インフルエンザの流行と熱性けいれん(ひきつけ)

 そろそろインフルエンザが流行する季節になりました。(今日現在では、まだ昨年の一割程度の流行のようです。)インフルエンザは健康な成人の場合には、「治癒システム」が働いて、数日で回復しますが、乳幼児、老人では「免疫システム」の「未完成」や「極端な低下」のため後遺症である脳症、肺炎により毎年何人かが亡くなっています。

 昨年、A型、B型両方に効く画期的新薬が発売され、感染後48時間以内に使用すれば、症状を軽減すると共に、治癒日数を早めることが出来るようになりました。(但し特殊な器具を使い、粉末を吸引する薬ですので、10才以下の小児に使うことは難しいようです。近くカプセル剤も発売されます。)

 インフルエンザには効果的な予防法がなく、せいぜい「うがい」、「マスク」「加湿」が奨励されていましたが、こういう薬が出てくれば「流行を早めに知り」、「予防的に」使用することも老人施設などでは、有効ではないかと言われています。(メーカーは予防的に使うことは推奨していない。)

国立感染症研究所による「感染症情報センター」は、都道府県別に、リアルタイムで、しかも迅速診断法で「陽性」という「感染が確実な症例」をインフルエンザの流行に絞って発表しているので、いち早く自分の住む地域の流行を知ることが出来ます。

 一方乳幼児では「予防」が出来ないというのが現実で、保育園、幼稚園で流行すれば、免疫がない場合には、ほぼ確実に感染してしまいます。インフルエンザは、感染するとまもなく38度以上の発熱が始まりますので、早めに小児科医に連れて行くことが大切なのですが、問題は約10%位の割合で熱性けいれん(ひきつけ)を起こす子供がいるということです。

 これは経験のない若い母親(特に一人きりで看病している場合など)にとっては、「恐怖そのもの」といってもよいほどの症状です。白目をむき、口から泡を出して手足をけいれんする様子は、「死んでしまうのではないか」という恐怖にかられます。昔は「舌をかむといけないからと、割箸を口にいれろ」などといった「おばあちゃんの知恵」があったようですが、現在の小児科医ではそれは「やってはいけないこと」とされています。(確実なことはわかっていないようですが、ひきつけは体温が37度位から39度以上に、急速に上昇する時に起き、何らかの防衛反応・・大人の場合では耐えきれない痛みの時の失神に相当・・ではないかと言われています。)

 ただ小児科医の対応にもいろいろあり、救急車を呼んだ方がよいという医者もいる反面、救急車など呼ばずに、「あわてずじっと良く観察し、けいれんの持続時間を計り、その結果を報告せよ」という医者もいます。(普通、ひきつけている時間が数分以内であれば、後遺症は残らないというのが定説になっています。)また解熱剤を使ってはいけないということは、ほぼ定説になってきましたが、抗けいれん剤の坐薬の使用には、賛否両論があります。また「一回ひきつけた子供はその後何回もひきつける」という医者もいたり、「複数回ひきつける子供は少ない」という医者もいて、母親を悩ませます。

 私は自分の子供では体験がないので、孫での体験をお話しましょう。
孫は1才9カ月で保育園に通いはじめ、その年の9月に一回目のひきつけをしました。(私も初めての経験で少々あわてました。)その後毎月のように発熱のたびにひきつけ(合計5回)、翌年の1月には1日の内に5回もひきつけました。(この時だけは深夜、小児科医へ連れて行き、安定剤の注射で眠らせました。)

 私が信頼し、おまかせしている小児科医は、「よく観察し時間を計り報告せよ」、「数分以内のひきつけならば何回やっても心配ない」という立場をとる先生でしたので、2回目以後には(つらいことではありましたが)、比較的冷静に観察することができました。

 その後、漢方薬と治癒システム修復剤を飲ませ始め1年経過しましたが、8月に一度軽いひきつけを起こしただけで、今年の冬も無事に過ごしています。

 確かに初めての体験では、あわててしまうのも無理のないことだと思いますが、常に時計を手元において、ひきつけが始まったらあわてずに「持続時間」を計ることを心がけてください。そして掛かりつけの小児科医になるべく早く報告して指示を求めてください。

糖尿病の治療は合併症の恐ろしさを知ることから

糖尿病は初期には自覚症状がほとんどないので、例え健康診断で「糖尿が始まっています」と言われても、「この程度ならまだ大丈夫」と自己判断して、治療を開始する方はほとんどいません。店頭に相談に訪れる方を見ていても、大変な病気であるという自覚がほとんどありません。

 良い例が「テレビでやっていたが、何とかという健康食品を食べたら簡単に治ったと言うから、それを下さい」といった方が大変多いのです。(私は一部の例外を除いて、民放テレビの健康番組のほとんどは「不健康番組」と認識しています。)

 糖尿病専門医は、のどのかわき、手足のしびれ、足がよくつる、視力低下といった症状が始まっていれば、もう相当病気は進んでいると判断しますし、まして10年、20年も放っておいて、初めて病院に来た時には、すでに失明一歩手前とか、壊疽(えそ)で足を切断しなければならない、といった例が少なくないということを警告しています。

