阪神 星野監督「退任」の真相
(徳島新聞夕刊 2003.10.29)
健康不安が理由だが、補強に多額の資金 電鉄から愚痴も
阪神の星野仙一監督が28日、正式に退任した。日本一は逃がし
たものの、低迷していた阪神を18年ぶりのセ・リ−グ優勝に導い
た「時の人」が惜しまれながらユニホ−ムを脱ぐ。健康面の不安が
辞任の理由だが、内実はきれいごとばかりでもなかったようだ。本
社首脳と星野監督の間の距離感は最後まで縮まらなかった。
夏、阪神は首位を独走し、優勝へのマジックナンバ−を驚異的な
スピ−ドで減らしていた。快進撃は社会的現象になっていた。その
中心に星野監督はいた。
激しい気性でチ−ムを引っ張ってきた。どん欲なまでに勝利にこ
だわる性格がストレスを生み、高血圧などの持病を抱えた体を追い
込んだ。胃から出血し、試合中に何度もベンチ裏に下がり、嘔吐し
た。
8月に旧知の主治医と話し合った。いつになく医者は真剣で「友
人としては監督を続けてほしい。ただ、医学的には限界。医者の立
場として監督は勘弁してほしい」と勧告した。
強気の星野監督も身震いしたという。まな娘たちからも監督辞任
を涙交じりで訴えられた。
9月15日にリ−グ優勝を果たした後の10月初旬、星野監督は
大阪市内のホテルで久万俊二郎オ−ナ−と面談し、今期限りの辞任
を申し出た。
10月16日。日本シリ−ズに備えて星野監督は福岡入りした。
激震が起きた。翌日発売の写真週刊誌の刷り上がりに、辞意を申し
出た久万オ−ナ−との会談写真が掲載され、内容もこと細かく書か
れていた。数人しか知り得ない極秘情報が漏れていた。
星野監督には「自分で辞める」という哲学がある。フロントとの
確執が伝えられた巨人の原前監督の退任劇に「おれたちは命を削っ
て戦っている。現場を甘く見るな」と、怒ったこともあった。
極秘会談の情報漏れは、日本シリ−ズの戦いぶりにも影響した。
情報をリ−クした人物はすぐに特定できた。久万オ−ナ−と親しい
人間だった。
久万オ−ナ−と星野監督との間には、確執とまではいかないまで
も感覚のずれがあった。星野監督は親会社の阪神電鉄に多額の資金
援助を求めて大量補強し、優勝につなげた。大盤振る舞いに、親会
社幹部からは「何億円プレ−ヤ−を何人も誕生させられてはかなわ
ない」との愚痴もこぼれた。
グル−プ全体を視野に入れる久万オ−ナ−も、球団経営だけに肩
入れすることはできない。今年球団史上最多の330万人の観客を
動員しても、経営者としてはコスト削減に目が向く。オ−ナ−に近
い本社筋には、久々の優勝にも「星野監督は就任2年でこれだけ大
金を使った。これからなんぼ使うんや?」の懸念があった。
健康上の不安が退任の一番の理由であることは間違いない。ただ
し、情報漏れから報道が先行し、あっという間に「勇退」が既成事
実化してしまった。「オフにゆっくりと静養を取ったらどうなるの
かな?」と、星野監督は健康回復を期待し、心変わりもにおわせて
いたという。だが、もう後戻りできなくなっていた。
優勝監督の「慰留」を早々と断念した親会社の思惑通りに退任劇は
進んだ。
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