6月17日(木)夜、オランダからロンドンへ

初めての宿泊旅行。本当なら強く印象に残っているはずだが、イギリスにはその後2度も訪れたのでどうも記憶がごっちゃになっているような気がする。もしかしたら記憶違いのこともあるかもしれない。

何しろ初めてオランダから飛行機に乗って外にでかけるので何もかもが手際が悪く、後から思えば反省しきり。まず第一に空港までの移動手段だ。そんなに長期旅行ではないのだから自家用車で行けばいいところを、空港の駐車場のこともよくわからなかったためタクシー利用。日本に比べればタクシー料金も割安だが、流しのいないオランダでは家まで来てもらわなければならず手間がかる。
ちなみに
、治安の面を考えるとタクシーを自宅の真ん前にまで呼ぶのは避けた方がいいのだそうだ。タクシーの運転手に自宅を知られてしまうということの他に、旅行で留守にするということを周囲に宣伝することになるからだ。我が家に盗られるようなものなど何もないが、友人のアドバイスに従い部屋の電気にはタイマーをつけて出てきた。在宅していることをほのめかすため、夕方から夜の間電気を点けるようにセットしておくのである。これらは何も旅行の時に限らず普段からこちらの人たちが心がけている防犯の一部。やはり日本とは治安が全然ちがうということなのだろう。

スキポール空港を飛び立った飛行機が向かったのはロンドンでも北のはずれにあるスタンテット空港だ。イギリスにはIRA問題もあって空港のセキュリティチェックが厳しいイメージがあったが、国際空港のヒースローに比べるとずっとチェックが少ない。パスポートを見せるだけですぐに入国できた。

空港には夜遅くにもかかわらず主人の友人のK氏が車で迎えに来てくれる。1年ほど前に東京で会って以来だ。

空港から高速を使ってロンドン市内へ向かう。周囲はヒースの丘が広がっているらしく漆黒の闇だ。道路脇の土手しか見えない。時間も遅いので娘は車の中で船を漕ぎはじめた。しばし三人でオランダやイギリスの生活事情などを話す。同じヨーロッパとはいっても(こちらではイギリスはヨーロッパの仲間に入れられないことが多いが)様々な状況が違うようだ。

一時間ほども走っただろうか。ようやく目的のホテルに着いた。とても近代的な感じがするのはアメリカ資本のホテルだからかもしれない。もう11時。オランダ時間なら12時だ。遅い時間の割にホテルのフロントは混んでいた。少し待ってチェックインをすませても、娘は立ったままほとんど夢の中状態。かわいそうなので急いで部屋に入り、パジャマに着替えさせるとすぐさまベッドへ向かった。

6月18日(金)買い物、大英博物館、主人の友人宅訪問
ホテルで
夕べ寝る前、私が忘れ物をしたことに気づいてしまった。旅立つ前にチェックリストを片手にきちんと荷造りしたつもりだったのに、最後に入れようと思っていた化粧ポーチを忘れてしまったのだ。別に私の顔など誰も見ていないだろうし、もともとたいしてメイクと呼ぶほどのものもしていないのだが、さすがに大きな街をすっぴんで歩くほどの自信は持ち合わせていない。ロンドンなら日本人向けのファンデーションも手にはいるかと念のため朝の連絡の際にK氏に聞いてみると、やはり難しいらしい。仕方がない、恥を忍んで素顔をさらそうかとあきらめたところ、K氏の奥様が日本製の化粧品の試供品をわけてくださるとのこと。海外では日本製のものが貴重品だということを知っているだけに、本当に恐縮してしまう。また、受け取りに伺うとの私たちの言葉にも、仕事へいく途中だからとK氏が車で届けに来てくださった。改めて「K氏ご夫妻、本当にありがとうございました」。

さて、ホテルの朝食はこれぞ噂に聞くイングリッシュブレックファスト。薄い食パンにはバターやジャムが沢山用意され、卵料理、ソーセージなど、盛りだくさん。後にも先にもこんなに充実した朝食には出会っていない。おいしく、しっかりと頂いた。