 糖尿病で死ぬことはまずありません。糖尿病が怖いのはその「合併症」なのです。血糖が高くなると体が「砂糖漬け」になり、まず血管と神経がやられます。細い血管、神経からやられますから、目の網膜、腎臓の糸球体、末梢神経などが最初の標的になります。代表的な合併症を挙げてみましょう。(これらの危険確率については別項参照)

 糖尿病性網膜症
  成人の失明の大部分を占めている一番注意が必要な合併症です。
 糖尿病性腎症
  老廃物を排出できなくなり、尿毒症(腎不全)で生命の危険さえあります。
 糖尿病性神経障害
  しびれ、痛みから始まり、知覚神経が麻痺したり、運動神経が侵され顔面麻痺、インポテンツなどの多彩な症状を呈します。
 糖尿病性壊疽(えそ)
  傷が潰瘍となり、太い血管も閉塞し、最後には足の切断が避けられません。
 動脈硬化症
  糖尿病は高血圧、高脂血症を伴うため動脈硬化が進行しやすく、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の原因となりやすい。
 その他白内障、緑内障、脂肪肝などの原因にもなり、治癒システム、免疫システム低下により、かぜや膀胱炎などの感染症にもかかりやすくなります。

 さて、現代医学では(その95%を占める成人型について記しますが)糖尿病は次のいずれか、またはそれらの組み合わせの経口糖尿病薬を使って治療します。いずれも糖を「排出」するのではなく体に「散らばす」薬ですから、肥満になります。(詳細は専門書に譲ります。)

1:インシュリンの分泌を促進する薬(いずれインシュリンを分泌する膵臓は疲弊して働かなくなります。)
2:細胞の糖の取り込みを促進させ、肝臓からの糖の放出を抑制する薬。
3:インシュリンの作用を直接高める。薬(インシュリン抵抗性改善薬といわれ、画期的糖尿病薬と宣伝されたが、心不全、肝障害の副作用で1種類のみを残し自主回収された。) 
4:ぶどう糖の吸収を遅らせる薬(吸収を抑制するのではない。)

 いずれも「直接または間接的に血糖を低下させ、合併症を防ぐこと」が目的の薬ですから、低血糖や昏睡を防いたり、多彩な副作用を監視するために、定期的な検査による管理が必要であるし、何よりも糖尿病そのものを「治す薬」ではないということに注目しなければなりません。

 したがって家系に糖尿病がある方、血糖値が高くなり始めた方、過食や運動不足で肥満傾向のある方は「早め早め」の「糖尿病にならないための自己治療」に取り組まなければなりません。

 以上のことから考えて、成人型糖尿病の最大の原因は「老化」であり、これに遺伝的要素、治癒システム、免疫システムの異常、過食、運動不足、ストレスなどが絡み合って進行する病気ですから、「治す」というより「進行を食い止める」ということを目標に、治癒システム、免疫システムの正常化と肥満対策(減量)が、最も確実で賢明な手段ではないかと思います。

アトピー、花粉症は寄生虫を駆逐してしまった自然のタタリ?!

 人類は数百万年にわたり寄生虫と共生してきました。 ところが1949年に63%あった日本人の寄生虫(代表格の回虫の場合)感染率が、わずか数十年の間に激減し、最近では0.2%以下になってしまいました。このことがアトピーや花粉症の患者の激増と関係があるのです。

 回虫という言葉は、もう死語になり最近の若い方には寄生虫という言葉も、やっとパラサイト・シングル(親に寄生する独身)というカタカナ語として生きているにすぎません。

 1939年生まれの私が、1945年の終戦前後から小学校入学頃の生活を回想しますと、現在では想像することが困難な程の悪い衛生状態でありました。

 トイレ(便所という言葉も死語か)の水洗化は、東京など大都市の大きなビルや高級住宅地などを除き、ほぼゼロ%でしたから、一般家庭の大小便は、地下に備え付けの浄化装置もない便槽に貯めておかれました。定期的に農家のおじさんが「肥え桶」を乗せた「牛車」を引いて、一軒一軒「汲み取り」に来てくれ、 「引き取って」もらっていました。

 この大小便が、合成肥料のなかった当時の、唯一の肥料(これが本当の「ヒト製有機肥料」)になったのです。問題はこの「有機肥料」を、過熱調理しない葉菜などにも「直接」「ふりかけて」使用したわけですから、たとえ良く水洗いしたとしても、目には見えないだけで、他人の大便が口に入ってしまっていたのです。かくして回虫などの寄生虫は、ヒトからヒトへ何の障害もなく「感染」が出来たのです。

 小学校では年に何回か「検便」というものが行なわれ、当日はマッチ箱に入れた大便を大切に学校に持ってくる「儀式」となっていました。顕微鏡で寄生虫の卵を見つけるためであることは言うまでもありません。

