「借金を整理します」NPO法人の悪徳手口
(週刊現代 2005.8.20・27)
「借金をこれ以上増やさないで、確実に減らす」。多重債務者にと
って魅力的なキャッチフレーズ。しかも、NPOは家族に知られな
いよう無料で相談に乗るというものだ。だが、その落とし穴は、さ
らなる借金地獄に直結している。
NPOは違法行為の隠れ蓑
埼玉県に住むB子さん(66歳)は02年9月、郵便受けに投げ
込まれたチラシを見て「市民無料相談センター」に電話した。息子
の工場の倒産が原因で消費者金融4社から140万円余を借りてい
たB子さんが事情を少し話すと、電話に出た男性は即答した。「い
い法律事務所があります」
男性がB子さんに紹介したのは、東京・日本橋にある中島敬行弁護
士(第一東京弁護士会所属)の事務所だった。
「事務長と名乗る男性がもっぱら対応し、中島先生は最後に少し話
しただけでした」B子さんはこう振り返る。
事務長の指示で、月々3万5千円、総額約25万円をUFJ銀行の
中島弁護士名義の口座に振り込んだ。
しかし、振り込みが終わったのに債務整理について一向に連絡が
ない。問い合わせても埒があかないため、不審に思ったB子さんが
03年5月に中島弁護士を解任すると通告すると、中島弁護士事務
所は慌てたように、着手金の領収証や消費者金融との和解契約書を
送り、残金として9万6千円を返してきた。
中島弁護士事務所は「NPOから依頼者の紹介を受けた事実はな
い。事務長は退職したが、退職理由はお答えできない。債務整理は
1年以上前からやっていない」と答えた。だが、現にB子さんの債
務整理は終わっておらず、別の弁護士に委任して自己破産しなけれ
ばならなかった。いまは郵便局で仕分けの仕事をしながら、爪に灯
を灯すように暮らしている。中島弁護士に対してはすでに懲戒請求
が出され、第一東京弁護士会では、同弁護士の懲戒について調査を
進めているという。
これらの事実を総合すると、NPO法人「市民無料相談センター
」は、整理屋と提携している弁護士事務所に「客」を紹介する「紹
介屋」である疑いが濃厚だ。
紹介屋が債務者を弁護士に紹介するのは、もちろん紹介料を受け
取るためである。日弁連非弁提携問題対策委員会によれば「紹介料
は弁護士報酬の40%位が相場で、債務者を一人紹介すれば25万
円などと決めているケースもある」。
だが、紹介屋が弁護士に顧客を紹介し、弁護士から代価を受け取れ
ば、非弁護士の法律事務取り扱いを禁じた弁護士法72条に違反す
ることになる。罰則は2年以下の懲役か300万円以下の罰金だ。
だから、紹介屋には「NPO」の隠れ蓑が必要なのである。宇都宮
健児弁護士は、「債務者を表向きは無料で弁護士に紹介しながら、
弁護士からは紹介料を「NPOへの寄付」の形で受け取る。これが
弁護士法違反を脱法する手口なのです」と明かす。
NPO自体が整理屋のケースも
しかも、いまや非弁提携は弁護士だけのおいしい特権ではなくな
った。02年の司法書士法の改正で、司法書士が簡易裁判所で債務
者の代理権を取得し、司法書士の名前で金融業者に受任通知を出す
と取立が止まるようになった。それによって「提携司法書士」まで
増えたのだ。3月17日、大阪簡裁は、床田秀久司法書士と提携し
て債務整理に携わっていた市民団体「梅田あさがおの会」に対し、
債務者への損害賠償を命じる判決を言い渡している。
さらに、債務者を弁護士や司法書士に紹介するのではなく、自前
で債務整理そのものを引き受けるNPO法人まで現れた。
つまり、整理屋が「NPO」を名乗り、債務整理の名目で違法な代
価をとるケースだ。多重債務者の相談に取り組む「全国クレジット
・サラ金被害者連絡協議会」は昨年「七転び八起きの会」と「ヤミ
金・高金利撲滅運動協議会」を弁護士法違反の疑いで弁護士会に告
発した。ともに法的資格もないのに債務整理を引き受け、報酬や手
数料をとっていた疑いがもたれている。
弁護士、司法書士、そしてNPOといった公的な色彩の強い肩書
に対する市民の信頼を悪用する罪は重い。
宇都宮弁護士が力説する。「電車などの車内に弁護士事務所の名前
で広告を出す整理屋もいます。整理屋や紹介屋が多重債務者から搾
り取った収益は、暴力団や右翼団体の資金源になっているのです」
提携弁護士による預かり金の搾取に、捜査当局が乗り出すのこと
は極めて希だ。弁護士会、司法書士会が強力な自浄作用を発揮しな
ければ司法への市民の信頼が崩壊しかねない。今この瞬間も提携弁
護士と組んだ悪徳NPOが荒稼ぎし高笑いしているのだ。
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