一部の肥満がウイルスによって感染するという説

 ペットの犬が肥満だと、有意に高い確率で飼い主も肥満であるという報告があります。1982年ロックフェラー大学のグループが、ウイルス感染によってマウスに肥満が生じることを、権威ある科学雑誌「サイエンス」に報告しました。

 それによると、犬のジステンバーウイルスをマウスに接種すると、数ヶ月後に肥満になることが示されています。考えられているメカニズムは次のようなものです。感染した直後に動物の脳を調べると、ウイルスが視床下部に存在していることが判明しました。視床下部には食欲中枢や、エネルギー消費の中枢が存在しているので、ウイルスがその機構を阻害した結果、肥満が生じるのではないかということです。

 1996年ウィスコンシン大学のグループは、36型と呼ばれるアデノウイルスのヒトへの感染状況を調べたところ、肥満者では15%が感染していたにもかかわらず、非肥満者ではゼロであったという報告をしています。この36型ウイルスは、ニワトリやマウスにも肥満を感染させることも報告されています。

 1997年には別のアデノウイルス、「SMAM−1」がヒトの肥満に関連することも報告されています。

 一方医学界には懐疑的な反応もあります。例えば「肥満者には、そもそも肥満による免疫システム低下があるから、特定のウイルスに感染しやすいのだ。」とか「肥満を生じる遺伝素因や環境の中には、それらのウイルスに感染しやすい状態が存在する。」といったものです。

 ウイルス感染が肥満の「原因」なのか「結果」なのかという論争なのですが、もし「原因説」が正しいとするならば、家族や学校、会社に肥満者がいれば全員が肥満になる筈だし、それこそ人権問題になる筈です。

 たとえ正しいとしても、肥満者のそばに生活する人間全てが肥満にならないことを考えれば、免疫システムに異常がない人間には感染しないことが理解出来ますし、感染して視床下部がなんらかの損傷を受けても、治癒システムが正常ならば、すばやく細胞の異常を修復して肥満になることを予防出来るでしょう。

 別項にある「レプチン」の問題を含め、まだまだ「肥満問題」は健康に重大な影響があるだけに、色々な研究がこれからも続けられることでしょう。
(この項は日経新聞2000年4月23日号の記事を参考にしました。)

これだけはぜひ読んで下さい

 40年近く漢方相談を続けていますが、20年以上きちんと毎月ご来店下さり、予防に一生懸命取り組んで下さっている方がいる反面、数ヶ月服薬して症状が軽くなったらもう顔を見せなくなり、数ヶ月たってまた再発したから(ほとんどが前より悪い状態になる)、「何とかして下さい」と言って来店し、また数ヶ月で来なくなる・・・・、この繰り返しの方(または1−2月服薬して「効果が現れない」とあきらめてしまう方を含めて)が非常に多いのを残念に思います。

 漢方薬に速効性を期待すること自体が無理な話なのですが、それ以上に大切なことは「症状が軽減した後」の予防、即ち健康のメンテナンスなのです。

 漢方薬が好んで使われる病気のほとんどが、「慢性疾患または成人病(老化病と認識すること)」です。症状が軽減または消失した時点で、ほとんどの漢方薬の役割は終わるのですが(ここで「治った」と勘違いすることが大変な誤解)、ここからが私が提唱する療法(漢方薬プラス免疫、治癒システム低下防止療法)の「大切な後半」に入るのです。

 ある年齢以降の慢性疾患、成人病(老人病)の多くは「非可逆的」(完全には治らない)病気です。それは人間の老化(即ち細胞の老化)が「止められない」ことと同じことなのです。すなわち症状が軽減または消失したとしても、病気の本体の「細胞の老化」は、必ず進んでいるのです。

  一見健康そうに見える方でも、「盛りを過ぎた」30代以後の方の場合には、免疫システムが「瀕死状態」で、かろうじて治癒システムで健康を維持してる状態ですし、40代を過ぎた方の場合には、「頼みの綱」の治癒システムも低下が始まっています。

