COWBOY BEBOP

 14      DAMAGE(後編)
 
「ああっ、はああん、いいっ、あっ、あっ…」
 ビシャスに屈服してしまったその時から、私の人格も、自制心も、何一つ残ってはいない。
 ビシャスが部屋を後にしてからも、何人もの男たちに入れ代わり立ち代り犯され、精液まみれになりながらも私はあさましく腰を振って感じまくっている。
 思い思いのところに突き入れられて、もう何回絶頂を極めたのか、わからなくなっていた。
 
 
 
「もっと…あは…奥まで…ちょうだい…ああっ!…また…イく…!」
 二人の男に前と後ろの穴を塞がれて好き放題に扱われ、口にもまたねじこまれて、それでもまだいきそうになっている自分の身体が、他人事のようにも思える。
「ほんとに好きものなんだな、この女。犯られながらこんなにイきまくってるぜ」
 聞こえる男たちの声も、遠いところの出来事のようにしか感じられなかった…。
 
 
 
 数時間後、ようやく“こちらの世界”へ戻ってきた私は、もう一度シャワーを浴びて、衣服を身に着け、再びビシャスの前に連れ出された。
 
 
 
「…女とは恐ろしいものだ。少し洗い流しただけで、さっきまであれだけ男たちに犯され、俺に貫かれながらよがり狂っていたのが信じられんくらいだからな。…くっくっ…スパイクも、まさか送信した映像が本当のことだとは信じられまい」
「まさか…送ったの…?あたしの…あの…」
「かなりのダメージを与えられたと思うがね」
「…それは…どうかしら…」
「後で直接聞いてみればいい。あの世でになるだろうがな」
 
 
 
 そして、ビシャスは私と部下たちを連れ、スパイクに連絡した場所へと向かった…。
 
 
 
 ……その後。
 スパイクとビシャスは死闘を繰り広げた。
 ビシャスの生死はわからない。少なくとも瀕死の重傷は負っているはずだ。
 スパイクも全身ミイラ男になった。
 3日間目が覚めず、生きていたのが不思議なくらいの重傷だった。
 
 
 
 スパイクはあの時のことを何も聞かない。聞かれないことが余計に辛いし、それ以上に…ビシャスの言ったとおり、身体があの時のことを忘れられなくなっていた。
 夜になると思い出してしまう…。
 
 
 
 ベッドに入って、指を使って自分を慰める。
 あらわにした胸を片手で揉む。親指と人差し指とで乳首をつまんでみる。
「あ…はあ…」
 そのままもう一方の手を下に伸ばす。ショーツの上の部分から手を入れ、割れ目を探ってみる。少し、濡れてしまっている…。
 人差し指をその蜜で濡らし、しこったクリ○リスを円を描くように刺激する。
「ふううん…あっ…」
 ぴくんっと身体が反応する。だんだん指の動きを早くする。甘い感覚が子宮の奥から沸き起こる。
 でも、その快感はある一点からそれ以上上昇しない。
 もどかしくなって指をもう少し下に伸ばし、割れ目の部分から少し中にしのばせてみる。
「くっ…ふううん…」
 奥まで入れて動かす。気持ちよさに目を閉じる。何とか意識をこの快感だけに集中しようとする。
 でも、やっぱり思い出してしまう。
 あの時の目もくらむような絶頂感。それは、監禁され、クスリを使われ、犯されることによって得た非日常のもの。普通の生活では味わえるはずもない。
 そしてその快感に服従してしまった自分。
 …それを考えると、快感のゲージはそこでピタリと止まってしまうのだった。
 あの精神的なダメージを思えば、もう一度やられたいとは思わないけど、身体は今もあの快感を忘れられない。
 そして…もう一つ。あの姿をスパイクに見られただろうことがまた、エクスタシーに達することを阻んでいるのだ…。
 
 
 
 その日もまた、寝付けなかった。眠ろうとして何度寝返りをうっても、思い出すのはあの日受けた屈辱、そして身体中で受け止めた快感…。
 …ノックの音がした。
 
 
 
