治癒システムは免疫システムより上位に位置する |
人間の生命は免疫、内分泌、自律神経という3つのシステムにより維持調節されている。その中でも免疫システムは、体内に侵入する外敵から身を守り、「がん」や新陳代謝で生じる「不要なもの」を認識、排除するシステムとして、直接生存に関係するために特に重要である。ところが爬虫類以前の動物では、免疫システムを持っていないにもかかわらず、外敵から身を守ることができるし、人間でも、老化と共に免疫システムは、著しく低下してしまうのにもかかわらず(40才で二分の一、60才で四分の一)、80才以上の寿命を持っている。何故か。これが下等な動物も持っている、マクロファージを中心とする治癒システムなのである。
少し脱線するが、何故免疫システムが生まれたのかを説明しよう。
動物の進化の過程で特に画期的なものが、爬虫類から鳥類への進化、すなわち冷血動物から温血動物への進化である。進化はいかに効率良く、食べ物をエネルギーに代えるかの方向に進む。この効率を良くする一番の方法は、生体内の酵素反応を高めることにつきる。酵素反応は適当な温度があれば、飛躍的に盛んになる。ということで、細胞内にミトコンドリアを増やし、ATPというエネルギー生産システムを作り出す方向に進み、ついに体温を持つ恒温動物へと進化したのである。
ところがこの代償に、温血動物は体内に侵入した外敵にも、増殖するのに適当な環境を与えてしまった。そのため温血動物は、より厳格に外敵の侵入を「監視」するシステムの増強を図らねばならなくなり、その結果生まれたのが「自己にとって異物であるか否かの認識をする」免疫システムなのである。
免疫システムはこの意味では進化の頂点を極めた、生体防御システムのように見られるが、「がん」や「自己免疫疾患」等、現在の難病のほとんどが、このシステムの低下と乱れから生じていることからもわかるように、意外に「やわ」なシステムなのである。ちょっとした生活環境の変化、ストレス、老化等により簡単に破綻してしまうのである。(さらに進化すれば、何億年後にはより完成に近づくのか?)。
治癒システムの特徴は、「やわ」な免疫システムと違い「完成度」が著しく高く、しかも免疫システムよりもストレス、環境悪化、老化による機能低下が少ない。さらに治癒システムは、40才以後に免疫システムが「半身不随」になった後の生体防御に深く関与し、「がん」の発生を防いたり、「がん細胞」を攻撃したり、成人病の治療、予防に深く関係する、「死んだ細胞の排除」に、重要な働きをしており、生体防御の観点では免疫システムより「上位」に位置づけられる。
すべての病気は細胞の死から始まり、それが組織、器官、内臓の損傷となり発生する。一方細胞の死は、新たな細胞の再生を促す、すなわち新陳代謝である。この時に大事なことは、死んだ細胞の排除である。排除されないと再生が起こらないので、新陳代謝がうまく進行しない。
治癒システムの本体とはまさに、この死んだ細胞の排除システムなのである。(一方免疫システムとは異物の認識システムと言える)。
すなわち死んだ細胞を排除し、新たな細胞の再生を促すことにより、組織、器官、内臓を修復し、その結果いろいろな病気を治してゆく、「自然治癒力」そのものと言ってもよいシステムなのである。
この排除という作業に必要なものがマクロファージ(食細胞)であり、その活性度が非常に重要である。活性度が高ければ高いほど、排除はスムースに進行する。活性化されたマクロファージを「活性化マクロファージ」と言う。一方人間は老化に伴ってマクロファージの活性度が低下する。
活性化マクロファージと、活性化されていないマクロファージの比率(A/N比)は自然治癒力と考えても良い。年齢を横軸に、A/N比を縦軸にプロットすると、「老化曲線」に一致し、「がん」を始めとする成人病の発生頻度ともきれいに相関する。
マクロファージの活性化には、マクロファージ活性化因子(MAF)が必要である。細胞が老化し死ぬと、その老廃細胞からある蛋白質が切り出され、これがB細胞、T細胞を刺激する。一方血清中に存在する、ある糖蛋白がこの刺激により2段階の切断を受けMAFになる。
ところが老化が進むと、このルートがスムースに進行しないために、MAFが十分に生成されず、マクロファージが活性化されにくくなる。「がん」や成人病の頻度が高くなる所以である。
一方マクロファージは、T細胞という免疫細胞に「異物」ですよということを提示する過程と、「異物」を破壊処理する過程で、免疫システムにも関与している。
マクロファージの活性化の程度は、この場面では「破壊処理」能力に関係してくる。活性化されていないマクロファージでも、侵入してくるウイルスなどを破壊処理する能力は持っているが、活性化するとこの能力は格段に向上し、最終的には「がん細胞」までも破壊しうる「スーパーマクロファージ」にまで達する。
以上述べてきたように、活性化マクロファージを中心とする、治癒システムは、免疫システムを補佐すると同時に、免疫システムが十分働かなくなった、中年以後の「がん」や成人病の治療と予防に、絶対に必要なシステムであり、これを正常に保つことこそ、自然治癒力を高める最高の手段であることが、おわかりいただけたと思う。
なおマクロファージを活性化する物質、「マクロファージ活性化因子」(MAF)は、従来から免疫システムでもインターフェロンガンマとして知られていたが、10年程前、米国ハーネマン大学の山本信人博士、日本感光色素研究所の中川美典博士などにより、新たな活性化因子が発見され「Gc−MAF」と命名された。これはインターフェロンガンマが「炎症」をスタートとするのに対して、「自己の体細胞の死」がスタートとなる。すなわち新陳代謝や老化により生じる「死んだ細胞」や「がん細胞」」の排除には最適なマクロファージ活性化因子である。
なお「Gc−MAF」は、血液の中にある一種の蛋白質「Gcグロブリン」から作られ、その生成を促進する物質が、いくつかの感光色素の中から見出されており、一部は医薬品として販売されている。
このメカニズムは相当難しいのでここでは述べないが、興味ある方は一般向け啓蒙書である中川美典博士著「自然治癒力に挑戦」(ミリオン書房 1600円)をご覧下さい。
別項にもう少し詳しく本項の「続編」を書きました。
別の視点から治癒システムについて書いた別項も参考にして下さい。
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