その623


『一輪挿し・・・』


場所;富山県

投稿者;尭君(男性36歳)

掲載日;’2007.9.2





初めて投稿いたします。
一部、富山弁になりますが、
はっきり覚えている会話なので読みにくいでしょうがご了承ください。

高校生のとき、日曜大工用品や家庭菜園用の品物を扱うスーパー、
いわゆる「ホームセンター」でバイトをしていました。

一ヶ月も経ったころ、従業員の方にも可愛がってもらっていましたが、
丁度店の一大行事「店卸し(たなおろし)」の日を迎えました。

店卸しというのは、店内すべての陳列商品ををチェックする、
半年に一度の定期点検業務で、
ああいう細かいもの(ネジとか工具類)を大量に扱う店にとってはとても大変な仕事です。

もちろん、丸一日、店を締め切ってスタッフ、バイト総出で早朝から実施しました。
私は園芸部で、Sさんという方に指示してもらって朝から取り組んでいました。

バイトの終業時間は確か17時でした。
その時間になるとSさんが

『ご苦労さんだったね。もう、あがっていいよ』
と声をかけてくれましたが、
一ヶ月間お世話になってきていましたので、少し頑張って残業することにしました。

そして20時過ぎ。
ようやっと目途が立ってきたようなのSさんが

『どうもありがとう。もう大丈夫だから。ゆっくり休んでね』
と言ってくれたのでその日は帰らせてもらいました。

その翌日。
私はいつもどおり出勤しましたが、従業員の方々はまだほとんど出勤しておらず、
「さすがに疲れているのかなあ」と思い、
事務所には顔を出さず、タイムレコーダーだけ押して店内に行きました。

そういえば終わってから打ち上げに行く、とも言ってたので、
それもあるのかな〜などと思いながら、私は店内一番奥のコーナーで、
脚立に乗って高いところにある商品の陳列していました。

そう、店内が一望できるほどの高さです。
その時、店の入り口からSさんが入ってきました。
珍しく私服姿です。

この店は倉庫の奥に事務室、更衣室があるのですが、
いつもSさんは着替えてユニフォーム姿で外にある園芸部に向かっていました。

「あれ、Sさんだ。私服なんて珍しいな、遅刻かな?それとも休みなのかな」
と思いながら脚立を降りてきました。

すると、血相変えたパートのおばさんが私を見つけ、走りよって来ました。
『あ、おはようござ』

『あっ、あんた知っとる!?』
ただならぬ剣幕でした。

『夕べね、夕べ、遅くにね、Sさん、亡くなったがやぜ!!』

『・・・・はあ?』

『夕べ、店卸し終わってから、みんなで打ち上げ行ったがやぜ。
ほしたら、あんた、Sさんな急に苦しみだして、
救急車で運ばれてやちゃ・・・そのまま心不全でやといね・・・むごいちゃ〜・・・』

急いで事務所に行ってみると沈痛な面持ちで皆さんがいました。
そしてSさんの机の上には一輪挿しが。

私の見間違いだったんだろう・・・とは思いましたが、
一ヶ月お世話になった人なので、遠目にもはっきりと認識できました。

無論、驚いてしまったので店内を探すようなことは思いもしませんでした。
やっぱり、心配になってこられたのでしょうか。