最新情報ヘッドライン Vol.2

時代遅れ?「民法772条」
(毎日新聞2007.2.7)




離婚後300日以内に誕生なら前夫の子

 民法772条(1808年施行)
 1,妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する。
 2,婚姻成立の日から200日を過ぎた後、または婚姻解消、
   取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中
   妊娠したものと推定する。


 「離婚後300日以内に誕生誕生した子は前夫の子」と規定する

民法772条を巡り「今の夫の子なのに」と疑問の声が広がってい

る。離婚、再婚の増加なども、法律ができた当時は予想しなかった

社会の変化が背景にある。5年前、自治体側の改善要望に「応じが

たい」と答えた法務省も、ここへ来てようやく実態調査に乗り出し

た。

 「実態が分かっていないことに尽きる」。法務省の姿勢を批判す

る、枝野幸男衆議院議員(民主党)。弁護士でもある枝野議員は昨

年3月15日、法務委員会でこの問題を取り上げていた。

 「離婚に至る大部分のケースで、別居が先行したり訴訟などに持

ち込まれる場合には、夫婦関係が長期間ないのは常識。しかし、規

定は離婚直後の妊娠でも前夫の子だ。否定するのは、前夫の協力を

得て裁判をしなければならない」

 詰め寄る枝野議員に杉浦法務相(当時)は「ご指摘のような事情

は得意なケースだと思う。見直すとすれば慎重のうえにも慎重に検

討すべきだ」と答えた。法相は2度の答弁で「特異」という言葉を

3回使い、姿勢を変えなかった。本当に特異なのだろうか。

 規定に悩まされてのは、離婚経験者だが、離婚、再婚する人たち

の割合は年々高まっている。厚生労働省の「婚姻に関する統計」に

よると、05年に結婚した夫婦のうち、夫婦、または一方が再婚の

カップルは全体の25.3%(18万767組)。4組に1組のが

再婚カップルで、75年の12.7%の倍になっている。

自体体対応に疑問の声

 誰が父親になるかは相続などの問題に直結するため、300日規

定は、父親を法的に明確にする目的で設けられた。婚姻中に妊娠し

たことがはっきりしていれば夫が父親で、離婚前の妊娠なら前夫を

父親とするという「親子推定」を明文化したものだ。

 ただ、現代では、離婚前に夫婦が長く別居していたり、離婚前後

に新たな男女関係が生じることは珍しくない。ところが、規定では

妻が夫以外の男性の子を出産したことが明確でも「夫の子」となる

ケースが起きる。

 夫(前夫)以外の子にする方法は、夫側から「自分の子ではない

」と裁判に訴える「嫡出子否認」がある。手続をとれるのは、子の

誕生を知ってから1年以内。期間を過ぎた場合は、子や妻、夫など

から「親子関係はない」との訴え(親子関係不存在確認訴訟)を起

こすしかない。

 「DNA鑑定で、親子関係がはっきりしている」「早産だった」

当事者がそう訴えても、こうした裁判を勧める「杓子定規」な自治

体の対応に、当事者だけでなく、多くの人から疑問の声が上がる。

しかし、自治体に審査権がなく、自治体により異なった判断が出る

ような事態を防ぐため、法律に基づいた対応しかできない。

 それでは、法改正しか打開策はないのか。実は同じ民法772条

でも、規定を運用で見直した部分がある。結婚から200日を過ぎ

て生まれた子は「夫の子」とする第2項前段だ。規定どおりなら、

結婚から200日以内に出産すれば「夫の子」とはされない。

 しかし、40年7月30日の旧司法省(現法務省)の見解(民事

局回答)は「結婚中に子が生まれたら、結婚前の内縁関係を調査せ

ずに出生届を受理すべきだ」とした。これがいわゆる「できちゃっ

た婚」で生まれた子を「夫の子」と認める根拠になっている。