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大工の宮下さんの下に、「詫び状」と書かれた封筒、それも投函でなく、郵便局を通さない投げ込みにより宮下さんのポストに入れられたのは春の彼岸のある日だった。
差出人は匿名だった。
宮下さんが開封してみると、便箋にはさまれて一万円札が一枚、ポロリと落ちた。
そして、そこにはこんな文面があった。
「24年前、建築現場でたびたび、ボヤがあったでしょう。
何回かあって、そこでの建築は結局取りやめになった、と後で聞きました。
その時の大工さんがお宅だったことも後で知りました。
建築主さんが大工さんを代えて建てた、という事も後で知りました。
あの24年前の放火は私がやったものです。
当時、10代だった私は親と上手くいかず、ぐれたような状態でした。
そのため、絶えず気持がむしゃくしゃしていました。
それで…まったく関係のない場所に放火してしまったのです。
まだ、工事は始められたばかりのように見えたし、人も住んでいないから良いだろう、と勝手に判断しました。
だけど、自分も40才に近いサラリーマンになり、家庭を持ってみると、自分の罪のおそろしさを感じないではいられません。
この頃は毎晩うなされるらしく、妻はテレビで見た女性の祈祷師まで頼んだりしています。
周囲の人間に過去の自分の罪は告白出来ません。
最近、近所に来て見て、あの放火現場はビルになり、大工さんは今も仕事をしている様子を知りました。
あの時、仕事がなくなった宮下さんはどんなに困ったことか…今になるとわかります。
申し訳ない気持でいっぱいです」
24年前の放火の告白だった!!人間には良心があるから、彼はずっと安眠出来なかったのかも知れない。
宮下さんがポツリと言った。
「あの頃、僕の方こそ、誰かに怨まれているんじゃないか、とずいぶん悩んで、夜、眠れなかったよ」
犯人の罪深いことは、善良な人間を苦しめた点にもあるなあ。
なお、宮下さんは、その一万円は神社のお賽銭箱に投げ入れた。
僕は封筒のみ浄霊のお焚き上げした。
※ほんとにあった話ですが状況設定は変えてあります。
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