最新情報ヘッドライン Vol. 24

「公証人制度」に隠された利権構造
(財界展望 5月号)




資格試験が実施されず、司法関係者が全て独占

 法務省は、遺言状などの公正証書を作る公証人の資格試験を来年

度から実施することを決めた。

この公証人になるには、公証人法で「一定の試験に合格後、修習を

終えた者、または裁判官、検察官、弁護士など」と、その条件と資

格が定められている。しかし、その実態は、公証人の総数約540

人のうち、判事OBが160人、検事OBが220人を占めている

ほか、残りも裁判所の書記官や法務・検察事務官OBなどの「特任

組」で独占されてきた。

その理由は、現行の公証人法が施行された1909年以降、資格試

験が一度も実施されていないからである。これでは民間人が公証人

になりたくてもなれるわけがない。なぜ、こんな状態が続いてきた

のか。

「法務省は、これまで司法試験が毎年行われていて、これと同じよ

うな試験を実施するとなると、かなりのコストがかかること、また

判事検事OBなどの法曹資格者で十分対応できることなどを主張し

てきた」



平均年収3000万円のオイシイ商売

 しかし、本当の理由は別のところにある。

「それは、判事・検事OBたちだけで独占するためです。公証人の

平均年収は約3000万円。 判事や検事を辞めた後、弁護士になる

より仕事も楽だし、はるかにいい収入が得られる。だから、法務省

は、この公証人のポストをOBの天下りの受け皿としてがっちり握

り続けてきたわけです」

「公証人の定年は決まっていませんが、大体70歳になった公証人

が出ると法務省から最高裁判所と最高検察庁に対して、後任を推薦

するよう求める文書が回ってきます。」

 つまり、後任人事を仕切っているのも法務省なのである。一見、

法務省は天下りとは無縁の役所のようにみえても、実態はこんなも

のだったのだ。

「このため、ここ数年、法曹資格者以外の民間人からも登用すべき

だという声が強まり、政府の規制改革委員会からも見直しを求めら

れ、法務省としても資格試験を実施せざるを得なくなったのです」

(法務省幹部)

試験が実施されるのは、実に90年ぶりのことである。しかし、こ

れで民間人にも全面的に門戸が開かれるかというと、そうではない

という。

「公証人の70%が判事と検事OB、残りの30%が特任組で占め

られているのですが、来年度からの試験の実施で開放されるのは特

任組の枠の部分開放でしかない」


 問題はまだある。

「それは、経済合同というシステムにみられます。これは、公証役

場のある場所によって、公証人に収入の差が出てくるので、均衡を

図るために行われているものですが、このため、東京ならば東京公

証人合同役場という上部団体が作られているわけです」(法務省関

係者)

これは、いわば公証人の所得の再配分のための組織である。

「例えば、東京地区ではいったん、収入の半分をここに入れること

になっています。これを5割合同といい、大阪では収入の全部を入

れる10割合同になっています。この上部団体にいくら入れるかは

都道府県単位で独自に決められていますが、こうしてプールした収

入を後で加入している公証人たちで均衡に分けるシステムになって

いるわけです」

しかし、ここに入れるのは判事・検事OBだけで、書記官や事務官

OBの特任組は除外されている。つまり、公証人の世界にもキャリ

アとノンキャリアの明確な階級差があるわけだ。

「そのうえ、ノンキャリア組は仕事の少ない役場にしか配属しても

らえず、食うのがやっとというのが実状です」(ある公証人)

「キャリア組は仕事の多い都市部や都心部などの役場、つまり、収

入の多いところに配属されます。そして、こういう役場には大体、

複数の公証人が配置されていますから、彼が出勤してくるのは週の

うち3日です。あとは宅調日と称して休んでいます。つまり、週休

4日です」

このため、法務省キャリアOBが占める70%のポストは既得権と

して来年度以降も手放さなかった。

これじゃ、何のための規制改革なのかといいたくなる。