COWBOY BEBOP

 10      なりゆき(後編)
 
「そうか。まだ合意じゃねえか」
 
 言いながらスパイクの手がバスローブの紐をほどいて、ショーツの間から忍び込む。
 
「や…ちょっと…!」
 
 押しとどめようとするフェイに構わず侵入を果たした指が、押し広げるようにしてなお奥深く秘められた部分へと進んでいく。
 
「なんかすごいことになってっけど、ここ」
 
 指の腹でその部分をクニクニと刺激する。
 
「はあ…っ…な…何よ…」
 
 フェイは眉間にしわを寄せて、頬を紅潮させる。
 
「女だってその気かどうかわかるんだよな」
 
「……」
 
「もうこんなに濡れてるし?」
 
 からかうようなスパイクの口調に、フェイの頬がますます赤らむ。
 
「……」
 
「もしかして、俺をその気にしてるときに自分もその気になってたとか?」
 
「……」
 
「じゃああっという間に濡れちまったかのどっちかだな」
 
「…違うわよ…」
 
「じゃあ、早くからその気になってたって?」
 
「う…うるさいわねえ、そんなことないってば…!」
 
「ま、どっちにしても合意だな」
 
「違うって言ってるでしょ!?」
 
「…強情なヤツだな。まだ物足りねえってか?」
 
 するりとショーツを取り去って足元から抜きにかかる。
 
「や…やだ、何すんのよ!」
 
「何って…そりゃあ…」
 
 その言葉が終わるか終わらないうちに、スパイクの唇がフェイの足の付け根を塞いでいた。
 
「ひあっ!」
 
 フェイは思わず驚いたような声を上げてしまう。
 
 スパイクの舌が、敏感な真珠を捕らえたのだ。
 
「はあ…あん…やめ…て…」
 
 フェイの声に、敗北の色が混じる。
 
 その声が耳に入っていないはずのないスパイクの舌が、無遠慮ながらもやわらかく動き、ピンク色の真珠を捏ねるように押しつぶす。
 
「っ…くうっ…」
 
 フェイの腰が少し持ち上がる。
 
 顔を上げたスパイクは、あふれ出る蜜を指先で掬い取り、フェイに見せつける。
 
「ここまで来ても、まだ合意じゃねえんだろ?」
 
「……そうよっ…」
 
 目をあわさず、フェイがつぶやく。
 
「そうか。じゃあ仕方ねえな」
 
 あきらめたかのような言葉とは反対に、スパイクの指がフェイの中につぷりと入り込んできた。
 
「あっ…な…何…すんのよっ…!」
 
 フェイの言葉には答えず、スパイクは指を奥まで差し入れる。
 
「ああんっ…!」
 
 フェイの体がせり上がる。
 
 差し込んだ指がキュッと締め付けられたのを確認してから、スパイクはゆっくりとその指を引き抜きにかかる。
 
「はああっ…」
 
 指先が入り口まで出てきたところでまた奥まで。
 
 そしてまた引き抜く。
 
 スパイクの指が、そんな往復をはじめた。
 
「くっ…あっ…はああっ…んんっ…」
 
 いくらフェイが押し殺そうとしても、指の動きに合わせて声が漏れてしまう。
 
 折り曲げた右足が、スパイクの背中に沿うようにせり上がり、その足の指先は何かを掴むようにキュッと握られる。
 
 そんな時、スパイクの指が、あっさりと引き抜かれた。
 
「…?」
 
 ほっとしたような、物足りないような、フェイの表情。
 
「仕方ねえな、合意じゃなくても」
 
 またスパイクはつぶやき、手早く自分の下半身の衣服を取り去ると、覆い被さって今度は自らのモノをフェイの秘所にあてがってきた。
 
「ちょ、ちょっと!」
 
「お前がその気にしたんだろうが」
 
 あせるフェイをよそに、スパイクは難なく進入を果たす。
 
「ああっ…ん…!」
 
 フェイがのけぞる。
 
 体の中心で感じる、圧倒的な存在感。
 
「…入っちまった」
 
「や…やだ…」
 
 その言葉に反して、フェイの身体が自分のモノをキュンと締め付けるのを、スパイクは感じていた。
 
 そのままじっと、フェイの中の感触を楽しむ。
 
 フェイが何かを促すように、少しだけ腰を動かす。
 
 それを感じてからスパイクはにやりと笑い、
 
「…やっぱ、合意じゃなきゃ、ダメだよな」
 
いきなりフェイの中のモノを引き抜いた。
 
「…ああっ…?」
 
 信じられないといったようなフェイの瞳。
 
 その目を見て、スパイクはフェイに口付ける。
 
 何かを訴えかけるようなフェイの舌がスパイクの舌に絡む。
 
 それに答えるように、スパイクもフェイの口腔内に進入する。
 
 二人の舌が、熱っぽく絡み合って音を立てた。
 
「…まだ、合意じゃねえ?」
 
 唇を離し、フェイの横に両手をついて見つめる。
 
「…合意、かも」
 
 ホッと息を吐いてから、見つめ返したフェイが目を閉じ、小さく言った。
 
 
 
