目が覚めたら、目の前にフェイがいた。
どこかぼんやりとした意識を、努めてたぐり寄せてみるのだが、どういうわけか頭がはっきりしない。
それでも、今置かれている状況をスパイクはようやく把握しはじめていた。
リビングだ。
ソファーに寝かされて、その横にはフェイが立っている。
何でこの女、こんなに小馬鹿にしたような目で俺を見る…?
そして、身体が動かないのは何故だ?
身体を起こそうとしているらしいスパイクを、フェイは見下ろして言う。
「あんた、さっき何食べた?」
いきなり聞かれ、一瞬答えに悩む。
「何って…キッチンにきのこスープがあったからそれを…」
「はあ…」
フェイは大仰にため息をついた。
「あれ、スープじゃないわよ」
「え?」
「ジェットが今追ってる賞金首の証拠品。『普通のキノコ』か『ヤバキノコ』かどうか煎じてたの」
スパイクが空にした小鍋をスパイクの顔の上に振りかざしながら、フェイが続けた。
「エドが分析するはずだったんだけどね。誰かさんのせいでそれもできなくなっちゃった」
「今日日、煎じて作るヤバキノコなんてあるのかよ」
「あるのよ、現にここに」
小鍋をスパイクの鼻先に突きつけ、小馬鹿にしたようなフェイの表情に耐えかね、スパイクは話題を変える。
「で、そのジェットは?」
「その間に…って、『首』が出入りしている店に張り込みに行ったわよ。捕まえる気満々で。どうすんのよ、それ飲んじゃって」
「どうもこうも、あんなうまそうな匂いするもんをそのまま置いとく方が悪い」
そう言ってスパイクは身体を起こそうとしたが、何故か体は動かない。
スパイクの視線を受けて、フェイが淡々とした口調で言った。
「自業自得よ。あれ飲んじゃったんだから。今動かないってことは…もうしばらくは動かないわよ、身体」
「ってことは…」
「そう。正真正銘の『ヤバキノコ』。…あんたってホントに学習能力ないわよねえ。いつだって意地汚いって言うか」
フェイの視線はますます蔑むようなものになっていく。
「お前が言うなよ」
「だってそうでしょ?前にも一回痛い目に遭っといて、また繰り返すなんて」
どこか面白そうに自分を見るフェイに、スパイクの苛立ちは否応なしに増していく。
「うるせえよ」
この女のこういうところがいつも癇に障る。
「感謝しなさいよね。床で伸びてるあんたをわざわざソファーに寝かしたげたんだから」
実際は通るのに邪魔だったために仕方なく引っ張り上げただけだが、当然フェイの口からそんな事実が語られることはない。
「そんなこと頼んでねえだろうがよ。ああ、だから今あちこち痛むんだな。頭とか、肘とか」
「あ、そう。身体動かなくても、そういう感覚の方は大丈夫なんだ。まあ、口もきけてるわけだしね」
「全く、余計な事しやがって」
うるさそうにフェイを見上げるスパイクのその態度に、フェイの胸に軽いいらだちが募る。
「…あんた、身体動かないくせに口だけは達者ね」
「うるせえって言ってんだろ。さっさとどっかいけ」
こんな時でもフェイを簡単にあしらえると思っているらしいこの男に、思い知らせてやりたくもなってくる。
「あら、ご挨拶ね。あんた、今の自分の状況わかってんの?」
「わかってるも何も、身体が動くようになるまでここにいるだけだ」
「『動くようになるまで』ね。でも、今もしあたしが」
にやりと笑いながら、スパイクの喉元に指先を突きつけて続ける。
「あんたを殺そうと思えば出来んのよ?」
バカらしくて、スパイクは鼻で笑った。
「そんな何の得にもならねえこと、お前がするかよ」
見透かしたように余裕であしらうスパイクに、フェイが応じた。
「確かにね。あんた殺したって誰も一文も払ってやくれないもの」
「当たり前だ」
「お金にならないとしても…せめて楽しませてもらうくらいはできるでしょ?」
フェイは冷たい微笑みを浮かべたまま、指を喉元から滑らせて、スパイクのシャツのボタンを一つはずす。
嫌な予感に、スパイクの背中を冷や汗が流れた。そんな感覚だけはいつも以上に敏感なことに気づき、スパイクは顔をしかめた。
フェイはスパイクのシャツのボタンをすべてはずしてしまい、アンダーシャツの下から手を入れる。
