ワイヤーワーク編 

タキシード メダリオン
ジャッキー映画とワイヤーアクションは、切っても切れない関係だ。カンフー映画時代から現在に至るまで、アクションシーンを効果的に演出するため、または危険なスタントの際には命綱のため、古くはピアノ線、現在はワイヤーと名を変えたそれは、陰ながらジャッキー映画を支えてきた必須アイテムのひとつである。
しかし、そういうスタントとは少し別の形のワイヤーワークが、数年前から映画界を席巻し始めた。詳しくは知らないが、『グリーンディスティニー』や『マトリックス』辺りがアメリカでヒットした頃から、ワイヤーで空を飛ぶタイプのアクションが流行りだしたらしい。見れば誰でもわかるだろうとは思うが、アクションを派手に見せる演出手段とは別に、明らかに人間には出来ない動きをするためのワイヤーワーク(+CG合成)。今のところ明確な分類や呼び名はないようだが、脇役に徹してきたワイヤーがメイン素材の主役として脚光を浴びるようになった。今じゃリュック・ベッソンもタランティーノもこういう撮影を取り入れているし、チャーリーズエンジェルだってワイヤーでくるりと簡単に宙返りをして、華麗な動きを見せてくれているのだった。
(※注意※ Kは映画のこういう手法についての知識はほぼゼロなので、誤った認識による話が混じる可能性があります。ご注意ください)

このワイヤーワークをハリウッドに持ち込んだのは、ユエン・ウーピンを代表とする香港映画界の出身者たちだ。香港では昔っからワイヤーで吊って空を飛んでいたのだから、元々は香港映画のお家芸ともいえる。そのトンデモな世界観がハリウッドで認められ、歓迎されたことを受けてか、ジャッキーも空飛ぶワイヤーアクション映画を作ることにしたらしい。
今までだってワイヤーアクションを使いまくっていたのだから、いまさらワイヤーで宙返りしたところでたいした違いはないだろう、なんて甘く見てはイケナイ。同じワイヤーワークでもこれまでとは全然違うのだ。そりゃもう、最高級鹿児島黒毛和牛の牛丼と吉○家の牛丼を食べ比べたときくらいに違うんだ。(…多分。)
その違いは見て理解してもらうしかないが、とりもなおさず、他のハリウッド映画と一緒に扱うにはあまりにも違和感がありすぎたので、抽出して別の分類とさせてもらうことにした。ここにどれくらい集まるのか、未見の近年作に戦々恐々としつつ。
まずは驚天動地のワイヤーワーク映画を語っちゃいましょう。





『タキシード』 (2002)
【あらすじ】N.Y.でタクシー運転手をしているジミー・トン(ジャッキー)はある日、おかかえ運転手にスカウトされる。雇い主はクラーク・デヴリンというちょっと風変わりな紳士だ。意気投合する二人だが、デヴリンが突然、何者かに襲われて大怪我をしてしまった。ジミーは何故かデヴリンの身代わりとして「ウォルター・ストライダー」という人物を探すことになる……。

……えーっと。
途中まで書いていて、話の筋が全然わかっていなかったことに気が付いた
吹き替えで見たのに、三回以上見直したのに、なんかわかりにくいなと思っていたら、どうやら本当にあらすじから理解できていなかったらしいです。バカヤロ、調べて出直して来い。

 ……
 ………調べてみた。
えー、つまり、デヴリンはCSAという秘密組織のエージェントで、スーパータキシードを持っている。このタキシードを着ると凡人でもなんでもできてしまう、スーパーマンとかスパイダーマンに変身するスーツのようなものだ。これを着て超人になったジャッキーは、新米エージェントのデル・ブレインと共に任務に就き、悪を倒すついでに「ウォルター・ストライダー」を探す…というお話。
でも、なんで単なる運転手のジャッキーが「ウォルター・ストライダー」を探さなければいけないのか、何故、彼が突然エージェントとして動き始めてしまうのかがやっぱりよくわからない。多分、この時点でKは物語の流れからオチこぼれてしまったようだ。