 
「んん…っ…」
 
 フェイが再びスパイクを受け入れる。
 
 スパイクはフェイのバスローブを腕から抜いた。すでにそれは、スパイクからもう何一つ隠してはいなかったが。
 
「…すげ…気持ち…いい…」
 
「…あ…あたしも…」
 
 素直に快感を口にするスパイクに、フェイもつい正直に口に出してしまう。
 
「やっと正直になったじゃねえか」
 
「…あんたこそ…」
 
 スパイクの動きに呼吸を乱されながらも、なんとかフェイは言葉を紡ぎ出す。
 
「俺は…さっきから正直だぜ?」
 
 スパイクも少し息を乱しながら言い返す。
 
「だったら…なんでさっき…抜いちゃったのよ」
 
「お前にいつまでもレイプだとか言われちゃたまんねえからな」
 
 動きを止めて言うスパイク。
 
「ふうん、案外度胸ないんだ」
 
 まだ余裕があるのか、にやりと笑うフェイに、
 
「そういう問題じゃねえだろ!」
 
 思わずスパイクの声が高くなる。が、すぐに何か思いついたらしく、今度はスパイクがにやりとする番だった。
 
「もしかしてお前、レイプのほうが良かったりして?」
 
 いきなりフェイの頭上にその両腕を重ね、片手で押さえつける。
 
「やっ…ちょっと!」
 
 フェイが腕を引き抜こうともがいても、スパイクの片手にはその体重がかかっていてびくともしない。
 
 そのままスパイクはフェイの中で動き始めた。
 
「ああんっ…あっ…あっ!」
 
 フェイがのけぞる。
 
「やっぱり、さっきと様子が全然違うけど?」
 
「…そんなはず…ない…」
 
 少し顔をそむけて、流し目でスパイクを見る。
 
「へえ、そうかな…。…試してみるか?」
 
 言うとスパイクは押さえつけていたフェイの腕を離したのもつかの間、今度はバスローブの紐でフェイの両手首を縛ってしまった。
 
「あっ…」
 
「でも、この体勢じゃあ、何されるかわかんねえし」
 
 スパイクは再びフェイの中から引き抜き、フェイを四つん這いにさせる。
 
「やだっ…!」
 
 縛られた両手は前に投げ出され、肘で体を支える。
 
「なかなかいい格好だぜ」
 
「変なこと言わ…!…あっ…」
 
 ――艶やかなヒップのライン、誘うようにうごめくその部分。
 
 そんなフェイの姿を目で楽しんでから、スパイクはいきなり進入していった。
 
「やっ…急に…奥まで…」
「簡単に入っちまった」
 フェイの腰を両手で掴み、スパイクが動き出す。
 
「くふう…ん…!あっ…はああん…」
 
「すげえ…お前の…中…」
 
 自分のモノを食い締める襞の感触にスパイクの声が掠れ、思わず動きが激しくなる。
 
「あっ…あんっ…ああっ…」
 
 びくん、とフェイの体が仰け反る。
 
 そうして、縛られた手が前に伸び、ソファのシートがフェイの頬に張り付く。
 
「こんな風にされて…結構感じてねえか?」
 
「ばか…っ…」
 
「そういいながら、締め付けるのよせよ」
 
「やあ…手…ほどいて…」
 
 何とか両手首をついて、スパイクを振り返るフェイ。
 
 潤んだ瞳で見つめている。
 
 その顔は、ついさっき想像したフェイの表情よりも数倍スパイクを熱くさせた。
 
 誘い込まれるように奥へ奥へと突き入れる。
 
「何で…?お前、こんなに感じてるのに」
 
「やぁ…んっ…」
 
 そう言いながらフェイも、スパイクの言葉に反応してキュッと締め付けてしまっていた。
 
 
 
