| 自律神経失調症に向神経薬と漢方薬を併用するという愚 |
すでにこのサイトでは、「日本の漢方薬の不幸」、「日本の漢方薬の不幸(続)」、「漢方薬の”適応症”の読み方の難しさ」、「病院の薬に代替出来る漢方薬はない」等、日本の漢方薬の問題点を書いてきました。
そもそも現代医学と漢方とは理論体系がまったく異なるのにも拘わらず、現在の薬事法は、現代医学で使う薬も漢方薬も、「同じ基準」で「適応症や効能効果」を記載させるという矛盾を抱えています。これが「日本の漢方薬の不幸」の根源なのです。
1976年に漢方薬が健康保険で使うことが出来るようになり、この矛盾が顕在化してきました。十分漢方理論を勉強していない医者が、漢方メーカーに「踊らされ」、現代医学では治療が困難な慢性疾患に、「試しに使ってみようか」という風潮が生まれました。(別項「デモシカ漢方」参照)。ただし現在では、漢方を一生懸命勉強し、漢方薬を診療に応用している医者が、多少ですが増えてきたことも事実です。このような医者は、2-3種類の漢方薬を同時に使うことはせずに、1種類の漢方薬だけを使い、しかも現代医学の薬との併用は、決してしない筈です。(これが「本物の漢方医とエセ漢方医」の見分け方でしょうか)。
相談を受ける時に、調剤薬局から受け取る「処方薬一覧」を持参する方が増えてきました。以前から現代医学で使う薬と漢方薬を併用する医者が、相当いることは知っていましたが、「処方薬一覧」を見る機会が増えると、「併用」がすごく増えてきたことがわかります。
現代医学で使う薬の胃への副作用を抑える目的で、「胃腸系?漢方薬」を併用することや、がんの患者さんに、「滋養強壮剤的?漢方薬」を併用する程度は、目こぼしが出来るのですが、(ただこれにしても悪い相互作用が起こらない保障はありませんが・・・)、あまり意味がないと思われる併用(医者の気休め?)や、明らかにおかしい併用が行われています。
その典型例が自律神経失調症における「併用」なのです。
自律神経失調症の現代医学的治療には、それ以外の選択肢がないために、ほとんど向神経薬が使われます。何回も書いているように、これは脳内で自然に分泌する化学物質に似せて作られた薬です。したがって長期に使用すれば、自然な分泌が妨げられ、いわゆる依存性、習慣性が生じます。
自律神経失調症は、生理機能を調整する交感神経と副交感神経が、バランスをくずした「病気でない病気」と言われています。ストレスの多い現代では、多くは交感神経緊張症や不安神経症や「うつ」ですから、神経科に行けばほとんど自律神経調整薬、抗不安剤、抗うつ剤、睡眠誘導薬等が処方されます。これらの薬には、「運転中は服用注意」と書かれているように、一種の「眠り薬」です。
したがって服用すればすぐ効いてきますから、緊張状態や不安感や「うつ」は軽減され、自覚的には落ち着き、気分は楽になります。この即効性と確実性のために、ついつい服用を続けることになり、依存性、習慣性が生じてしまいます。
ところが自律神経失調症に使う漢方薬は、気の滞りを動かす(発散)作用を持っています。そして全身の気滞を発散させる薬物と、消化器、循環器、婦人科、泌尿器、耳鼻咽喉科などに特異的に働く生薬を組み合わせた、数多くの処方があります。
ここまで読んだ方はお気づきと思いますが、向神経薬と漢方薬とは相反する働きを持っているのです。向神経薬は「抑制する働き」であり、漢方薬は「動かす働き」だということです。
向神経薬は直接かつ強力に、脳を経由して全身の働きを抑制しますから、漢方薬の動かす(発散)作用はほとんど働きません。要するに漢方薬は全く無意味なのです。逆に漢方薬の「動かす働き」が、強力ではないとしても、向神経薬の「抑制する働き」を弱める可能性があります。
これが「向神経薬を使いながらの漢方療法の無意味さ」なのです。
| 自律神経失調症と高血圧 |
今までも血圧を含め各種検査の問題点を書いてきました。
血圧の変動に一喜一憂は無意味です
高血圧の方は血圧を下げなければいけないという誤解
検査項目を増やせば「病気ではない異常」も見つかってしまう
