■2005年4月15日(金) フェスティバルホール
第47回 大阪国際フェスティバル2005 牧阿佐美バレヱ団『ノートルダム・ド・パリ』
[振付・台本]ローラン・プティ [原作]ヴィクトル・ユゴー [音楽]モーリス・ジャール
[衣裳]イヴ・サン=ローラン [舞台美術]ルネ・アリオ [照明]ジャン=ミシェル・デジレ
[指揮]若杉弘 [管弦楽]京都市交響楽団 [合唱]京都市民合唱団 
連日の激務&徹夜のチャンピオンズリーグ観戦。そりゃ眠いのも当然だわ。羽田空港へ向かう電車で爆睡、乗り換え駅を大幅に通り過ぎ、飛行機に乗り遅れるというアクシデント発生。ま、開演に間に合ったからいいけど、何か幸先悪い始まりだわ〜。
【ノートルダム・ド・パリ】

会場に着いて、まずキャスト表を確認。

エスメラルダ アンナ・アントニーチェワ
カジモド   ドミトリー・ベロゴロフツェフ
フロロ    菊地研
フェビュス  逸見智彦               他

うん、当初の予定で変更なし。とりあえず、ホッ。まだ2003年のキャスト変更(牧阿佐美バレヱ団『ローラン・プティの世界 −ノートルダム・ド・パリ−』)が尾を引いている?>ぢぶん

ゴシック建築のシンボル、ノートルダム大聖堂を舞台に、美しいジプシー娘エスメラルダと醜い鐘撞き男カジモドの悲恋を描いた物語。原作はフランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの同名小説。これまで何度も映画化されている。一番新しいのは、ディズニーがアニメーション化した『ノートルダムの鐘』(1996年)かな。

ノートルダムの司教代理フロロに拾われ、聖堂の鐘撞きとして暮らすカジモド。彼はその醜い容貌ゆえ、世間から疎まれ、孤立していた。そこへ現れたのが、美しいジプシー娘エスメラルダ。彼女に心を奪われたフロロは、カジモドを利用してエスメラルダを自分のものにしようとする。しかし、偶然通り掛かった美男の青年将校フェビュスが彼女を助け、ふたりは恋に落ちる。嫉妬に狂ったフロロは、フェビュスを刺して逃走。その場に残されたエスメラルダは殺人の罪に問われ、絞首刑を言い渡される……。

重厚な舞台美術、色鮮やかな衣装、緊迫感溢れる音楽(でも、変拍子は難しかったような)。迫力あるコール・ドも加わった壮大なスペクタクル作品……になる筈なんだろうね、ホントは。う〜む、今回は主要4人のバランスが悪かったかも。

エスメラルダのアンナ・アントニーチェワ、可憐な容姿と太すぎず細すぎず何とも健康的な脚が印象に残るも、ジプシーらしさは微塵もない。それに、振付家の意図とダンサーの意図がずれているというか、お互いの視点に違いがあるというか。結果として、ローラン・プティの振付を観たという印象が薄い。
カジモドのドミトリー・ベロゴロフツェフ、少しサル入ってる顔立ち(失礼!)が醜さゆえに虐げられてきたカジモドにぴったり。でも、首から下が裏切るのよ。あんなに威厳があってはダメでしょう。エスメラルダの亡骸を抱えて歩み去るラストにしても、振り回し方が美し過ぎる。あれはカジモドが不具だから巧く運べないンであって、あんなに華麗に振り回しては、哀れさも何もあったものではない。

フロロの菊地研、踊りはダイナミックで、全幕通しての安定感もグッと増してきた。初役だし、20歳という年齢を思えば、かなり健闘していたと言える。ンが、本音を言えば、この役はまだ早い。登場シーンの立ち姿など、その後を予感させるような不吉さが全然足りないし(ただ、動き出すと禍々しさが漂うような……これはたぶん、本人の演技力というより、プティの振付によるものだと思うが……)、エスメラルダを象徴する細かい手の動き(タンバリンを鳴らすみたいな)にも、もっともっと優美さが欲しい。この役は、肘から先と膝から下の表現力が特に大事だからね。
フェビュスの逸見智彦、脚も綺麗だし、あの妙な衣裳も意味不明な金髪も似合っていたが、ポーズのひとつひとつがノーブルで、青年将校のキャラじゃない。ま、それがこの人の持ち味なわけで(笑)。