抵抗しようとスパイクは意識を運動神経に向けるものの、それは全くもって効を奏さず、望みに反して指一本さえ動かすことができない。
「止めろって…!」
フェイの指先が自分の首筋から胸へ滑ろうとするのを見て、思わず声を荒げた。
まずいことに、触れられる感覚が、普段よりも鋭敏に伝わってくる。
「そんな大声出さなくても…」
フェイはわざとらしく邪気のなさそうな表情で小首を傾げ、躊躇なくスパイクの胸の、そこだけ色の違う部分を指先で触れてくる。
「…っ!」
予測はしていたものの、それ以上に身体を走る衝撃が強くて、スパイクは思わず息をのんだ。
「やっぱり感じるんだ」
ニヤニヤと自分を見下ろすフェイを、スパイクはただにらみつけることしかできない。
「ある意味、殺されるよりキツいかもね、この状況」
フェイが心底楽しそうにころころと笑う。
「うるせえ。つまらねえことやってないで早くどっか行けよ」
「そう言われて、はいそうですかって言うとでも?」
わかっていても、スパイクには他に抗う方法がない。なおも言い募った。
「お前、そんなにヒマなのか?もっと建設的なことに大切な時間を使ってみようって気はないのか?」
フェイは悪魔の笑みを浮かべながら答えた。
「そうねえ。確かにご説ごもっともなんだけど…こんな機会だって二度とないじゃない?あんたが、そんなに焦った表情することも」
そう言うと、スパイクの胸を唇でついばんだ。
明らかに快いその刺激に、スパイクは慌てる。
「おいっ、止めろっ」
震えを押さえつけているのがありありと感じられるその声に、フェイはますます勢いづく。
「遠慮しないでいいのよ。気持ちいいならそう言ってくれれば」
褐色の突起を唇で吸ったり舌先でつついたりしながら、フェイはその指先をスパイクの身体に這わせはじめる。
固く引き締まった筋肉をなぞるように胸から腹、脇腹へ滑らせ、腰骨のラインをなぞる。
「っ…はぁっ……」
普段より感覚がとぎすまされている身体は、穏やかながらも確実に快感を感じて、スパイクの息も少しずつ上がりはじめる。
不意にフェイの手が、ズボンの上からスパイクの下腹部を探った。既に存在を主張し始めているその部分に触れると、フェイの瞳がきらりと光る。
「身体は動かなくても、ここはそうでもないみたいね」
「これだけやれば気が済んだだろ?冗談ももうそろそろ…」
「何言ってんのよ。これからじゃない」
ズボンの中に潜り込むその手を押しとどめようとしても、変わらずスパイクの身体は動かない。いとも簡単に下着越しの掌に包み込まれてしまったその部分は、ますますその密度を増した。
「気持ちいい?」
「…んなわけねえだろ…!」
「ほんと、素直じゃないわねえ。ここはこんなにわかりやすいってのに」
フェイの手は遠慮なくスパイク自身を握り、撫でさする。布地越しとはいえ、次々送られてくる刺激に、スパイクは耐えられず小さく呻いた。
「っ…お前、大概にしとけよ…」
「『感じてない』んだから、そんなに慌てなくてもいいでしょう?」
くすくす笑いながら、フェイはスパイク自身への刺激を止めようとはしない。
「こんなになって、つらそうね」
とうとう下着の中にまでその手は滑り込んできた。
「余計なお世話だ。あっ、バカ!触るな!」
直接触れる指の感覚から気を逸らそうと、スパイクは声を荒げる。
「やだ。こんなに…?」
予想以上に熱く固く昂ぶっているその部分に、フェイはごくりとつばを飲む。
「うるせえ!生理現象なんだよ!」
その言葉を自分への揶揄と受け取ったスパイクは、いらだたしげにフェイをにらみつける。
「おおこわ。何もそんな意地張らなくても。気持ちよくしてあげるって言ってるんだから、素直に身を任せればいいじゃない」
当然そんな申し出を受け入れられるスパイクではない。
「そんなことができると…」
「んっとに、手間がかかる男ねえ」
スパイクの言葉を最後まで聞かず、フェイはその唇でスパイクの昂ぶりを包み込んだ。
「おいっ…!何を…やめろっ!」
驚く間もなく、先端部分をねっとりと舌先で愛撫され、快感がぞわぞわと背筋を這い上る。
「くっ…うっ…」
奥歯をかみしめて吐息をこらえても、隙間から漏れ出る声はフェイにも届く。
自然とフェイの動きにも力が入る。