 
「ああんっ…ああっ…いいっ…すごい…」
 
 後ろから貫かれたまま、縛られた手が二つの握りこぶしを作っている。
 
 スパイクの額にも汗がにじむ。
 
「そんな声…出すなよ。…俺も、我慢できなくなりそう…」
 
「ああんっ…だって…気持ち…いい…!」
 
 手が自由にならないことが、そのもどかしさ以上に、与えられる快感に神経を集中させる結果になっていた。
 
「ああんっ…あたし…もう…ダメ…」
 
 そう言葉に出したことがまた、駆け上がる速度を速める。
 
 フェイの意識の及ばないところで、スパイクを少しでも奥へと引き込もうとする動きが生まれていた。
 
「くっ…」
 
 快感がスパイクの背筋を通り、脳天を突き抜ける。
 
 早くその快感を開放したくて、フェイの腰をひきつけ、何度も奥まで強く打ち込む。
 
「ひああっ…ああんっ…!ダメっ…もう…いっちゃう…!」
 
「俺も…!」
 
 激しく突き入れられたものが、何度もフェイに突き当たる。
 
「ああっ…すご…いいっ…いくっ…ああんっ…!あああっ…!!」
 
「俺も…出るっ…」
 
 フェイの中がひときわスパイクを強く締め付けたとき、熱い奔流がその場所を満たし、あふれ出ていた。
 
 
 
 
 密着している以外の場所の汗が、少し引いたころ。
 
 フェイに覆い被さるようにしていた身体を少し起こして、フェイの手首の戒めを解きながらボソリとスパイクが言った。
 
「…これから先、お前を雑誌の代わりにしたりなんかしたら、お前…怒るよな」
 
「当たり前じゃない!」
 
 うつ伏せたまま、ピッと身体を強張らせる。
 
「…だよな…」
 
 頭を掻くスパイク。
 
「でも…」
 
 その姿勢のまま、フェイが小さく言った。
 
「でも?」
 
「あたしのことが欲しくて仕方なくなったら、そのときは考えてあげてもいいわ」
 
「…?」
 
「でも、欲しいのが身体だけなんてのはゴメンだけど?」
 
 スパイクを押しのけるようにその身体の下からすり抜け、身体を反転させて、向かい合ったスパイクに軽く口付けた。
 
「……」
 
 スパイクはじっとフェイを見つめる。
 数秒の間があき。
 
「意味がわかんないんだったら、いい」
 
 ちょっとふてくされたように、フェイは無言のままのスパイクに言う。
 
「俺でも…いいのか?」
 
 しばらく考えて、スパイクはその一言を、ゆっくり絞りだすように問い掛ける。
 
「…あんたこそ」
 
 フェイも、見つめ返した瞳の奥に意思を秘めて微笑んだ。
 
 
 
 
 が。
 
「…まあ、女運のない男と、男運のない女で、これ以上落ちようもないか」
 
 スパイクが何気なく言った言葉に、フェイがいきなり噛み付いた。
 
「ちょっと、その言い方はないんじゃない?」
 
 スパイクもつい言葉が強くなる。
 
「事実だろうが。男にだまされて借金まみれになったくせに」
 
「あたしの借金はそれ以前からしこたまあったわよ」
 
「自慢できることか、それが!?」
 
「ほっといてよ!あんたに何も迷惑かけてないでしょ?」
 
「気になるだろうが!こうしょっちゅう借金の取り立てばっかり来られちゃなあ」
 
 うんざりしたフェイが、バスローブを羽織ってリビングを出て行こうとする。
 
「待てよ!」
 
 スパイクも急いでトランクスをはき、フェイを追う。
 
 肩にかけたその手をフェイが振り払った。
 
「やめてよ!このレイプ魔!」
 
「…な、何だとー!!」
 
 部屋への廊下を早足で歩きながら、スパイクを振り返って言う。
 
「人のこと手篭めにするなんて、人としてサイテーよね!」
 
「…お前なあ…!あれは合意の上だろうが!」
 
「あら、合意なんてした憶えありませんけど?」
 
 もう振り返りもせずにすたすたと歩いていくフェイを見て、スパイクが肩をすくめる。
 
「仕方ねえ…。もう一度合意してもらうしかないようだな」
 
「するわけないでしょ!?そんなもん…!」
 
 言いながら二人の姿がフェイの部屋へと消えた。
 
 
 
 
 …その後、もう一度フェイが合意したのかどうかは、二人以外は誰も知らない…。
 
 
 
 
 
−おわり−
 
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