リージェントストリート

このホテルからロンドン市内までは結構遠い。まずはバスで市内へ向かうことにするが、これはよく観光ガイドに載っている二階建てバスではなく、ごく普通のバスだ。地図でバスルートを追いながら乗るのは少々しんどいが、地元の人になった気分で楽しい。普段着の街を知ることが出来るような気がする。メイフェアに近いあたりでバスを降りた。

まずはハノーヴァー・スクエアにあるいぎりす屋へ。日系のギフトショップだ。日本人の店員がいらっしゃいませとお辞儀してくれる雰囲気は、もうほとんど日本である。ここであれば日本人向けのファンデーションもあるかも・・と淡い期待を抱いたのだったが、残念ながら日本へのおみやげを想定しているのか目当てのものがない。仕方がないので口紅を一本だけ買い、店を後にした。

別にブランド物が買いたいわけではないのだが、やはり高級な町並みがみたいとリージェントストリートを歩くことにする。ハノーヴァー・スクエアからは目と鼻の先だ。娘のベビーカーを押しながらストリートに出た途端、私はその美しさに驚かされてしまった。ストリートを挟んで左右に建つ立派な建物は、綺麗な弧を描きながらピカデリーサーカスの方へと続いている。しかも、空はヨーロッパでは滅多にないような青空で、くすんだ白色の建物がよく映えている。驚いてたたずむ私を見て、これが二度目のイギリス旅行である主人は「ね、すごいでしょ」と笑うのだった。

趣のある通りを、お店などをのぞきながらそぞろ歩きしていく。途中、かわいらしい子供服のお店を見つけたので入ってみる。縫製もしっかりしているし、デザインもかわいい。後でこれがアメリカのブランド服だということが分かったのだが、ヨーロッパではこの店舗でしか買えないらしく、以後、イギリスに来るたびにここに立ち寄り娘の洋服を買うことになった。地下には子供用のビデオが放映され、ミニ・プレイコーナーがあって、娘にとっても過ごしやすいところだ。何よりここの洋服が気に入っているらしく、自分でも洋服を選ぼうとする。
また、ハムリースまでたどりついたところで、娘のためにお店に入ってみることにした。ここは王室御用達のおもちゃやで、4階建ての(だったと思う)全てのフロアにあらゆる種類のおもちゃが売られているのだ。
娘は一歩足を踏み入れるなり大興奮。お客の気を引くためにデモンストレーションなどもやっているのだから尚更だ。あらゆるところで立ち止まり、動かなくなる。
少し遊ばせては促し、別なコーナーへと移動していく。娘を遊ばせることが目的なので喜んでもらえれば問題ないが、どんなおもちゃにも反応するので興奮しすぎやしないかとちょっと心配だ。結局、それぞれのフロアでお絵描きボードをいぢったり、ブロックをしたり、おままごとセットで遊んだり。あげくはなんとプリクラまで見つけ出し、主人と2ショット写真。大満足な様子だった。

南下していく途中、ちょっとだけ道を逸れてみることにして西側の道に出てみた。裏通りも建物が立派だという点では変わらないが、あまり人は多くない。と、向こうから年配の男性が歩いてきた。思わず、主人と顔を見合わせてしまう。その人の服装が、シルクハットに燕尾服、それにステッキを持っていて、まるでシャーロックホームズの本から抜け出てきたかのような格好だったからである。い、イギリスでは、こんな格好で歩いている人が今でもいるんだあっと、ちょっと感動。もっとも以前に浅草を歩いていたとき、どうみても大正時代の書生風の服装をした若者と、マーガレット結いにしてやはり大正時代風の着物を着た女性のカップルを見かけたことがある。この英国紳士が彼らと同じような存在なのかどうかは、分からない。
フォートナム・メイソンに寄ってジャムと紅茶を買った後、お昼を食べるためにチャイナタウンに向かった。