「んんっ…あむっ…」
ますます固さを増すスパイクの怒張に舌を絡め、唇をすぼめて出し入れしながら、フェイは快感に顔をゆがめるスパイクを見る。
こらえきれないのか、何度も大きく息を吐き、そのたびにフェイの口の中のスパイク自身がびくん、びくんと脈打つ。
その反応はフェイにとってもたまらなく刺激的で、スパイクを責め立てる動きはますます激しさを増す。
手も添えてしごき立て、強弱を付けて握り、奥まで口に含むには少し持て余す大きさになってきた怒張の先端に、くびれをなぞるように舌先を這わせる。
正直フェイがここまでやると思っていなかったスパイクはまず驚いたが、この女が普段からは想像もつかない行為に及んでいることを刺激的に感じていることもまた事実で、そのことがますますスパイクを熱くさせた。
スパイクの下腹部に生まれた熱い痺れはどんどん大きく膨れ上がり、怒張に与えられる快感は脳に次々と送り込まれて、身体中がそれに浸食されていくのをスパイクは感じる。
「もう…やめろっ…て…」
喉に絡みつくように掠れた声でフェイを押しとどめようとするその様子に、スパイクの余裕のなさを感じ取り、フェイは一度唇を離して問いかけた。
「もうそろそろ…イかせてほしいんでしょ?」
フェイの唾液と、スパイク自身からにじみ出た先走りの液とでぬめる先端部をフェイが指先で弄ると、その感覚にスパイクの快感中枢は直に刺激され、脈動とともに怒張はもう一回りその固さと熱さを増した。
「うる…せえっ…」
「『イかせてください』って言えばすぐそうしてあげるのに」
普段より敏感になっている上に、意識はそこに集中している。スパイクがいくら耐えようとしても、そんな努力は徒労でしかなかった。
指に変わって、舌先が先端のくぼみをつつく。
身体中の血液が、下腹部に集中していくような気がしていた。痛いほど張りつめている。
「…うっ…くうっ…」
「すご…い…こんなに固く…」
フェイが心なしか潤んだ瞳でスパイクの逸物を見つめる。そのまま引き込まれるようにもう一度唇に含んだ。
「やめ…もう、ダメだ、って…!」
悲鳴にも近いその声は、フェイを思いとどまらせるどころか、ますますスパイクを追いつめる動きに繋がっていく。
フェイの唇に奥まで含まれ、また引き出されながら扱かれ、もうギリギリのところまで来ている爆発をこらえようとスパイクは奥歯をかみしめる。
そんなスパイクの我慢を吹き飛ばすように、フェイは口腔内奥深くまでスパイクをくわえ込んだ。
「んんっ…!」
勢い余って喉までに含み、少しむせながら表情をゆがめたフェイに、スパイクはあっけなく最後の堰が切れるのを感じた。
「くっ…ああっ…!」
どくどくと吐き出されるスパイクの欲望をためらい無く嚥下するフェイを見ながら、スパイクはもがこうと張りつめていた運動神経への意識を手放し、沈み込むような脱力感に襲われていた。
しばらくして気がついたときにはフェイの姿は既になく、一瞬夢だったのかと思ったスパイクだったが、放出の余韻は確かに残っていたし、ようやく動くようになった身体を起こして見てみれば、微妙に衣服が乱れている。
フェイの暴挙を思い出すだにはらわたが煮えくり返る思いだが、あっけなくその攻撃で堕ちてしまった自分を省みる余裕も今はあって、スパイクはこの後どうしようかとしばらく思案した後ゆっくりと立ち上がった…。
いいように弄ばれたスパイクがこの後どう出るのか、フェイへの意趣返しはあるのかないのか。
それはまた、別の話。
あとがき。
スパイクをこんなことにしてしまいましたが、大丈夫でしょうか!?(汗)かなり楽しく書いたのは書いたんですが、正直ちょっと心配…。
そして、『身体が動かないのに感覚は生きてるものなのか?』という疑問をお持ちの方がいるかもしれませんが、全身麻酔後の自分の実体験から推測して、そういうこともあるかなーと思ったので、この設定で押し通しました。
最後に、この話の続きはあるようなないような…そんな感じです(笑)。
…っていうか、こんなヤバキノコ、一体何のために使うのか…。
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