「入ってもいいか?」
「…スパイク?……レディの部屋を訪問するには時間が遅すぎだけど?」
「レディならな。入るぜ」
「…相変わらず失礼なヤツね。…どうぞ」
 入ってはきたものの、スパイクは言葉を探しているようだった。閉めたドアに背中を預け、ベッドに腰掛けた私の足下を見ている。
「何の用?もう寝るところなんだから、邪魔しないでよ」
「俺にまで嘘つかなくていいぜ。眠れないんだろ?…近頃のお前見てりゃわかるさ。それに…組織のことには俺が一番詳しい」
 思わず、目をそらしてしまった。
「そ…組織のことって、何よ」
 私の隣に腰掛けて、スパイクは少し声を落とした。
「クスリ…使われたんだろ?安心しろ、アレは俺しか見てない」
 指先が冷たくなっていく。
「やっぱり…見たんだ…。まあね、今まで生きてくために大概のことはやってきたから、あれくらい何でもないけど?」
「強がるなよ。あんなことされて平気な女なんているわけないだろ」
 その言葉に、床に落とした視線をもう一度スパイクに向けた。
「…それで、かわいそうなあたしを憐れんで、慰めにきてくれたってわけ?あたしはね…あんたには…あんたにだけは…」
 不覚にも涙があふれてくる。
「憐れんで欲しくなんかなかったわよ…」
「すまない…俺のせいで…」
「憐れむのは止めてって言ってる…!」
 不意に手首を引き寄せられ、気が付くとスパイクの腕の中にいた。
「…憐れんでるわけじゃねえよ」
「スパイク…?」
「…抱いても、いいか?」
 顔を上げてスパイクを見つめる。また、涙がこぼれ落ちた。
 
 
 
 …唇が重なる。だんだん深く、激しくなる。
「あっ……はあっ……」
 体の奥が、熱くなってくる。
 …私は…この男を…愛してる?
 上から3つ、ボタンをはずされたシルクのナイティが、肩から少し落ちて、乳房があらわにされる。
「あっ…」
 思わず声を上げる私の耳元でスパイクがささやく。
「乳首、硬くなってるぜ」
「ばか…」
 『相手があんただから』なんて言えるわけないじゃない。
 この男にだけは、絶対言えない。
 そんなことを考えてる間に、2本の指で乳首を少し強くつままれる。
「ひあん…!」
 私の反応に気を良くしたのか、つまんだ乳首をこりこりともてあそぶ。
 ぴくんっ…!思わず身体が反応してしまう。
「はあっ…やだ…」
『これくらいでこんなに反応しちゃうあたしを…スパイクはどう思ってるだろ…』
 そんなことを考えて彼の肩に顔を伏せた私の上半身を、スパイクはゆっくりとベッドに倒していく。床の上に、私のつま先だけが残る。そしてキス…。舌を受け入れ、絡み付ける。それだけでもう、私の意識にぼんやりと霞がかかってくる。
 まだ、キスだけなのに。
 スパイクの唇が、首筋から胸へと移動する。
 既に愛撫されることを期待して硬くなっている乳首を、舌先が触れるか触れないかのところで刺激する。微妙なそのタッチに、思わず吐息とともに声が漏れてしまう。
「はああん…あっ…ああ…」
「もう、かなりキテるだろ」
 顔を上げて、スパイクが言う。
「何バカなこと…言ってんのよ…」
「素直になれよ。…俺だってもう…こんなになってんだぜ?」
「?」
 さっきの舌の動きとは打って変わって、ぶっきらぼうに私の手を硬くなった自分のモノに導く。その表情は、目をそらし気味で少しくやしそうにも見える。
 その硬さや熱さを、そして『私のこと、ほんとに抱きたいと思ってるんだ…』ってことを感じたとき、胸が締め付けられるような思いで、自然とこんな言葉が口をついていた。
「あなたのを…舐めてもいい…?」
 
 
 