ジャッキー映画の再ブームに突入した当初、「そういえば前にテレビ放映して、録画したけど見てなかったジャッキー映画があった」と思い出して見た一本。録画したまま見るのを忘れてるって映画、結構あるよね;
で、見てみて驚いた。
「いつの間にジャッキー、こんなつまらない映画を撮るようになったんだ…」
テレビ放送されればたいていのジャッキー映画は見ているが、ストーリーはともかく、アクションシーンで魅了されなかったことなど、未だかつてない。どれを見てもどこかが面白いと思うポイントがあったから、今まで漠然とでも見続けてきたわけだけど、こんなに面白くないジャッキー映画を初めて見た気がした。
気のせいかな? と思ってもう一度見直してみたけど、やはり面白くない。ジャッキーらしいアクションが見られないし、何より、
ストーリーが屑。TV用の短縮バージョンだからというだけでなく、とにかく説明も脈絡もなくて、意味不明。ジャッキー映画で物語性を求めていないけど、どうしても物語の展開についていけない。普段なら多少の不審点があっても、アクションシーンなどに引っぱられて話についていってしまうものだが、この話はどうもダメだ。ジャッキーはじめ、登場人物たちはどれもこれもおつむが弱そうで知的じゃないし、全体のテンポというか、変なノリにドン引きした気分を最後まで立ち直らせることが出来なかった…
その後、ジャッキー映画を何本か見ると、どれもとても面白かった。ファン間では評価の低い映画を見ても、Kにとっては充分楽しめたので、もしかしてこの映画ももう一度見れば面白いかもしれないと思って再見してみた。そしたらやっぱり面白くなかった。
ダメだこりゃ。

この映画のウリのひとつがジャッキーのワイヤーアクションだったことは後になって知ったが、最初に見た時はマジにびっくりした。別にワイヤーアクション自体はキライではない。『マトリックス』だって『英雄』だって『少林サッカー』だって見るから、その手法自体は見慣れたものではあるのだが、ジャッキーがワイヤーアクションで空を飛ぶ日が来るとは夢にも思っていなかった。ちょっと愕然としてしまいましたよ。
謳い文句としてはスピルバーグ率いるドリームワークスが「君にしかできない」とジャッキーに熱烈ラブコールをして実現した夢の企画、らしいが、僭越ながら、見た感想としては、
「ワイヤーで吊るならジャッキーじゃなくたっていいんじゃないかなぁ…」というところだ。多分、多くの人がそう思ったと思うけど。
そりゃ、ジェット・リーだって飛んでるし、ジャッキーが空飛んだって別にかまやしないけどな? どうせ飛ぶなら、もっと全然違う形で「ジャッキーチェンにしかできない」ワイヤーアクションを見せて欲しかったよ。バク転したり踊ったり、敵と戦ったりするアクションの中でワイヤーなんて、他の誰にだってできそうじゃないか。もっと新鮮で奇抜なワイヤーの使い方ってなかったんかいな……
正しくは
「この程度のアクションでワイヤーを使うなら、ジャッキーである必要はない」だ。
あのジャッキーがワイヤーアクションをするなら、常人がワイヤーで吊るすよりもっとすごいことができるはずなんじゃないのかと、そう思ったりするんだけど。

まぁ、スーパータキシードって妙な代物を身につけると超人になる、という設定まではヨシとしよう。アメリカ人は変身モノが好きだからな!(爆) でもせっかく『マスク』的に超人になったのなら、飛んでるヘリコプターからステルスに飛び移るとか、走ってる地下鉄を力任せに片手で止めちゃうとか、そんくらいやってもよかったんちゃう? 
イヤ…発想が貧困だから変な例しか思い浮かばないんだけど……別にスケールがでかけりゃいいってモンじゃないし、実際はそんな「ド派手に壊せばいい」っていう頭の悪い映画にも充分食傷気味だけど、いくらなんでも、
「水」で大儲けしようとしている悪党の屋敷に忍び込んで、地下の研究室を見つけて、アメンボの争奪戦をする、って程度の話に、ジャッキー+ワイヤーアクションを合わせなくてもいいんじゃなかろうか。
巨大なものを破壊する、むやみにスケールの大きなアメリカ的アクションじゃなく、ワイヤーとジャッキーアクションを競演させることによる、我々が思いもつかなかったような斬新なアイディアが、ジャッキーならいくらでも思いつきそうなんだけどなぁ。
せめて「地下水を汲み上げすぎて自由の女神が傾いちゃったので、ジャッキーが一生懸命引っぱって元に戻す」くらいのテイストは欲しいところだったなぁ、と思うものである。

