【資料21 入管法上の通報義務の解釈について】

0.解説
 オーバステイの外国人が公的な機関で手続きをするたびに、担当者や担当部局が悩むのはその通報義務についてである。一般則として地公法上の規定もあるが、入管法にも62条第二項で規定されており、この場合は特別法たる入管法の解釈が優先される。
 運用を見ると、各機関の本来業務の重要性からみてその円滑な遂行を確保する必要があれば、この通報義務とのバランスを考慮しながら、この規定が必ずしも最優先されないケースがないわけではなかった。課税や徴税にまつわる業務や、外国人登録業務、労災など労働関係の業務が、その代表的な例であるということができる。ようするに、「摘発より社会的に重要性の高い行政業務を遂行するためになら、入国管理局等への通報を避けられる」という論理である。
 この通達は、家庭内暴力の被害者の救済を目的としたDV(ドメスティックバイオレンス)法の改正議論のなかで、外国人配偶者やその子ども達が被害者である場合に、在留資格を失っているケースが少なくないことから、関連機関が入国管理局や法務省に見解の提示を求めたことが契機となり、発せられた通知である。
 もちろんこの通知自体は、DV対策関連の業務について言及しているものである。しかし、上記のような広範な業務に転用すべき考え方を、初めて明示したものとしても大いに注目されよう。
 公務員は、入管法上の通報義務を果たそうとするとき、自ら職務とする業務を果たすことと通報と「どちらがより社会的に重要であるか」を判断する立場にあることが、この通知で明示されたといえるからである。
 逆に外国籍住民やその関係者は、「あなた方は重要性が劣ると判断するのですね」と迫ることができる。

(渋谷次郎 2003.12.14)



法務省管総第1671号
平成15年11月17日
入国者収容所長 殿
地方入国管理局長 殿
地方入国管理局支局長 殿

法務省入国管理局長
 増田 暢也

 出入国管理及び難民認定法第62条第2項に基づく
通報義務の解釈について(通知)


 当局では、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第62条 に第2項に基づく通報義務の解釈に関し、国会等において、下記のとおり説明 していますが、平成15年4月からは、別添のとおり、内閣府男女共同参画局 のホームページ「配偶者からの暴力被害者支援情報」に「被害者が外国人の場 合」と題して、配偶者暴力相談支援センターの職員の通報義務について同様の 内容が掲載されています。ついては、この趣旨を部下職員に周知徹底するとと もに、外部から照会があった場合には、その旨説明願います。
 なお、管下出張所に対しては、貴職から通知願います。



 入管法第62条第2項に基づき、国又は地方公共団体の職員には、その職務 を遂行するに当たって、退去強制事由に該当する外国人を知ったときは、通報 義務が課せられている。しかし、その通報義務を履行すると当該行政機関に課 せられている行政目的が達成できないような例外的な場合には、当該行政機関 において通報義務により守られるべき利益と各官署の職務の遂行という公益を 比較衡量して、通報するかどうかを個別に判断することも可能である。
 なお、不法滞在の状態にある配偶者等の暴力の被害者が日本において正規に 在留できる状態を回復するためには、入管当局に出頭の上、退去強制手続の中 で、法務大臣から在留特別許可を受けるしか方策はないので、仮に支援センタ ーにおいて、通報しない場合であっても、在留資格を回復させるため、入管当 局への出頭を勧めることが望ましい。

添付物 
内閣府男女共同参画局のホームページ(抜粋) 1部



内閣府男女共同参画局のホームページ(抜粋)

Q&A

問: 不法滞在外国人からの相談を受けた職員は、出入国管理及び難民認定法第62条第 2項に基づき、入国審査官又は入国警備官に通報しなければならないか。

答: 国又は地方公共団体の職員には、法律上通報義務が課されている。しか し、その通報義務を履行すると課せられている行政目的が達成できないような 特殊例外的な場合には、通報義務により守られるべき利益と職務の円滑な遂行 という公益の比較衡量により違法性が判断される。
また、不法滞在の状態にある被害者が日本において正規に在留できる状態を回 復するためには、入管当局に出頭の上、退去強制手続の中で、法務大臣の在留 特別許可を得るしかないことから、支援センターにおいては、その旨を説明し た上で、入管当局への出頭を勧めることが望ましい。


【掲載者による転載:出所は http://www.gender.go.jp/e-vaw/need/nd09.htm】


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