 まして一度慢性疾患や成人病を経験した方なら、一旦は免疫システムや治癒システムが「破綻」してしまっていたのです。従って症状が軽減したからと、システムの低下防止の措置をやめてしまったらどうなるのでしょう。再発した時には「症状はより悪くなり」、システムの低下もまた一気に進んでしまうのです。

 現代医学療法も漢方療法も、その目的は同じです。すなわち薬で症状(苦痛)を軽減し(効かせる)、その間に「治癒システムの回復を待つ」ということです。何回も書いていますが、大変重要なことですから是非理解して頂きたく思います。それは「治すのは医者でもなく薬でもなく、あなた自身の持つ治癒システムである」という事実です。

 私は閉塞状態にある現代医療砂漠(膨張の一途をたどる医療費)を解消する手段は、「予防医学教育にある」といつも考えています。

胃潰瘍の原因細菌(ピロリ菌)が慢性じんましんの原因でもあった

 ピロリ菌は数年前、胃潰瘍の原因細菌であることがわかり、一躍有名になった細菌です。それ以後胃潰瘍の手術を激減させた「特効薬」シメチジンと共に、ピロリ菌の除菌療法が、胃潰瘍治療の中心になっています。

 一方じんましんは、主に食べ物によるT型アレルギーの典型的疾患(別項参照)ですが、症状が1月以上続く慢性型は、その80%が原因不明とされ、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤による対症療法(一時抑え)が唯一の治療法でした。

 漢方の世界では昔から「皮膚は内臓の鏡」といわれ、皮膚病を内臓(胃腸)から治すことが常識でありましたし、現代医学(皮膚科)でも以前から「胃潰瘍のある人に、じんましんが出やすい」ことは経験的に知られていました。

 2000年4月の日本臨床皮膚科学会で和歌山県立医大皮膚科、古川教授達は「ピロリ菌が慢性じんましんの原因のひとつである」ことを示すデーターを発表しました。すなわち「前述の対症療法が効かない「難治性慢性じんましん患者」の65%からピロリ菌に対するIgG抗体が検出され、(T型アレルギーの直接的原因であるピロリ菌に対するIgE抗体の存在もその後確認された)、除菌療法により73%の患者に効果があった」と発表しました。

 そのメカニズムに関してはまだ不明な点が多いのですが、次のような仮説が考えられています。

 すなわち「胃や十二指腸の粘膜に潰瘍によるバリア異常が生じ、これにピロリ菌の感染が重なると、やぶれた粘膜から菌体成分やトキシン(毒素)が侵入し抗原となり、これが食べ物などの別の抗原と重複してT型アレルギーを起こす」というものです。

 急性のじんましんでは、特定の食べ物等が「抗原」となり、これにIgE抗体が結合し、さらに皮膚真皮にある肥満細胞とドッキングすることにより肥満細胞からヒスタミンなどの物質が放出されて発症しますが(免疫システムに異常がある人では、IgE抗体が多量に生まれてしまいます)、ピロリ菌感染が関与した場合には、食べ物だけの場合にくらべ、抗原抗体反応が長期間続くために「慢性化」、「難治化」するのではないかと考えられます。

 従来の「じんましんは、食べ物などによるアレルギーや、温度、運動、ストレスなどの非アレルギー反応等が関与して発症する」という説から、あらたに「感染」が原因の一つに加えられたことは、大変興味があります。さらに風邪や蓄膿症、肝炎など、じんましんとの関連が疑われる細菌、ウイルスも多いので、これからの研究に注目したいと思います。

 しかし(非アレルギー反応以外)いずれの場合でも、免疫システムの乱れによって、IgEという抗体が「異常に」「多量に」動員されてじんましんが発症するわけですから、免疫システム、さらにこれを上位から支えている治癒システム (別項参照)の修復が「根本療法」であることには変わりありません。