そういうわけで、どう好意的に考えてもジャッキーという素材を生かしきれなかった『タキシード』だが、このあたりの採点について、この作品だけで結論を出すの早計というものだ。何しろジャッキーのワイヤーアクションは続くのだ。次なるワイヤー版ジャッキー映画へと、話は続いていくのである……。






『メダリオン』 (2003)
香港の刑事、エディ・ヤン(=ジャッキー)は国際犯罪組織のボス、「蛇頭」の捜査をしていて、一人の少年が誘拐されたことを知る。マフィアの本拠地であるアイルランド・ダブリンのインターポール支部に協力を求めたエディは、そこで香港で一緒に仕事をした変わり者の捜査官・ワトソンと、昔の恋人ニコルに再会。二人と協力して少年の救出に乗り出すが、貨物船のコンテナに閉じ込められ、海に突き落とされて命を落とす。ところがその後、少年の持つメダリオンの力で不死身の超能力を持った者として甦った。メダリオンにより、同じように驚異の超能力を手にした「蛇頭」と対決する、という物語。

香港・アメリカの共同制作。詳しい経緯は知らないが、アメリカの会社に出資してもらい、香港スタッフで製作したらしい…ジャッキーはちょっとした義理から製作に携わることになったようで、いろいろな他映画の制作の合間に撮影したため、完成まで一年以上かかったという話だ。原題(
ハイバインダーズ)の時は公開版とは大分内容が違っていて、アメリカ会社側の意向でかなりの変更を余儀なくされたものらしい。そんなわけで、当初掲げた看板からなし崩し的に縮小されたものをなんとか完成させた、といった小粒な印象の一作。本編が90分未満と短く、物語もわりと軽いテイストに仕上げたという点で、最終的な戦略はまずくはないといえるだろう。日本公開時はジャッキー生誕50周年、日本公開作品50作目という節目な作品でもあった。

見た感想としては、普通の映画としてはまぁまぁ面白かった。話が唐突で説明不足ではあるが、少なくとも『タキシード』よりよっぽどわかりやすいし、楽しめる。ジャッキーの髪型も年齢に合っていて、顔も疲れてないし、衣装もおしゃれ。まったく、ここ最近のジャッキーの衣装はいいね! 最初のシーンでは黒い革ジャン姿。その後、ダブリンに来た後のカラーシャツとジャケットの色合いの組み合わせとか、無難に収めることなくてパッと目を引くんだけど、とても似合っていてカッコイイ。白いスーツ姿もいいし、生き返ってから着てた医療着みたいなのもそんなに悪くない。未公開フィルムを見ると、本当はホームズ帽もかぶるつもりだったらしい…(笑)。
その他、個人的な好みでいうと、脇キャラがいろいろと楽しめる。今回の相棒役のワトソンは、本来はイギリスの喜劇役者とかで、キテレツなキャラクターだった。最初はコメディ担当だとわからず、一人で嫌味な騒ぎ方をしていて
「何だこいつ?」って感じだったんだけど、ジャッキーが生き返った時とか、ナイフで不死身ジャッキーを刺してみたりする時のやりとりが結構笑えた。この「ジャッキーよみがえり」辺りのシーンなどは、字幕で見るより日本語吹き替え版にして見た方が面白みがある。石丸さんの演技も、ワトソン側の声優さんのひっくり返った声も、パニクったやりとりがすげーいい。「ジャッキーが死ぬ」というのはひとつの禁忌だが、この映画では最初から生き返るとわかっているので、安心して見ていられるね。
ワトソンはこの他にもいろいろ喜劇なエピソードも撮影したようなのに、多くがカットされてしまってちょっと気の毒だ。まぁ未公開シーンで見た限りでは、全体のバランスから言ってカットされたのは無理もないと思ったけど。
ついでに
メダリオンを持つ少年がすっごくカワイイ。ほとんど喋らないでニコッと笑う笑顔が愛らしいんですよ。その少年を守るジャッキーの、抱き上げたり笑いかけたりするちょっとした交流がK的にはおいしかったですv 思わずショタの血がウズウズと騒ぎ出す〜;
ジャッキーと子供って、大体がジャッキーが子供を守る、みたいな関係になりがちだけど、たまには「インディ・ジョーンズ」のキー・ホイ・クァンみたいな名子役を探してきて一緒に冒険活劇してくれないかなぁ、なんて思ってしまった。ああ〜、そう言えばキー・ホイ・クァンって今頃どうしてるんだ〜!?
(…そして『グーニーズ』とか中古ビデオで思わず買ってしまった。そんなことを言っていると『ラッシュアワー3』でインディ・ジョーンズの映画のシーンがあってキー・ホイ・クァンを見たよ。ショーティ! 奇遇だなぁ/笑)

