前。
   それも同じクラスの女の子がいろんな人にあげているのをボクがたまたま見ていると、
   物欲しげに見えたのか、彼女はボクの方へつかつかっと歩いてきてひと言。
   『欲しいの?』『い、いやオレは別に』『じゃ、確か家に何個か余ってるのがあるから明日
   持ってくるわ』と言い、翌日本当にハート型のチョコを持ってきました。
   『人の余りもんなんかもらえるか、バカヤロー』と言おうと思ったのですが、
   結局もらってしまいました。
   あの時の情けなさと、反面うれしかった気持ち、いまだに忘れません。

   そして二年後、2月14日。
   朝、今日は休もうかとも思いましたが、何とか重い足どりで学校へ。
   2時間目あたりから周囲の女どもが紙包みの仕分け作業を始めているのを横目に、
   全くの無関心を装ってボクは必死に黒板を写していたんです。

   すると、そのうち、女どもが話しているのがふと耳に入ってきたんです。

   『ねえ、でも一人だけあげないなんて、やっぱりまずいんじゃない』
   『でも誰があげるのよぉ、あたし絶対いやよぉ。ヘンに勘違いされるといやだもん』

   もしやボクのことでは。
   ボクは確かに仲間うちでは一番見劣りはします。

   昼休み、さらに追い討ちをかけるように彼女たちの会話が聞こえてきました。

   『ねぇ、ナカムラくんに誰があげるのぉ』
   『どうするぅ』

   この先はどうしても聞けませんでした。
   そしてこの会話によって、それまで残っていたハナクソほどの希望さえも消えたのでした。

   5時間目が終わり休み時間、それでも希望は捨てきれずに、
   そうだ、奴らだけが女ではないと、バッグの中をきれいに整理整頓し、
   わざとしばらくの間、教室を出てみました。
   チャイムが鳴って教室に戻ってもバッグの中身は見ずに6時間目を終わらせ、
   念のためにもう一度教室をしばらくの間出てから、もう一度教室に戻り、
   さて中を見てみようとした時です。

   友人Fが何故かその日に限って、『オイ、一緒に帰ろうぜ』とやけにせかすんです。
   仕方がないのでバッグの中を見るのは後回しにして、一緒に校舎を出ました。
   『おいF、お前今日クラブじゃないのか』と聞くと、『あ、そうだよ、じゃあね』と
   体育館へ走って行きました。
   何だい、一緒に帰ろうって自分から言ったくせに。ヘンなヤツだと思いながら駅へと向かいました。

   途中、どうしてもガマンできず、最後の期待を託したカバンを開けてみました。

   『ない』。

   奥の方まで念入りにさがしてみても、ない。
   今年もダメかぁ・・・。
   電車の中で絶望と情けなさに打ちひしがれていると、ふとさっきのFの態度を思い出しました。
   そして同時に彼の態度に気づきました。
   ボクだけ帰らせておいて、後でチョコレートをみんなで・・・。
   いや、そんな風に考えるのはよそう。彼はボクにみじめな気持ちにならぬように気づかってくれたんだ。

   その日は一日やりきれない気持ちでいっぱいでした。
   ちなみに翌日学校へ行ってみると、思ったとおりみんなそれぞれチョコレートをもらっていたようです。
   もひとつ、ちなみにFは9個もらったそうです」

 チ「かわいそうに」
 ナ「かわいそう」

 ナ「日本全国にも毎年2月に入るとゆううつになり、14日になれば人間不信に落ち込む人がたくさん
   いることと思います。」
 
 チ「チョコレートがなんだ!」 
 ナ「そうよ!」
 チ「あんな甘いもの、虫歯ができるばっかりだ!」
 ナ「そうだよ!最近のチョコレート、本当甘いんだよね。チョコレートらしいの無くなってきたよ」
 チ「そんなのもらわなくたっていいんです!」

 ナ「いつまでも泣き入っていては進歩は望めない」
 チ「そうだ!」

 ナ「今こそ立ち上がろう!ここに私は宣言する!
   たった今より、来年の2月14日に向けて、バレンタインデー廃止運動を行い、
   バレンタインデー廃止運動グループを発足する!

   名づけて『黒い二月』。
   入会希望はTBS金曜パック野沢様方『黒い二月』入会希望係。
   つい興奮してしまいました。乱筆乱文お許しください。やまむちももげより」



 

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