 寄生虫の卵が見つかった生徒には、「虫下し」が与えられました。当時では希少価値であったチョコレートタイプの薬(たしか「アンテルミンチョコレート」という名前)でしたから好評でした。薬を飲んだ翌朝には、薬で麻痺状態になった寄生虫が、肛門から出てきて、それは気持ち悪いものでした。私と同年輩の方の多くは、肛門から成虫になった回虫を「引っ張り出した」気味悪い経験を持っている筈です。

 もう一つの体験を回想しましょう。それは「大掃除」という、年に1回の家庭にとっての「大事業」のことです。「大掃除」といえば、「なあんだ」と言われるかもしれませんが、それは今の「大掃除」とは「桁外れ」の大仕事だったのです。

 町内会の「組長」さんが、乾燥した季節の天気の良いが続く「特定の日」を指定します。するとその町内の家が、仕事を休んで一斉に「大掃除」を決行するのです。家にある家財道具一切、畳まで全部、道路に並べ(行き交うのは馬車、牛車くらいで、自動車など少ないので何の交通の障害にはならない)、畳は長い棒切れでほこりを丁寧にたたき出し、水洗いできるものは洗い、出来ないものはきれいに雑巾掛けし、徹底的にきれいにします。丸一日かかりますし、家族総動員なので、子供といえどもさぼるわけには行きません。

 また現在のアルミサッシ、ジュウタンなどありませんから、すきま風は当たり前で、ダニの繁殖に必要な温度、湿気などはありません。

 だいぶ脱線してしまいましたが、アトピー、花粉症と寄生虫との関係は、どうなのでしょうか。別項のT型アレルギーの部分をもう一度見て下さい。

 アトピー、花粉症は、まずそれぞれ「ハウスダスト(ダニの死骸、排泄物)」、「スギ花粉」が「抗原」となり、体内に入ることから始まります。体内には以前に入ってきていた、これらの抗原にぴったりと結合できる(鍵と鍵穴の関係に相当する)「抗体」がすでに肥満細胞に結合した状態で待機しています。この状態の時に新たに花粉抗原、ダニ抗原が入ってくると、一気に「抗原抗体反応」が起こり、その結果肥満細胞が破れ、中からヒスタミンとかセロトニンと呼ばれる化学物質が放出され、アレルギー反応が起こるのです。

 一方、何百万年もの長い間、寄生虫との戦いで出来上がっていた「対寄生虫防衛特殊部隊」は、寄生虫がいなくなり「失業状態」になっていました。そして何の因果か、スギ花粉抗原やダニ抗原が、寄生虫抗原と「分子的に」極めて似通っていました。そこで失業部隊は、その矛先をスギ花粉やダニに向け始めたのです。

 寄生虫に感染していると、免疫システムは寄生虫抗原に対応する、IgE抗体を「多量に」作り続けなければならず、例え花粉抗原やダニ抗原が入ってきても、これらに対するIgE抗体を作る余裕がありません。

 また対寄生虫抗体IgEは肥満細胞に付着しますが、この抗体は「不活性」なため、寄生虫抗原と結合しても、肥満細胞を破ることはありません。しかも肥満細胞の抗体結合部分をすべて塞いでしまっているので、花粉やダニに対する抗体が、結合することが出来ないのです。

 何百万年続いたこの状態が、つい数十年前一気に消えてしまったのです。免疫システムには、抗体生産能力に余裕が生まれ、寄生虫抗原に「分子的に」似た、花粉抗原、ダニ抗原に対するIgE抗体を作り始めました。しかも今まで塞がっていた、肥満細胞の抗体結合部分が「がら空き」の状態ですから、楽に結合することが出来るようになり、花粉やダニ抗原が入ってくれば直ちに結合し、肥満細胞を破るようになったのです。

 さらに経済が復興すると同時に、食生活、社会環境の悪化等から、治癒システム、免疫システムの乱れと低下が始まりました。これらシステムが乱れたり低下すると、「悪者」のIgEの生産を抑制する機構がおかしくなり、IgEが過剰になり、スギ花粉抗原、ダニ抗原との結合が起こりやすくなってきました。そして日本人は(他の文明国も同じですが)、アトピー、花粉症という新しい病気と戦わなくてはならなくなったのです。

 それではもう一度昔に帰って、日本人の体に寄生虫をパラサイトさせれば良いということを考えても良いのですが、さすがにそれは「ご免蒙る」と言わざるを得ませんね。

 そこで治癒システムの出番になるのです。治癒システムを高めると、マクロファージが活性化されます。すると免疫システムも正常化し、IgGという、「悪者」のIgEとは少し分子構造が異なる「抗体」を作り、IgEより「先に」肥満細胞の抗体結合部分に結合してしまいますから(このIgGを遮断抗体と言う)、スギ花粉抗原、ダニ抗原とIgEとの結合が起きなくなり、その結果肥満細胞が破れるのを未然に防ぐことが出来るのです。(「悪者」IgEの生成も抑制します)。

 あたかも寄生虫をもう一度パラサイトさせたように・・・・・