「あむっ…んはっ…んむっ…」
 ベッドに腰掛けたスパイクのモノを、床に跪いて、根元まで含む勢いで唇をスライドさせる。
 ちゅぽん…。
 一度唇を離し、左手を添えて、竿とカリの部分の境目を舌先でなぞる。竿を下から舐めあげて、一番先っぽの部分を唇でついばみ、舌でつついてみる。…少し、苦い味がする。
 空いた右手で袋の部分をまさぐる。…口の中のモノが、トクン、とまた少し大きくなった。
『…スパイクも、感じてる…?』
 キュン…。そう思った瞬間、私もまた蜜が溢れ出すのを感じていた。
「んぐっ…んぐっ…んぐっ」
 うれしいような、切ないような、何だかたまらない気持ちになって、もう一度口に含み、今まで以上に激しく口の中を出し入れする。
「俺…もう…限界…来そう」
 それには答えず、もっと大きくスライドさせながら唇で締め付け、左手も同じリズムでしごきたてる。右手でまた袋をやわやわと揉む。
「…!」
 スパイクの両手が私の頭を押さえつけた。
「うっ…」
 ドクッ…ドクッ…。熱い液体が、喉の奥に当たる。口の端から少しこぼれそうになったものをペロッと舌で舐めとった後、無意識のうちに唇と左手を使って、苦い液体の最後の最後までも絞るようにしていた。
 
 
 
こくん。
 最後の一滴まで飲みくだしたとき、上目遣いにスパイクと目が合った。
「あ…!?」
 いきなり、ベッドに仰向けに押し倒される。
 右手で私の胸を少し乱暴に下から持ち上げるようにして揉み、もう片方の乳首を唇で強く吸い、先端をチロチロと舐める。
「はあっ…ああん…」
 沸き起こる快感に、思わずスパイクの頭を胸に押し付ける。
 それでも行き場のないせつない感覚は、両手でスパイクの背中をまさぐることくらいでしか表せない。
「あ…」
 …まだ生々しく残るスパイクの背中の傷跡が、指に触れる。
 あの時の…。私の心にも残る傷。
「あはあっ…ああっ…あっ…」
 とがった乳首を軽くかまれ、また新たな蜜が湧き出てくる。
 舌はわき腹をすべり、足の付け根の部分に近づいてくる。自然と片膝を立ててしまっている私の、もう片方の膝も立てさせ、その部分に顔を近づける。
「すごい、濡れ方だな」
 スパイクが、あふれる蜜を指ですくい上げながら言う。
「いやあ…見ないで…」
「これでも感じてないって言えんのかよ?」
 割れ目の中に、するりと入っていく指。
「ああん…あっ…はあっ…」
 ゆっくりと奥まで進み、少し引く。そんな動作を2,3回繰り返した後、
「2本目も、簡単に入っちまうぜ?」
 もう1本、指が入ってくる。奥まで進んできたところで、指先を少し折り曲げた。
「あふうん…あはっ…いやあっ…」
 子宮より少し手前、ざらついた部分を指の腹でこすられて、思わず腰を浮かせてしまう。
「一番感じるんだろ?ここが…」
「あっ…はああっ…やめ…あああんっ…あはあっ…くううんっ…」
 指の腹でそこをこすりながら、動かしてくる。
『さっきのお返しをしてるつもり…?』
 そんな思いが一瞬頭の中をよぎったけど、すぐにまたスパイクの指の動きに負けてしまう。
「結構強情なんだな…お前…。気持ちいいって言ってみろよ」
「あひいっ…やあん…やだ…あっ…いやあん…」
 腰はいやらしくくねって、既に指から受ける快感に降伏してしまっている。
「気持ちいいんだろ?」
 そのまま、指を少し振動させる。私の羞恥心を蹴散らすには十分だった。
「あっ…あはあっ………いい…いいの…そこ…もっとぉ…」
 その一点から次々もたらされる甘く、せつなく、そして鋭い快感に、意識すらも飛んでしまいそうになっている。
「そんなに締め付けるなよ。いやらしいなあ、お前」
「ひいんっ…ああっ…いいっ…ああん…」
 スパイクの声も、もう耳に入っていない。それとも、その言葉で余計に感じているのかもしれない。
 スパイクが、中をひっかく力を強くする。思わず両手でシーツを握りしめてしまう。
「くふううん…あ…あたし…もう…」
「いっちまえよ、我慢すんな」
「あひいっ…いいっ…ああっ…いく…いく…い…く…ぅぅん……!」
 背中までビクンっと浮き上がらせて、達していた。
 キュンッ、キュンッと収縮する私の中から指をゆっくりと抜いて、くすっと笑う。
「白いの、出てきてるぜ」
「あ…はああん…いやあん…」
 そう言いながら、指が抜かれてしまった部分に、私は少なからず喪失感を覚えていた。
…スパイクのが…欲しい。
「もう、欲しいんだろ」
 心の中を見抜いたように、スパイクが言う。
「………」
 それでも素直に、『欲しい』って言えない私。
 …目と目が合って、ゆっくり身体が重なる。
 でも、肝心のモノは、待ちかねてヒクヒクとうごめくその周りを焦らすようにゆっくりと刺激してくるだけで、なかなか入ってこようとしない。
「ああん…いじわるう…」
 私らしくない、甘ったれた言い方。でも、もう、我慢できない。
「欲しいって言ったら、入れてやるよ」
「え…やだ…」
 ヌルッ…と硬くなったモノが滑って、クリ○リスを刺激する。
「…!!…ひいああんっ…」
「欲しいんだろ?」
「うん…欲しい…欲しいの…」
「何が?」
 …スパイクの意地悪…!でも…欲しい…!
「スパイクの…大きいの…奥まで…ちょうだい…」
「上出来」
 ズプ…。
 ゆっくりと、私の中に、入ってくる。
 身体の奥から、暖かいものが湧き上がってくる。
「あ…すごい…いい…」
 『足りない部分を補われてる』…そんな感覚。肉体的に、そして、精神的にも満たされてゆく。
 キュン…。思わず中が収縮してしまった。そのためにスパイクのモノの、形までもがはっきり感じられる気がする。
「あっ…!!あああん…!!」
 奥まで届いたのを感じたとき、一瞬目の前が真っ白にスパークした。それだけでイってしまったのだ…。
「早えーな、フェイ。もうイっちまったのか?」
 からかうような、スパイクの口調。
「あ…はあ…だって…」
「イったんなら、これで終わりにするか?」
「…!?…いや…やめないで…もっと…して欲しい…」
 それを聞いて、してやったり、みたいな顔をしてから、
「冗談だって。…俺だって、もう…止まんねえよ」
…スパイクは真顔に戻ってそう言うと、本格的に腰を動かし始めた。
 