コール・ドは前回の公演より格段に迫力が出た。2幕、大聖堂襲撃シーンの空気がねじれるようなうねり。圧巻。

■2005年4月16日(土) フェスティバルホール
第47回 大阪国際フェスティバル2005 牧阿佐美バレヱ団『ローラン・プティ・ガラ』
[演出・振付]ローラン・プティ ※【スパルタクス】を除く
翌日はガラ公演。会場に着くと、アントニーチェワ&ベロゴロフツェフによる『スパルタクス』の追加が発表されていた。「ユーリ・グリゴローヴィチ氏の作品ですが、関係者のご好意により、本プログラムに加えることが出来ました」だそうな。
【アルルの女】

[音楽]ジョルジュ・ビゼー [装置]ルネ・アリオ [衣裳]クリスティーヌ・ローラン

バンジャマン・ペッシュ、田中祐子
佐藤朱実、金澤千稲、橋本尚美、吉岡まな美、小橋美矢子、笠井裕子
青山季可、伊藤友季子
逸見智彦、塚田渉、保坂アントン慶、徳永太一、今勇也、菊地研
中島哲也、高橋章

これだけのために、パリ・オペラ座バレエ団からバンジャマン・ペッシュ(当初の予定では、ジェレミー・ベランガール)を呼びますか。気合入っているな。

でも、フレデリのペッシュはなかなかよかったわ。ここにはいない女を必死に追い求めるも、伸ばした右手は空を掴むのみ。なんつーか、虚ろな眼差しの向こうに、幻の女が見えた気がする。ファランドールの切迫感〜ダイブ〜静寂という流れにも気持ちよく酔えた。
ヴィヴェットの田中祐子はとにかく踊りが明晰。理路整然と男を追い詰めている感じ。そのせいか、“一途でひたむきな若い娘”の哀れさは出なかった。

牧バレヱのソリストたちによるコール・ドも、適度な陰影を醸し出す。

【ノートルダム・ド・パリ】

[音楽]モーリス・ジャール [衣裳]イヴ・サンローラン

アンナ・アントニーチェワ、ドミトリー・ベロゴロフツェフ

えらくあっさりと終わる。やはり全幕で観てこそのパ・ド・ドゥなのか?

【若者と死】

[音楽]ヨハン・シュトラウス・バッハ [台本]ジャン・コクトー
[装置]ジョルジュ・ワケヴィッチ [衣裳]カリンスカ

草刈民代、アルタンフヤグ・ドゥガラー

今、これほどまでに黄色いドレスが似合う女は他にいないだろう……ってぐらい、草刈民代にハマっている。観る度に踊りの精度は落ちているが、相変わらず妖艶。役柄選べば、まだまだイケる?
アルタンフヤグ・ドゥガラーはテクニック的には申し分ないが、若者の焦燥感、孤独、愛と死の葛藤といった、本来そこにあるべき感情の発露があまりにも乏しい。
簡略版の装置も興醒め。

【スパルタクス】

[振付]ユーリ・グリゴローヴィチ [音楽]アラム・ハチャトゥリアン

アンナ・アントニーチェワ、ドミトリー・ベロゴロフツェフ

をを! やはりボリショイ組はプティよりグリゴローヴィチの方が合うわ。リフトが高くてダイナミック〜。
ドミトリー・ベロゴロフツェフには、スパルタクスのようなカリスマ性ある役の方が向いている。長い手脚と厚みのある身体はまるで重戦車。彼に頼り切っているフリーギアのアンナ・アントニーチェワがひたすら可愛い。

【ピンク・フロイド・バレエ・ハイライト】

[音楽]ピンク・フロイド

Run Like Hell
菊地研
Nobody Home
アルタンフヤグ・ドゥガラー
One of These Days
金澤千稲、橋本尚美、館野若葉、吉岡まな美、奥田さやか、小橋美矢子
笠井裕子、柄本奈美、竹下陽子、坂梨仁美、山中真紀子、青山季可
金森由里子、海寶暁子、伊藤友季子、鈴木理奈
逸見智彦、塚田渉、保坂アントン慶、伊藤隆仁、武藤顕三、徳永太一
今勇也、三國典央、笠原崇広、中島哲也、高橋章、依田俊之、坂爪智来

菊地研は、途中でちょっとヨロけたり、最後のピルエットから片手逆立ちの流れがイマイチだったりと(勢いが削がれた感じ?)、微妙なところもあったが、さすがにフランスで踊り込んできただけあって、自分のものになっていた。ドゥガラーもまずまず。

非常に残念ではあるが、帰りの飛行機に間に合わないと困るので、One of These Daysの冒頭で流れる風の音を合図に席を立つ。しっかし、『ピンク・フロイド・バレエ』開始時点で25分押しですか。キャスト表にあったタイムテーブルは、全然、当てになりません。『スパルタクス』が追加になったから? でも、それだけで25分も押すと思えないし、そもそもテープ演奏だし。謎。
出演者全員の名前を書いて、途中退席のお詫びとさせていただきます。