意見陳述
平成16年6月4日
原告本人
藤 本 修 子
記
私は北九州市在住の藤本修子です。ローカル紙・小倉タイムスの記者です。
11桁の住基コードが国民一人ひとりに附番され、私の手元にも02年8月中旬、
普通郵便で送られて来ました。同年9月、福岡市内で開催された「住基ネット」を考える集会で、「天皇に住基コードはない」という話を知った事が「住基ネット差し止め裁判」の原告になった理由です。
それまで私は、住基コードは「天皇が1番」と思っていましたので「天王には住民票がないので住基コードはないのです」と言う集会主催者の説明に「何故、主権者に番号を付けるのか」と疑問をもったのです。
03年8月、住基ネットは第二稼動し全国の各自治体で、希望する市民に5百円で「ICチップ付き住基カード」の発売が開始されました。小型コンピュータと同じ機能を持つICチップに約3万文字書き込みが可能といわれています。
住基ネットや住基カードを扱う北九州市総務市民局区政課はICチップには「住所、氏名、生年月日、性別、住基コード、暗証番号の六情報しか入れない」と言っていました。 それらの情報だけなら約3万文字もの情報が入るICチップは必要ないことになります。
さらに同課は「六つの情報以外の情報を入れる場合は市議会にかける。希望者は写真がカード印刷され運転免許証のように写真付きの証明書を持たない(ゼロカード)の市民には公的身分証になる」と私の取材に答えています。
住基カードは身分証明証、交通機関定期券、病院の診察券、図書の貸し出しカード、銀行カードと一元化し一枚でなんでも使える「オールマイティカード」になっていく方向を総務省は打ち出しています。税金の申告番号や年金番号を住基カードに入れる話も各省庁で進んでいることをマスコミも報道しています。
住基カードの用途を広げるに伴って、集められる情報はますます増えていきます。
ところが当の主権者である国民には自分自身のカードに何の情報が入力されているのか、どんな情報が入っているのか、知らされていません。情報時代に自分自身の情報が分からないとは、どういうことでしょう。
そして住基ネットと増えている監視カメラとがリンクされたら、もっともっと恐ろしいことになります。
昨年7月1日に起きた長崎市内での男子中学生による駐車場から幼児を投げ落とした事件では商店街が設置した防犯カメラが犯行の前後に商店街を歩いていた少年の映像を記録していました。この記録が少年の犯行を突き止める有力な材料になりました。同事件をきっかけに全国の繁華街、商店街、住宅街に監視カメラ=防犯カメラが庁内の街灯のように増えていきました。また町中に新しいビルが建設されると最早、監視カメラ設置は当たり前になりました。
行政改革の名前で交番が統廃合されたことと相まってコンビニが交番化しました。
私は町内のコンビニに週に3、4回は買い物や文書のコピーに行きます。先日気付いたのですがコピー機の横に銀行の現金引き下ろし機械ATMが設置され、この機械類の真上には360度稼動可能なズーム型カメラが設置されていたのです。このカメラは専門家によると5m離れた位置から1cm四方の文書読取りが可能というのです。ということは人の顔だけではなく暗証番号やいくらお金を下ろしたか、コピー原稿の内容も読取り可能なのです。
さらに、コンビニの外に向かってもカメラは設置してあります。コンビニの客だけでなく外を歩いている市民の姿もカメラで追跡されて撮られているのです。店内のあらゆる角度からです。カメラは客が何時何分にどんな格好できてどんな振る舞いをし、どんな物を買ったかの内容まで記録していきます。
1昨年前のサッカーのワールドカップでフーリガン対策のために成田と関西空港に入国者への「顔貌認識システム」が導入されました。アメリカは9・11以降テロ対策として今年初めから入国時の顔貌システムを外国人にも義務付けました。国内でもパスポート申請は以前の住民票と戸籍謄本提出から住基コードと本人確認できるものでOKとなりました。つまり住基カード1枚あればパスポートの申請はできる、というのです。便利ですがそうでしょうか。
そのパスポートに申請者の顔の識別情報を来年度から組み込むことが決められています。住基コードと顔の識別情報がリンクされるのです。
カメラ映像から顔の識別情報を取り出せばその映像本人の住基番号が特定でき、さらにさまざまな情報が手に入るのです。顔貌認識システムを連動させ「住基カード」と結びつけば私たちの生活は国家の名前でストーカーされているのと同じです。「誰がいつ、どこで何をしていたか」が、常に「見張る側」と「見張られる側」に二極化して今、世の中は進んでいこうとしています。見張る側はどこまでもどんな情報も知り得る。ところが見張られる側は一切知らされないまま気づかないで過ごしています。
人の集まるところは市民運動の街頭宣伝の場所でもあります。JR小倉駅前に駅ビルよりも高い監視カメラが駅の南口、北口に設置されています。駅周辺はバスやモノレール、タクシー、自家用車など交通機関の集合する場所でもあり防犯カメラは市民の安全のためが主な設置理由でしょう。
一方で立地条件から駅周辺で展開される市民運動の活動を見張る「監視カメラ」でもありえます。駅周辺のカメラは何か犯罪があれば活躍するのでしょうが、その実態は撮られている市民には分かりません。
撮影された映像はどうしているのか、利用の責任はどこなのか。実際に駅前のカメラに気づいている市民はどれくらいいるのか、それもはっきりしません。全ては権力をもった側が決定権があるのでしょうか。
住基カードにあらゆる情報が蓄積されるがその内容は本人がみることはできません。となると監視カメラの情報と住基コードを一体化させた時は、住基コードで集められる情報を管理する者が、私たちの行動記録を自由に書き換えることが可能ということにもなります。してもいないことが時間と情報を書き込まれ、映像処理されたなら、いやそれが決して不可能ではないなら情報の一元化の権力を持った人間は好き勝手に特定の人物のアリバイを操作することができる、ということになります。冤罪の多発化にもつながります。コンピュータの技術で可能大です。
行政や権力を批判する人、団体、政党、結社、及び集会や行動は排除の対象になるでしょう。それが住基ネットシステムと町中の監視カメラと連動して情報さえ書き換える可能性もあるといっても過言ではないのです。それが主権者にすることでしょうか。
住基ネットは今すぐストップすべきです。
今この法廷にいる裁判官も弁護士も傍聴者の皆さんも国によるだけでなくありとあらゆるストーカー行為にさらされている、といっても過言ではないのです。