 
 
「あっ…あっ…あっ…あっ…」
 スパイクの動きに合わせて、自然と声が出てしまう。ギッ、ギッ…。ベッ
ドも同じリズムで軋んでいる。
 ぴったりと身体を重ねているスパイクの背中と髪に腕を回して、少し腰を浮かせる。
「ああん…すごい…気持ちいい…」
 普通のセックスって…こんなに気持ちよかったっけ…?
「お前も、すごいぜ。腰…引くとき、中ですごい抵抗、感じる」
「そんなこと…言わないでよ…あはっ…いいっ…」
 一つ一つの快感が蓄積されて、だんだん大きな快感になっていく。
 まぶたの裏に、白い霞がかかってきた。
「あっ…もう…ダメ…また…来る…」
 背中をのけぞらせて、私はまたイってしまっていた。
 
 
 
「あ…はあ…ああっ…!…」
 腰を前後に動かすと、私の中に入っているモノから受ける快感と、クリ○リスがこすれる電流のような感覚とが身体中を貫く。私はたまらなくなって、思わず下になっているスパイクの肩を掴んでしまう。首筋を汗が流れて、彼の胸に落ちる。
「いいっ…いいっ…ああ…これ…気持ち…いい…」
 …あれからもう一度イかされて、次は自ら進んでスパイクの上になり、淫らに腰を動かしている私。
 その反応を見たからなのか、スパイクが下から突き上げてくる。
「いや…そんなことしたら…また…」
「いけよ。見ててやるから」
「ばか…あ…!?いや…!」
「…って、腰、ずっと動いてるぜ」
 言われるまでもなく、本能のままに腰を動かして、私の身体はまた昇りつめようとしていた。
「はあんっ…だって…ああっ…いいっ」
 下から突き上げられて思わずのけぞってしまった後、少しでも深く快感を得ようとする身体は、無意識に、微妙に位置を一番感じるところへ修正している。
「…いいっ…イくっ…!ああっ…イくううっ…!!」
 
 
 