チャイナタウン
チャイナタウンはピカデリーサーカスから少し東側。裏通りの方へ入るので、ちょっと入り方が分かりづらい。イギリスは香港を植民地にしていたくらいだからもう少し大きいものを想像していたのだが、横浜の中華街ほどの派手な門があるわけではなく、急にふっと目の前に現れる感じだ。土産物屋も多くはない。ただ、街の看板には漢字があふれ、ごみごみした雰囲気はなんだかなつかしい。ガイド本に出ていた東海というお店に入って食べたが、あっさりした味付けでとてもおいしかった。アジアの人だけに子供に優しく接してくれ、娘も大好物の焼きそばにご機嫌。やはり中華料理は子供連れには最適だ。このお店も私たちのお気に入りになり、以後、イギリスに来るたびに寄ることになる。

大英博物館
腹ごなしに中華街とチャリング・クロス・ロードを歩きながら大英博物館に向かう。途中ちょっと迷ったが、ベビーカーなので娘が疲れることもなく、博物館に到着。娘は大好きなタオルをつかんで指しゃぶりしているのですれ違う人に微笑まれることもしばしばだ。







大英博物館の中は結構混んでいた。かなり広いが、いくつか階段があるもののベビーカーのまま入れるため、娘をベビーカーに乗せたまま歩くことにする。お腹がいっぱいになので寝るかもしれない。・・と思ったのだが、彫刻がおもしろいらしく、結構楽しんでいるようだ。エジプトの彫刻などには興味がないようだったが、ミイラや馬の彫刻の場所ではベビーカーから降りたがり、一生懸命眺めていた。

ありとあらゆる文化が集約された博物館。これだけのものが見られるのにここは寄付制である。その気になればただでも入れるのだから驚いてしまう。大英帝国の懐の広さなのか、欲がないのか。これだけの展示物を管理するだけでも莫大な費用がかかりそうなのに。

結局娘は喜んで鑑賞して回ったのでお昼寝はなし。疲れているだろうからと、ホテルに帰って休むことにする。博物館前でロンドンタクシーに乗り、ホテルに向かった。
ロンドンのタクシーというのは独特だ。黒い大きな車体にはスーツケースやベビーカーまで客室に乗せられる。娘もベビーカーに乗ったままタクシーに乗せられるが、さすがに危ないだろうと考えてベビーカーをたたみ、私たちの横に座らせた。運転手は噂通りロンドンのありとあらゆる道を熟知しているらしく、小さな路地を使い、川縁の道を通ってホテルへと向かう。難点はあまり乗り心地がよくないこと。人々がのんびりとくつろいで寝そべっているリージェントパークまでたどり着いた頃には、少し気分が悪くなってしまっていた。

K氏のお宅へ
タクシーの中でもうとうとしていた娘だったが、ホテルでしっかりと昼寝をし、夕方には元気いっぱい。K氏がホテルまで迎えに来てくれ、ご自宅まで向かうことになった。ホテルからK氏の自宅までは歩いてすぐだ。街を歩いていて面白いのは、横断歩道のところに「右を見て!」と書いてあること。イギリスは日本と同じで車が左側通行だが、大陸では右側通行。歩行者が道路を渡ろうとするとき気をつけなくてはいけないのは左側から来る車になる。それに慣れている大陸からの旅行者は、イギリスでもまず左側を見てしまう。事故が多いために注意喚起を促しているのだろう。

K氏のご自宅ではお寿司が用意されていた。手に入りにくい物をと恐縮していたら、ロンドンではオランダほど刺身を手に入れるのが難しくないらしい。そうではあっても、久しぶりに食べる手巻き寿司。本当にありがたく頂いた。ここでは娘もK氏のお嬢さんと大喜びで遊び、楽しかった様子だ。ホテルに戻るのを嫌がられてしまった。


                                     

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