病院から出される薬をもっともっと知らなくてはなりません

 患者さんとの相談の中で、病院からもらった薬を見せれて、「この薬は長く飲んでいて大丈夫ですか」という質問をしばしば受けます。医者と患者との信頼関係が「希薄」になって来ている証拠でもあるのですが、逆に言えば「薬害から身を守る」患者さんの「知恵」でもあるわけです。

 しかし何の疑問も持たずに「病院からもらった薬だから」と、漫然と服用を続けている方が何と多いことか。「自分の体は自分で守る」という意識さえあれば、たびたび報道される「薬害」の多くは、未然に防ぐことが出来るのではないかと思います。

 以前は薬の名前さえも隠すように、薬名の部分を無理と剥がして患者に渡す病院も多かったのですが、消費者の「情報開示の要求」に答えて、最近は少し改善されて、薬名、作用、副作用などの簡単なパンフレットを渡す病院が増えてきました。また本屋さんの店頭にも「医者からもらった薬がわかる本」などの題名の本が並ぶようになってきました。

 これはこれで「一歩前進」ではあるのですが、もらった精神安定剤のパンフレットの「作用」の項目で、「精神を安定する薬です」、「副作用」の項目で、「眠気を催すことがありますから、運転はしないで下さい」程度の「情報」で、患者さんは納得しているのでしょうか。少なくとも私のホームページを見て下さるような「情報要求度の高い」皆様には「まだまだ物足りない」というのが、本当のところではないでしょうか。

 薬には大きく分けて、薬局で販売されている「一般用医薬品」と、病院(医者)だけで使われている「医療用医薬品」があります。後者には「取り扱い上の注意が必要な程度に応じて」、「毒薬」、「劇薬」、「麻薬」、「向神経薬」、「覚醒剤」、「習慣性医薬品」、「指定医薬品」、「要指示医薬品」などの「規制」が、単独または重複して設けられています。

 薬局で買うことが出来る「一般用医薬品」には「能書」の中に、「成分」、 「用法用量」、「適応症」など製薬メーカーが、「厚生省」に届け出た「全情報」が書かれています。もちろん「医療用医薬品」にもこの「全情報」が「厚生省」に届けられているのですが、これを一般の方が見ることは、たいへん難しいことなのです。(もっとも大型書店の専門書のコーナーに行けば、入手が出来ないわけではなかったのですが・・・。)

 何故なら「医療用医薬品」の「情報」というのは、「情報の受け手」が、薬剤師、医師という「専門家」であるという前提で書かれていますから、一般の方が例え読んだとしても理解が難しく、「誤解」が生まれるという「危惧」があるのです。

 ただインターネットなど消費者の「情報検索能力」が向上し、「薬害の報道」などから「自分の体は自分で守る意識」が高まり、また「薬そのものの知識を提供する報道」から、「もっと薬を知りたい」という要求も高まってきていることも事実です。

 こういった背景から昨年5月に、インターネット上にも「医療用医薬品」の 「全情報」が公開されるようになりました。(医薬品医療機器情報提供ホームページ)


 私のホームページの読者なら一度は見て頂きたいと思います。ただしこのページには2度にわたり「注意事項の確認」が要求されます。(パスワードは不要)すなわち「この内容はあくまで薬剤師、医師などの専門家向けの情報である」、「一般の方がこの情報を見て、勝手に服用を中断したりしてはいけない」旨の注意書きです。

 たしかに医学、薬学、生化学等の専門用語が羅列されていて、一般の方には理解が難しいことは事実ですが、この情報がきっかけで、「情報検索技術を駆使して」「理解しようとする努力」さえすれば、もっともっと「病気について」、 「薬について」の理解を深めることが出来ると思います。

 繰り返しになりますが「医療用医薬品の自己判断による中止、中断」は絶対にしないで下さい。「効く薬」は「中止、中断による反動」も「副作用」以上に「怖い」のです。

 別項「病院(医者)の薬の説明書を「うのみ」にする危険」に、向神経薬「デパス」を例に挙げて詳しく書きました。