アクションについては、
もう笑えるくらいのブッ飛びワイヤーVFX的アクションで、こういうものだと思って見ればそれなりに面白いんだ(B級だけどね)。テンポもよくてBGMもどこかでよく聞くロックな洋楽だし(疎いのでよくわからん)、コミカルさを混ぜ合わせながら画面をド派手に飾ってくれている。ヒロインのニコルのアクションもなかなか頑張ってたしね。…ああ、いや、ニコルよりワトソンの奥さんの方が、端役だけどすごかった。清楚な奥様かと思ってたら、悪党の来襲に掃除用具入れから盾とショットガンを取り出していきなり戦い始めるのだ。あ、あなた何者!? すごいインパクトで、彼女の素性とさらなる活躍をぜひ見たかったです(笑)。

…脱線しました。要するにこの「メダリオン」、映画としては90分間、退屈しない程度には楽しめるものだったと、そのくらいには評価できます。登場人物がそれぞれ個性的で面白かったし、いろんなコネタが興味深かったので、見所を拾っていけばそれほど捨てたものではないぞ、と。
ただし、ジャッキーが出演してなかったら見るほどの価値はないだろうと思うし、それでは我らがジャッキーチェン映画として見た時に素晴らしかったのかというと、決してそうは思わない。大体、後半のジャッキー自身のアクションはほとんどないも同然、CG加工で飛び回ってるだけで、ラスボスとの決闘も空中でくるくる回るだけで終わってしまった。カンフーらしいものもなく、光と音と特撮に騙されてラスボスが倒されたとしか言いようがない。そこらへんは『タキシード』とよく似ている。
…ジャッキーにアクションをやる気がなかったとしか思えないんだが、どうだろう。
せっかくスーパーマンになったのにね。忙しくてアクションするのめんどくせーから特撮技術で加工するならまぁいいやって感じ?
(どんなに気の進まない出演であろうと、ジャッキーがそんな姿勢で映画製作をするとは思っていないが) これ、サモ・ハンがアクション担当監督なんでしょ? どこらへんで振り付けしたのさサモ・ハン。

…うーん、ここまであからさまにやらなくても、もう少し自然に特撮できないものだろうか…
いやまぁ、不自然に飛び回るのがこのワイヤーワークの面白さではあるのだが。
実際、特撮技術の完成度などはよくわからないけど、いくつかのシーンではわりと面白い動きもあるんだ。そういう「遊び」をもっと見たい!って一瞬だけ思うような。そうですねー、例えばソファを飛び越えるというなんでもない場面だとか、病院で天井にぶら下がっている鉄パイプにしがみついてそのままバキバキっと折って吹っ飛んでいくシーンとか。ちょっと面白いと思ったかな。その前後の場面はともかくね。
ポールによじ登ったり、高い鉄門をヒョヒョイと乗り越えちゃったり、今までのジャッキーが生身でできていたことをわざわざワイヤーにする必要はないと思うんだけど、まぁ多少しんどいならその力をお借りするのもいいでしょう。ただ、そんなことじゃなく、それに加えた新たな映像美が見られそうな片鱗は感じられないこともないんだけどなー。もう少し使い方を工夫すれば、面白くなるんじゃないの?って、素人としては単純にもどかしく思ってしまうのです。
実際、『HERO』などのワイヤーアクションは映像美として素晴らしかったと思うし、こういうVFX自体は多くの可能性を秘めていると感じている。だからこそ、ジャッキーのこれが
「もう少し進化したなら!」という期待がないでもない。
『タキシード』よりはまだカンフーアクションの見せ場があるし、テンポもいいし、物語も少し向上している。一方で過激な特撮の演出になっているが、やり過ぎてるところに面白さはある気がする。うまく化ければ、新たな新境地が開けてきそうな予感はあるんだけど…
さて、どうなるのか。今後のこの分野の作品(出ていれば)にもう少し、期待をかけてみよう。