特に血圧測定は、医療側からは「簡単に測れて点数になる」という点、さらに血圧の値が、「誰にでも理解されやすい数値」であること、患者側からは、家庭でも簡単に測れるようになったこと、それが数値で示されることなどの理由で、「健康のバロメーター」として広く行われています。
ところがその数値が一人歩きしてしまい、毎日のように測定し(1日に何回も測る人もいます)、一喜一憂するという「おかしな現象」を生んでいます。たしかに脳出血や心筋梗塞の家系の方で、常時最高血圧が200を越えている場合には、時々は測定する意味があるとは思いますが、それ以外の方が、10や20の上がり下がりを気にするということは、滑稽に見えてしまいます。
それは「血圧の基準値」だけを問題とし、「血圧の変動の意味」を教えられていないからなのでしょう。いわゆる「健康本、雑誌」などの健康情報には、「高血圧の恐ろしさ」が列挙され、投薬など医療に持ち込もうとする医療側の思惑もあり、「血圧敏感症」の方を混乱させています。
血圧が上がる原因はたくさんありますが、今回はストレスと血圧に絞って考えてみましょう。
誰でも怒った時には「頭に血がのぼる」ことを意識します。「血圧が上がったな」と感じる時です。怒った時というのは、戦闘状態の神経、すなわち自律神経の一つである交感神経が緊張した時です。もう一つの自律神経である、副交感神経とこの交感神経とのバランスは、常に変動しています。朝と夜でも違いますし、感情だけでも大きく変動します。ということは、血圧の値は、常に変動しているということなのです。
したがって自律神経失調症の方が、そうでない方に比べて血圧の変動がより大きいというのは当然のことです。自律神経失調症の症状を気にしている方がいる一方、多くはありませんが「血圧の上がり下がりだけ」を気にしている方もいます。
今回は漢方薬などを服用中のBさんという方が、たまたま職場で測った血圧の数値が気になって、メールで相談された時の、私とのメールのやりとりを書いて、参考にしていただきたいと思います。
Bさんのメール:
「こんばんは。実はこの間、会社で健康診断があったのですが、血圧が妙に高かったのです。上が140代でした。昨年までは110とか120でここまで高かったことは1度もありません。今日も仕事中、午後から気分がすぐれず風邪をまたひいてしまったかなと思っていたのですが、どうもおかしいなと思い血圧を測ってみました。(簡単に測定できる機械が職場にあるので・・・)
そうしたら上が149で下が90くらいでした。年齢もあるのかなと思い病院へは行くつもりでいますが、漢方薬が影響を及ぼしている可能性についてご意見お聞かせください」。
夜遅くだったので、簡単に「常時200以上の方以外は心配はいりません」という回答をしたのですが、翌朝もう少しお教えした方がよいのではないかと思い、次のメールを差し上げました。
私のメール:
「昨晩の続きです。簡易血圧計のあいまいさの検証。
一回測定後、ベルトをはずし、つけなおしてから再測定。これを数回やってみてください。
10や20は違うはずです。また朝と夜も比べてみて下さい。血圧は、起床時に起き上がる前に測定した値が本当の値です。安静時血圧です。これは比較的正確です。私は皆さんに「意味ないから血圧は測るな」と言っていますし、血圧計そのものも持っていません。簡単に測れるので、いかにも「診察してやった」という医療側の偽善(それに点数も加算される)だと思うのですが・・・・」。
翌日Bさんから頂いたメール:
「こんばんは。今日も職場で朝、血圧を測りました。階段をのぼってから計測したところ、150程度と出たのですが、もう1度計ったら120くらいになったのです。そしてもう1度計ったら110くらいでした。(下は80から90くらい)そして今、先生のメールを拝見させていただき、とても納得しましたし、安心しました。
今回のことで、私たちはそういう色々なもので、不安にさせられていることを身を持って感じました。
昨日は調子が悪かったので、今日も不安なまま仕事にでかけましたが、朝の血圧の結果のせいか、体調はむしろよかった感じです」。
