jupiter

2004/12/30


真夜中、東秩父の和紙の里に到着した。


寒く凍る林道御堂笠山線にやって来た。


ここは東秩父に訪れると必ず立ち寄る林道でもある。


起点からアスファルトの路面が上へ上へと延びてゆく。


先日に降った雪が次第に路面を隠す。


大した林道でもないのに何度この林道を訪れたことだろうか。


車を止め、ドアを開けると一気に冷たい空気が流れ込んできた。


足元からはザクッと凍りつく雪の感覚が伝わってきた。


空を見上げると冬の星座が煌いている。


半開きのドアからは平原綾香の「ジュピター」が流れてきた。


繰り返される「一人じゃない」という歌詞が心にしみる。


20年位前だろうか、僕にとっての林道走行の原点がこの笠山にある。


それは天体観測から始まった。


堂平山に登れば満天の星が見られるに違いない。


だが、手前の笠山で力尽きて断念した。


気が付くと山の魅力にもとりつかれていた。


それから数年が経ち、天文雑誌ではクラッシック音楽のホルストの組曲「惑星」が紹介されていた。


ちょうどボイジャーが木星に接近し、土星以外の輪を発見していた頃だったろうか。


「惑星」のレコードジャケットには確か木星の絵が描かれていたように思う。


火星−戦争をもたらす者

金星−平和をもたらす者

水星−翼のある使者

木星−快楽をもたらす者

土星−老年をもたらす者

天王星−魔術師

海王星−神秘主義者

この作品が作られた1917年には、まだ冥王星は発見されてはいなかった。


「火星」・それは宇宙戦争を感じさせられる戦闘的なイメージの曲。


「木星」・それは壮大ですべてを支配するかのようなイメージで印象的だった。


それからというもの、天体望遠鏡を担いで山へ行くようになった。


数年が経ち、車の免許を取得した。


気が付くとそれらの趣味に付け加えるように林道にもロマンを感じて走っていた。


「ジュピター」を聞き、今まさに原点に戻ったような気がする。


雪の路面は月光に照らされ、ゴツゴツと凹凸の影を生み出している。


まるで月面にでも降り立ったかのように。


遠くの下界には北関東の夜景が広がっている。


まるで月から地球を見ているかのようだ。


青白く光る雪道をゆっくりゆっくりと進んで行く。


林道御堂笠山線を走り終え、続いて林道萩平笠山線に向かう。


こちらは砂利道が続き、以前と変わらぬ様子に少しだけ安心した。


積雪も深いところでは10cmはあろうか。


やがて右手には大きく展望が開け、夜景もいっそうの広がりを見せている。


暫くボーっと立ち止まっていた。


再び車を走らせ、切り通しを越えると七重峠の舗装路に飛び出した。


ほんの少し下ったところから再び別の林道を進む。


林道名は、栗山七重線。


空を見上げるとオリオン座やスバルが月光にかき消されまいと頑張っている。


この辺りは日陰が多く、今までの林道より雪も多く積もっている。


分岐から先は工事中のようなのでここで引き返す。


そして、夜中の2時、再び林道萩平笠山線の夜景の広場に戻ってきた。


車内の明かりを点けると窓に写っていた街は沈んでいった。


缶ビールを飲み干し、シュラフに潜り込んで眠りに付いた。



朝、寒さで目が覚めると下界が霞んで見える。


どうやら天気は下り坂のようだ。


雪が降り出す前に下界に降りよう。


林道萩平笠山線を走り終え、いつものように赤木慈光線、雀川上雲線を走る。


そして早目に帰路に着いた。


これからも月光に照らされた真夜中の雪道を走ることがあるだろう。


その度に二つのjupiterがクロスオーバーして心のどこかに流れているのかもしれない。





midi提供***Andante comodo 音の住む館 *** 塩まぶしさん

http://www5d.biglobe.ne.jp/~mabushis/

音楽 ホルスト:組曲「惑星」〜jupiter

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この画像以外にもこちらで月光浴の画像を公開しております。 http://yamaotoko.hp.infoseek.co.jp/gallery27/gekkou.html



THE END

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