 …私がぐったりとした後、上半身を起こしたスパイクは、つながったまま身体を反転させて私の上になった。
「ああん…」
 中で微妙な動きが起こって、私はまた声を上げてしまう。
「お前のイった顔見てたら…たまんなくなってきた」
 スパイクはそう言うと、ベッドに両腕をついて体を支えると、穿つように突き入れてきた。
「ひっ…あああん…あはあっ…すごい…」
 ズチュッ、ズチュッ…。
 ドロドロに溶け出した私のアソコが…スパイクのモノで…あんなにいやらしい音を立ててる…。
 一番奥まで力強く打ち込まれて、その度ごとに苦痛にも近い快感が私を襲う。
「くふううん…!ああ…いいっ…!」
 また思わず、スパイクの背中にしがみついてしまった。
 …もう自分で自分の体の動きをコントロールできない…。
「あっ…あっ…いいっ…」
 頭をのけぞらせて、折り曲げた人差し指をかむ。
「ああっ…ああっ…奥に…当たる…あっ…いい…」
 伸ばした爪が折れそうなほどの力で、シーツを掴む。
「すごい…!あそこが…とけちゃいそう…!…いいっ…あはああっ…!」
 スパイクの息も、荒くなってきた。
「俺も、もう…いきそう…」
 それを感じて、…今日何度目なんだろうか?…私はまた達しようとしていた。
「あっ…もう……もうダメ…また…イく……!すご…いい…あはああっ…!」
 …それは、今までと比べ物にならないくらいの大きな波だった。
「いくっ…!…もう…いっちゃう!…んはああっ!…ああっ!…イっ…くうう…ん!」
 強く、奥深いところまで打ち込まれ
ながら、スパイクの背中に爪を立て、背中をのけぞらせて、びくん、びくん…と全身を何度も痙攣させる。
 同時に、私の奥にも熱い液体が吐き出されるのを感じていた。
「あっ…はああん…すご…い…すごいの……!」
 …そのまま、私は意識を失っていた…。
 
 
 
「……?…」
 気がついたときには、もう朝だった。
 あまりの眠りの深さに、一瞬自分がどこにいるのか、ゆうべ何があったのかも思い出せずにいた。
「あ…そうか…」
 記憶が戻るまでに、しばらくかかってしまう。
「こんなに深く眠れたの、久しぶり…」
 体の奥には、ゆうべの名残の甘い感覚。
 心の中の澱も、軽くなっている。
「スパイクは…もういないわよね、やっぱり」
 あの後すぐ、出て行ってしまったのか。
「…?…」
 ベッドサイドに、一枚の紙がある。
 
 
 
『ゆうべは、お前の傷につけこむような真似をして悪いと思ってる。
お前が俺を受け入れたのは、クスリの後遺症のせいだし
これからも、俺たちの関係は今までと何も変わらないから、
ゆうべのことは気にするな。
今は良く眠れてるようだし、今夜からもきっと、ゆっくり眠れるだろ。
もう、心配すんな。』
 
 
 
 あいつらしい走り書きのメモを見て、ぼんやりと考える。
 …後遺症、か。
 ビシャスは、あのクスリに習慣性はないって言ってた。嘘つく必要もないことだし、きっとそれは本当のことなんだろう。
 ってことは、あのクスリは最近できたもので、スパイクが知らないやつだった…とかいうオチ…?
 
 
 
 はあ…。
 それにしても…。
 あいつには、私の反応がクスリの後遺症なのか、気持ちのせいなのかの区別もつかなかったわけね。
 あの時受けた心の傷の方は、おかげ様でふさがりそうだけど。この気持ちの方は、どうしてくれるのよ…!
 
 
 
「あーあ…。『男と女の間には、深くて暗い溝がある』…とかなんとか…。あれ…?『溝』じゃなくて『川』だっけ…?まあいいや、どっちでも。とにかく…人生、そんなもんよ」
 
 
 
 …ちょっと胸が痛いけど、ま、許してあげる。
 だって、スパイクは手紙に「ゆうべ」って書いた。
「あいつ…少なくとも朝になるまでは、そばにいてくれたわけよね」
 それだけでも、いいか。
 あのモサモサにしては、上出来。
 あいつなりの思いやりが、心に染みた。
 
 
 
「さ〜てと、今日は競馬にしよっかなー?それとも犬がいっかなー?」
 鼻歌を歌いながら、レッドテイルに乗り込むと、後ろからジェットの声が追いかけてくる。
 …今までどおり。それでいいじゃない。
 これからも、こんな生活が続くんだから…。そう、ずっと…。
 
 
 
−おわり−
 
 
 
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