最後の「私たちはそういう色々なもので、不安にさせられていることを身を持って感じました」と書いていただけたことが私にとっても、Bさんにとっても大きな収穫だと思っています。
なおBさんには、事前にこの項を見ていただき、サイト掲載の許可をいただきました。Bさん、ありがとうございました。
| 不況と消費と健康問題 |
未曾有の不況が到来したと世界中で大騒ぎです。連日のメディアの報道には食傷気味になります。何か「楽観的な話」はないのでしょうか。今回は、日頃考えている「消費」と「健康問題」について書いてみます。
「消費」とは「消える」、「費(つい)える」という「消えてなくなる」、「無駄に使われる」という漢字を組み合わせた言葉です。「消費」を辞書で引くと、”1 :使ってなくすこと。金銭・物質・エネルギー・時間などについていう。「ガスを―する」「―電力」、2: 人が欲望を満たすために、財貨・サービスを使うこと。「個人―」”とあります。
ところが不況を克服する最大の手段が、「内需(主に国内消費)を増やす」ということのようです。何も最近の不況だけではなく、景気回復を唱える論調には、今までもこの「消費拡大」が叫ばれて来ました。戦中、戦後を経験し、「消費は悪」と教えられてきた私には、以前からこの論調には「違和感」を感じていました。
人類以前の動物は、「土に戻る死」という再生産によって「資源の消費ゼロ」の営みを続けてきたのですが、人類は誕生以来、地球上のあらゆる物質を「欲望を満たすために」、延々と使い続けてきました。残された「物」は、膨大な「再生産不能なゴミ」だけなのです。地球にやさしいと言われる太陽光発電、風力発電にしても、その設備や維持には、やはり多くの経費(消費)を伴い、又これらが再生産可能なエネルギーだとしても、その用途は「消費財の生産」になってしまうのです。地球環境問題は、基本に「消費は悪」という考え方がなければ、解決は困難なのではないでしょうか。
そうは言っても、人間は消費なしには生活出来ません。ただ「欲望を満たすために」消費を拡大し過ぎることを考え直す時代が来たのだと思うのです。戦中戦後の耐乏生活をしろとか、発展途上国並の生活で我慢しろと言うのではなく、拡大し過ぎた消費を、「少しでも減らそう」という共通認識が世界中に広がれば良いなあと思います。
そこで消費の中の「食」について考えてみましょう。別項に「経済先進国の国民の免疫システムがこの数十年でメチャクチャになった理由」を書きましたが、ぜひ考えて欲しいのが、「人類が過ごした数百万年という飢餓の期間と、僅か数十年の飽食の期間」です。要するに、ほとんどの先進国の国民が飽食のために健康を害し、苦しんでいるのです。
そこで、「不況こそ、健康を取り戻す絶好の機会だ」という、逆転の発想はどうだろうか。不況だからと言って食費を切り詰めるということには、抵抗が多いと思います。しかし「空腹を我慢せよ」ではなく、「腹一杯食べるのをやめよう」、「空腹でもないのに食事時間になったから食べるというのをやめよう」という程度で良いのです。多くの動物実験でも、「食べる量が少ないほど長生きする」というデータが出ています。
確かに食欲という欲望は、飢餓の時代には制御が難しかったと思います。しかし現在では理性でコントロール出来るのではないでしょうか。しばらく「昼食抜き」を試してみて下さい。別項「メタボ退治(ダイエット)の第一歩は昼食抜き」参照。胃袋が小さくなることが実感できますよ。
もう一つ「車」についても考えてみましょう。公共の輸送手段が少なくなってきた地方はさておき、都市において本当に車は必要なものなのでしょうか。東京の都心部で言えば、2キロメーター以内に何らかの「駅」があります。歩いて数分のコンビニにさえも車で出かけるという生活が、運動不足をもたらし、肥満、不健康へと導いてしまうのです。車ほど過大な消費をもたらすモノはないのではないでしょうか。
「不況こそ、車社会からの離脱(=健康の回復)の絶好のチャンス」という発想も、ぜひ持って欲しいと思います。私自身、数年前に車を捨て、郊外の大型店舗への足を無くしましたが、まったく不自由は感じていません。なぜって、ほとんどのモノがネットで買えるようになったではないですか!
