そうさなぁ。
あれはちょうど1年前の今日のことじゃった。
富士山のふもとの静岡のとある町で、これから生まれる
ケーナのために竹をきってもらったことがあった。
さあて。なんぼん切ってもろうたかのぅ。
たしかその時は、暑い暑いときで木こりどんもそれはたい
へんじゃったそうな。
切った竹は職人が大事に大事に、毎日お日さんをみあげ
ては乾していたそうじゃ。
それが、一年たってよくこんなに乾燥してくれたものじゃ。
そろそろケーナづくりに良い頃合のようじゃなぁ。どれ. . .。
あれ〜〜. . .。
な、なんと . . .た、た、竹が、竹が〜. . .。
おそるおそる切り口をのぞくと、何とあんなにきれで丸か
った、円形だった竹の切り口がしおれて、ちぢんで、こん
なにゆがんでしもぉたぞ〜。
ためしに、内側だけでもまるくケズって、磨いてみたがこ
れはもう使い物にはならないのかのう. . .。
職人はあきらめて、「もう捨てるしかないかの〜。あんな
に一生懸命に木こりどんが切ってくれたのにのう. . .。
ほんに残念じゃのう. . .。」
. . .というわけで職人はがっくり肩を落とし、何日も竹を
見るたびに悲しんでおったそうな。
そんなある日の事、「いつまで泣いていても仕方なかろ
うて、あんまり可哀そうじゃからこの竹たちは富士山の
ふもとへ埋めてやるべかなぁ。 . . .よおし。」
. . .と思い直して、北海道新千歳空港から静岡空港ま
で大鷲にのって富士山のふもとへ向かうことにしたのじ
ゃった。
大鷲どんもこの話しをきいて「かわいそうじゃのう。どれ
、わしがひとっ飛びでつれていってやろう」と言ってくれ
たとさ。
そして、いよいよ出立の前夜. . .。
なぜか寝付かれず、職人はふと目をさまして工房へ 向
かったそうな。
「. . .なぜか、なぜかわからんが、むしょうに竹が切り
たいのう〜。」
「しかたあんめい。一本切ってみるべか. . .。」とG管
に寸法をあわせ一本切ったとさ。
. . .と、そのとき、竹の切り口をそおっとのぞくと、何
と、何と、 まあるい、まんまるいケーナにぴったりのき
れいな十五夜お月さんのようにまんまるの形が. . .。
そうさなぁ、径は18みりはあったかのう。
なんと、富士山のふもとで木こりどんにきってもらった
た竹は、自分を乾燥させるために 切り口から一生懸
命水分を蒸発させて、そのせいで切り口の近くだけは
無残な仮の姿になっておったのさ。
じゃが、だいじなだいじな「材」となる部分はしっかり自
分の力で頑張って守っておったそうな。
そういえば木こりドンから職人のわしにこの竹の行く
末をまかされた時、よろしくねとわしも言うた(「富士竹
類植物園竹取物語」より)が、竹からも「よろしくたのみ
ますよ」と、それは可愛らしい声が聞こえたよ うな気が
したわい。
竹を切ってあらわれた、その十五夜お月さんのような
「まんまる」こそがこの工房の 「かぐや姫」であり、その
後も職人はこの竹たちをだいじにだいじにしたそうな。
物も、人も見かけだけではなく、その中身をよく見てあげる
ことが 大切とあらためて知った職人であった。
仕上がったかぐや姫のケーナは音色、姿ともに最高のでき
ばえとなったそうな。
めでたし、めでたし。
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