マノン タマラ・ロホ
デ・グリュー ロバート・テューズリー
レスコー ホセ・マルティン
ムッシューG.M. ウィリアム・タケット
レスコーの愛人 マーラ・ガレアッツィ
乞食のかしら ジャコモ・チリアーチ 他
舞台中央に座る全身黒ずくめの男。マノンの兄、レスコー。じっと客席を睥睨している。悲劇を予感させる不吉な幕開け。巧い。
そこは宿屋の中庭。女優や紳士、パリの商売女たちが入り乱れ、喧噪に満ちている。愛人と熱い抱擁を交わすレスコー。神学生のデ・グリューや富豪のムッシューG.M.の姿も見える。やがて、馬車が着き、マノンと老紳士が中庭に降り立つ。
マノンのタマラ・ロホ、小柄でややぽっちゃりした可憐な容姿とは裏腹に、ファム・ファタルのしたたかさが明らかに内在している。両親の命令で修道院に入らなければならない不幸を甘受している風を装いながら、巧みにデ・グリューを誘う。妖艶な手の動きと視線の使い方が秀逸。
デ・グリューのロバート・テューズリーは名家の出に相応しい品格や将来性を感じさせ、ファム・ファタルの毒牙にかかる男の資格は充分。女にまったく縁がなかった臆病で内気な性格が出ると、もっといいかも。この役は、ガラで踊られる《寝室のパ・ド・ドゥ》や《沼地のパ・ド・ドゥ》の印象が強く、とにかくサポートが難しいと思っていたが、どうしてなかなかソロも難しそう。ま、テューズリーは軽くクリアしておりましたが。
レスコーのホセ・マルティンは、乱暴なごろつきというよりも、女好きの陽気な兄ちゃんって感じ。原作におけるレスコーは本当に兄かどうかは怪しかったりするわけだし、そういう微妙な陰影があってもよかったような。踊りは、ダイナミックでキレがあってなかなかの迫力。
乞食のかしらのジャコモ・チリアーチ、弾けっぷりがメチャメチャ可愛い。
デ・グリューの下宿。マノンとの愛の巣。おままごとのような暮らし。愛の歓喜を《寝室のパ・ド・ドゥ》で描き、デ・グリューが出掛けた後のレスコーとG.M.の登場&プレゼント攻勢、続くマノンを交えた3人の踊りで、豊かさや快楽を愛するマノンの性質を描く。
お金さえあれば、その出所は気にしない女。それがマノン。自分の欲望に対してあまりにも素直。その瞬間その瞬間で自分にとって必要な男を選び取り、寝ることさえ躊躇わない。もちろん、他の男と寝たからと言って、デ・グリューへの愛が薄れたわけではなく、そうした行為とはまったく関係ないところで彼への愛は成立している。
いやいやいやいや、ロホのマノンは非常にマノンらしいマノンだわ〜。