さらに「不況こそケイタイからの離脱(=ストレスからの回復)の絶好のチャンス」はどうでしょうか。全人口より多いと言うケイタイの蔓延!老いも若きも片時離さず持ち歩き、ケイタイに振り回されている姿は、滑稽でもあります。多分、全通信量の90%以上は、くだらないおしゃべりかメールかゲームなのではないでしょうか。これらを「やらなくてはいけないというストレス」にさらされて、1日を過ごしてはいませんか。ちなみに私のケイタイは、通信機能をはずした「家内との共用」で、通話さえもほとんどしない「緊急連絡用」ですから、1月の支払いは基本料金の1000円程度です。
不況、不況と悲観的に考えずに、不況こそ健康を取り戻す絶好のチャンスだと楽観的に考えるのも、一つの手ではないでしょうか。・・・・やせ我慢でしょうかねえ。
| パンデミック(感染爆発)は発生するのか? |
2009年1月中旬、町田市の病院で101人がインフルエンザに集団感染が発生し3人が亡くなりました。インフルエンザの集団感染は珍しいことではありませんが、今回はワクチンを接種した方も多数感染したことが問題となっています。ワクチンは、「その年に流行が予想されるウイルスのタイプ」に基ずき製造されるので、今年は「予想がはずれたか?」ということになります。
もう一つ懸念されるのが、「特効薬タミフル耐性ウイルス」が増えてきたということです。Aソ連型ウイルスの3割が耐性となり、11都道府県の計35人分中、34人分(97%)の検体から耐性が確認されたということです。
このようにウイルスは、毎年変異を繰り返し「生き残り」を図る性質を持っているので、ワクチンや治療薬とウイルスとの戦いは、「いたちごっこ」ということになります。
さてパンデミック(感染爆発)とは、「新型トリインフルエンザ」による「世界的流行の爆発」のことを言います。これは従来のインフルエンザとは全く異なる感染症で、「殺人インフルエンザ」とも呼ぶべきものだそうです。従来のインフルエンザが、呼吸器だけに感染するのに対して、新型トリインフルエンザは、全身の臓器に感染するために、死亡率が極めて高く(約60%と言われる)なり、しかも感染力も極めて高いために、世界的に大流行することが懸念されています。
最近は、宇宙服のような完全防御服を着て消毒する姿などが報道され、その恐ろしさが知られるようになってきました。そのため世界中の国々が感染拡大の予防に膨大な予算をつけているようです。
人類は過去に3回のパンデミックを体験しています。スペイン風邪(1918年)、アジア風邪(1957年 世界で200万人が死亡)、ホンコン風邪(1968年 世界で100万人が死亡)です。特にスペイン風邪では、感染者6億人(当時の世界人口の50%以上!)、死者4000万?1億人と推計されています。
では対策はどの程度されているのでしょうか。2008年3月現在、アメリカでは2,700万人分の「プレパンデミック・ワクチン」(今あるトリインフルエンザ・ウイルスを弱毒化するなどの手法で、あらかじめ作り置きしておくもの)、日本でも2000万人分が備蓄されています。しかし実際に効果があるのは、ヒトへの感染流行が始まった後、そのウイルスそのものから作る「パンデミックワクチン」なのですが、製造にはウイルスの出現から6-9ヶ月はかかると言われ、流行をとめられるかは疑問とも言われています。
悲観的情報ばかりの新型トリインフルエンザ対策ですが、少し安心できる情報もあります。それは北海道大学喜田宏 教授(鳥インフルエンザの起源と流行予防の国内第一人者)の見解です。以下はウィキペディアからの引用です。
「喜田宏教授もパンデミックの可能性には否定的である。過去の3回のパンデミックはすべてブタからヒトへ伝播しており鳥のウイルスがヒトに広がることは、ごく限られたケースでしか起こらないとしている。問題となっている鳥インフルエンザは判っているだけでも61ヶ国に広がっており、4年間に61ヶ国の内のわずか380人の感染者しか出ていないのは、ごく特殊な遺伝子を持ったヒトのみが感染しているとしか考えられないとする」。
「わずかなヒト-ヒト感染のケースでもすべて親子兄弟間だけであり、遺伝子が異なる夫婦間での感染伝播は起こっていないのがそれを裏づけているとしている。もし鳥インフルエンザがヒトに流行しても、致死率は0.5%を越えることはないとしていて、”全身でウイルス増殖が起こるとする”のは間違いで、死亡した感染患者の全身からウイルスが検出されるのは、呼吸器からあふれたウイルスの破片であるとしている」。(引用終わり)
