「最低資本金規制」来年撤廃へ
(日本経済新聞 2005.2.9)
起業促す仕組み強固に
今の通常国会で会社法が抜本的に改正される見通しとなり、来年
には最低資本金制度の撤廃などで起業に向けた垣根が低くなりそう
だ。若い企業の数を増やして経済全体を活性化するのが狙いだが、
起業支援などの現場からは「ベンチャ−育成の魔法の杖ではない」
といった冷静な声も漏れてくる。
現行では株式会社1000万円、有限会社300万円が資本金の
最低条件だが、新会社法の要綱案では有限会社を廃して株式会社に
一本化、最低資本金制度を撤廃する。
特例措置として導入された「1円起業」を恒久化する形で、前提条
件だった5年以内の増資も不要にする。
特例だった措置を資本金規制の撤廃にまで発展させた背景には、起
業を促す仕組みを強固にする狙いがある。
東京農業大学の鈴木充夫教授は昨年4月、資本金1円で農産物を
ネット通販するメルカ−ド東京農大を設立した。店舗や在庫を持た
ないため開業費用は少額で済んだが「特例がなければ今の形で起業
するのは難しかった」。5年前に教え子の起業を支援した際、資本
金650万円をかき集めた苦労を経験したからだ。
経済産業省によると、特例措置で生まれた企業数は制度導入から
2年で累計2万社を突破。最低資本金という障壁をなくす試みは、
ひとまず成果を上げたといえる。
ただ起業を支援する実務家からは、成長性など質の面で疑問を投
げかける声も聞こえる。都内で開業している下川和久会計士は「過
小資本金は勧めない」という。開業時に内部留保がないと金融機関
から融資を受けるのは厳しく、一部業種を除けばすぐに利益を出す
ことは難しいからだ。
インタ−ネット広告代理店大手、サイバ−エ−ジェントの藤田晋
社長も「週末起業家は増えるだろうが、産業の主要プレ−ヤ−が出
てくるかどうか」と懐疑的だ。
起業コンサルティングを手掛けるリッジの国貞至社主は「取引先
などが信用力を判断する上で、企業の資本金の多寡は現実的な物差
し」とし、規制撤廃がむしろ逆効果となることを懸念。新会社法で
は大企業並みの統治体制が中小には求められない見通しであること
と合わせ、ベンチャ−全体への不信感を招くような不祥事が増える
のではないかと心配する。
「緩和策の成果を定期的にチェックし、実効性を高める努力が必
要だろう」。デジタル家電ソフトを開発するゼンテック・テクノロ
ジ−・ジャパンの大谷省三社長は、最低資本金制のない米国で起業
した経験を踏まえて指摘する。
起業の量的拡大に質の向上が伴わなければ、ベンチャ−育成の真
の成果は得られない。 |
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