<解説>
既婚外国人女性が、夫以外の日本人男性との間にもうけた子どもについては、法律的に夫の嫡出児であるとの推定がなされるため、じっさいの父親による胎児認知ができない。日本国籍を出生時より取得させるには、迅速な手続きが求められる。具体的には、出生後3か月以内に親子関係不存在確認の訴を起こし、家裁での審判が確定後14日以内に認知の届出を出す必要がある。こうすれば、出生前に認知を行ったばあいと同様に、滞りなく日本国籍が取得できる。この時間的制限に遅れた場合は、その理由を示す資料を認知届けとともに提出した上で、法務省民事局長によって可否が判断されることになる。(98年1月30日法務省民事局長発の通達)
「外国人母の夫の嫡出推定を受ける子について、日本人男から認知の届出があった場合の日本国籍の有無について」
[平成10.1.30民五180各法務局長・地方法務局あて民事局長通達]
客年10月17日、最高裁判所は、日本人男と婚姻中の外国人女から出生した子について、母の夫との間の親子関係不存在確認の審判の確定後に、母の夫以外の日本人男が認知の届出をしたことにより生来的な日本国籍の取得が認められるか否かが争われた事案において、「客観的に見て、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ日本人である父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情がある場合には、右胎児認知がされた場合に準じて、国籍法2条1号の適用を認め、子は生来的に日本国籍を取得すると解するのが相当である」との立場を明らかにした上、「右の特段の事情があるというためには、母の夫と子との間の親子関係の不存在を確定するための法的手続きが子の出生後遅滞なく執られた上、右不存在が確定されて認知の届出を適法にすることができるようになった後速やかに認知の届出がされることを要すると解すべきである。」と判示し、当該事案については、子の出生の3ヶ月と3日後に母の夫と子との間の親子関係の不存在を確認するための手続きが執られ、その不存在が確定してから、12日後に認知の届出がされているから、上記「特段の事情があるというべきであり、このように認めることの妨げになる事情はうかがわれない」として、国籍法2条1号を適用し、生来的な日本国籍の取得を認める判決を言い渡しました。(平成8年(行ツ)第60号事件最高裁判所第二小法廷判決)。
ついては、この最高裁判所判決の趣旨にかんがみ、外国人母の夫の嫡出推定を受ける子の生来的な日本国籍の取得については、今後、下記のとおり取り扱うこととしたので、これを丁知の上、貴管下各支局長及び市区町村長に周知方取り計らい願います。
1. 外国人母の夫(外国人男の場合を含む。)の嫡出推定を受ける子について、その出生後遅滞なくその推定を排除する裁判(母の夫と子との間の親子関係不存在確認または嫡出否認の裁判をいう。以下「嫡出推定を排除する裁判」という。)が提起され、その裁判確定後速やかに母の夫以外の日本人男から認知の届出(既に外国人の子としての認知の届出がされている事案においては、子が日本国籍を有する旨の追完の届出。以下両者を併せて「認知の届出」という。)があった場合には、嫡出推定がされなければ胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情があるものと認定し、その認定の妨げとなる事情がうかがわれない限り、子は、出生により日本国籍を取得したものとして処理するので、その対象となりうる認知の届出等を受けた市区町村長は、その処理につき監督法務局若しくは地方法務局又はその支局(以下「監督局」という。)の長の指示を求めるものとする。
2. 監督局の長は、子が出生してから嫡出認定を排除する裁判が提起されるまで
に要した機関及びその裁判が確定してから認知の届出がされるまでに要した期間を確認した上、次のとおり取り扱うものとする。
(1) 子の出生後3ヶ月以内に嫡出推定を排除する裁判が提起され、その裁判確定後14日以内に認知の届出等がされている場合には、嫡出認定がされなければ胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情があるものと認定し、この認定の妨げとなる事情がうかがわれない限り、子は、出生により日本国籍を取得したものとして処理するよう指示する。
(2)(1)における認定の妨げとなる事情がうかがわれる場合には、その認定の妨げとなる事情についての関係資料を添付して、その処理につき当職の指示を求める。
また、嫡出推定を排除する裁判が子の出生後3ヶ月を経過して提起されている場合、又は認知の届出等がその裁判確定後14日を経過して行われている場合には、その裁判の提起又は届出に至るまでの経緯等についての関係資料を添付して、その処理につき当職の指示を求める。