これら悲観論、楽観論のいずれが本当かは、全くわからないのですが、厚生労働省による「予防策」は、ワクチン接種、手洗い、うがい、湿度確保、マスク、休養、栄養程度です。しかし町田の病院の例のような、予防のワクチンも、治療用のタミフルも効かない普通のインフルエンザも、今後現れるかもしれない新型トリインフルエンザにしても、感染直後の「水際作戦」を準備しておけば、ウイルスの「最初の増殖」を防ぐことは出来ると思います。すなわち厚生労働省推奨の予防法に加えて、免疫システム、特に粘膜免疫システムを高めておくことで予防は可能だと思うのです。
またウイルスが自己の生存をかけて遺伝子変異を繰り返していると同時に、人間の方も大昔からトリや家畜との共存生活の中で、世代を繰り返す間に、ウイルスに対する感受性が遺伝子レベルで変異しているはずです。例えばスペイン風邪の感染者が、「世界人口の50%以上だった」ということは、逆に言えば、「感染しなかった人間も半数近くいた」ことになりますし、エイズ患者と肉体的接触をした人の中でも、発病どころか感染さえしない人間が増えつつあるとも報道されています。
したがって「感染爆発」などという「人類滅亡」のような報道は、過剰反応だと思いますし、過去の3回のパンデミックの時代とは、医学レベルが格段に進歩していますので、「パンデミックの発生は杞憂では」と考えます。
| メタボには漢方薬が効く? |
漢方薬の効能効果に病名を記載することに問題があることは、「漢方薬の”適応症”の読み方の難しさ」に「ぜんそく」を例にして書きました。すなわち漢方薬の処方は、現代医学の病名により決めることが難しいのです。漢方薬の処方の決定は、あくまで「証」によらなければなりません。そして「証」を把握するためには、膨大な漢方知識と経験が必要なのです。
ところが、通販やドラッグ等で「相談なしで」漢方薬を求める方が増えるにしたがい、漢方メーカーは、「売りたい一心で」、外箱に大きな字で病名や症状を書くようになってきました。例えば、大きな字で「心身のストレスで不眠が続く方に」、「お腹の脂肪が多い方に」、「ちくのう症 慢性鼻炎に」と書いてあれば、これらの症状に当てはまる方は、相談もしないで購入してしまいます。その結果が漢方薬への「不信や衰退」につながることを大変心配しています。
某家庭薬メーカーが販売を始めた、ある漢方薬が大ヒットしたというニュースが、漢方業界を賑わしています。それが
外箱に大きな字で、「お腹の脂肪が多い方に」と書かれた漢方薬です。このヒット以来、これに続けとばかり、多くのメーカーが、同じ処方の漢方薬を売り出したのです。それが「防風通聖散」という処方です。
「防風通聖散」は、中国の金元の時代(1116〜1366年頃)に劉完素が著した「黄帝素門宣明論方」(1172年)という書物に記載されている処方です。日本では漢方処方を、作られた時代から、大きく分けて「古方」と「後世方」に区分していますが、この処方は「後世方」の処方に分類されています。すなわち紀元前2000年頃から始まる漢方薬の歴史から見ると、比較的新しい時代の処方と言えます。古方の処方は、比較的少ない種類の薬草(薬味という)から作られていますが、後世方の処方は、比較的多種類の薬味から作られています。特に防風通聖散は、18味という最大級の数の薬味から作られています。またその約半分が、「清熱(熱をさます)」作用の薬味なのです。
「黄帝素門宣明論方」からの引用は一般の方には難解ですので、「簡明中医辞典」(原文は中国簡体字)から一部引用します。
「功能:疏風解表、清熱瀉下。治:外感風邪、内有蘊熱、表裏皆実、悪寒発熱、頭痛眩暈、口苦口干、咽喉不利、大便秘結、小便短赤、及瘡瘍腫毒」。
すなわち体の内外に蓄積した熱毒を、汗や大便や尿として排泄する働きがあるので、病名としては、悪寒が少なく、急に発熱するインフルエンザ等の急性疾患、慢性疾患としては、皮膚病(できもの)、ちくのう等の膿を持った病気、熱毒による便秘などに使うのが、本来の使い方なのです。
この処方の最大の目標は、「熱」ですから、「暑がり」、「冷たい飲み物をがぶ飲みする」、「胃弱ではない」、「大便が硬く便秘する」、「冷え性ではない」等が、「服用する場合の絶対条件」です。しかし日本では、これを拡大解釈して「口渇のある糖尿病」に使ってきました。ところが飽食の時代になって肥満が増えてくると、さらに拡大解釈して、病気でもない「肥満」に使われるようになってきたのです。
このように考えると、防風通聖散の用途は限られ、「お腹の脂肪が多い方に」というだけで、多少太り気味の方(女性が多い)が、減量(極度の肥満”症”は別として)の目的で使うことには注意が必要になります。
上記の「服用する場合の絶対条件」の無い方が、長期に服用したら、体を冷やし、下痢により体力を消耗し、自然治癒力を弱めることは、十分に考えられます。ダイエットしたいと相談に見えた方の中で、防風通聖散が適応すると思われる方は、経験上ほとんどありませんでした。
参照:「スポーツでダイエットが出来るという誤解」
「メタボ退治(ダイエット)の第一歩は”昼食抜き”」