海月のそれから / 2004年 5月

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2004.5.1
 コマは毎日地上3階のベランダで網戸に飛びついたり、苦手なトッコさんの部屋のドアをあけて覗いては、スリルを楽しんでいます。
 はらはら冷や冷やする場面があるとお話が盛り上がるそうですが、わざわざ困難な状況を作るのに抵抗があります。
 「火事場の馬鹿力」とか、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」というシチュエーションを、無意識に避けているのです。
 リポビタンDのCM、よくネタが続くなあ...

2004.5.2
 鹿児島の実家から空豆をもらいました。
『四訂食品成分表』によると、生のさや入り空豆の廃棄率は70%。
 皮付き竹の子の60%より多いです。贈答品の過重包装のようです。
 皮をむいて箱に詰めれば3倍入るのにと思いますが、文句を言うと「帰って来て田植え
を手伝え」と言われそうなので、お礼だけ言っておきました。

2004.5.3
 畑でサヤエンドウとレタスとイチゴを収穫。去年よりはダンゴムシの被害が少ないよう
です。帰りにどこかでレタスを1株落としてきてしまいました。
 トッコさんのアシスタントが始まりました。予想外に仕事が早いです。
 残り物のシチューを温めるのも面倒臭がるような人なのに、この熱意は何なんでしょう。

2004.5.4
 コマがしっぽをふくらませて右往左往しています。虫でもみつけたのかと思い放ってお
いたら、トイレに場外ホームラン(大)をしていました。片付けて欲しかったのでしょう。
 カラー原稿を初めて描きました。うーん、変な色。。。

2004.5.5
 ベランダの鉢植えを動かしたら、4cm位のヤモリがひそんでいました。母が語るには、
ヤモリは夜な夜な「けっけっけっけっ」と鳴くそうです。近くの河原でカゲロウが大量に
羽化したらしく、夜になると窓にたくさん張り付いています。
 普段は早寝早起きなのですが、昨日今日と2時前まで起きていました。
 夜更かしして原稿を描いていると、夜行性のうさ猫達が横でごそごそしています。
 コマは昼間たっぷり寝ているのですこぶる元気です。

2004.5.6
 仕事が休みのトッコさんと一緒に、一日中執筆に明け暮れました。
 ベランダのバラがいっせいに咲き始めたので、時々眺めては現実逃避しています。去年
畑から子株を移植したイチゴも鉢いっぱいに繁って花をつけました。トッコママから毎年
もらうイチゴの苗とは葉の形が違うなあと思っていたら、花も違っていました。
 間違えてヘビイチゴを持ち帰っていたようです。

2004.5.7
 カラーのカットを一足先に入稿しました(髪の毛ではなく原稿です)。やり直しになら
ずに済んでほっとしています。原稿はB4ですが、切手ぐらいのサイズに縮小されるかも。
 今夜もトッコさんと執筆作業。二人とも無口なので、マウスのクリック音とペンのカリ
カリいう音と、ばんじの鼻息だけが聞こえます。

2004.5.8
 最近畑が数少ないレジャーになっています。趣味と実益を兼ね備えた遊びに走るのは、
年をとった証拠かもしれません。ジャガイモの根元に二十日大根が生えていたので収穫。
自分で種を播いたことを忘れていました。ヒッコリーの木の実を土に埋めて忘れるという
「りすのバナー」のようです。健忘症かも。

2004.5.9
 トッコさんがCG作業をする横でネームを描いていました。
 役所勤めの経験があるとはいえ、推測で描いている部分もあるのですが、知らない部分
も絵で埋めて行かなくてはなりません。モザイクをかけるわけにもいかないし。

2004.5.10
 熊倉隆敏さんのコミックス『もっけ』を読みました。
 トッコさんは「いいよねこれ。民俗学と妖怪漫画の融合って感じで」と絶賛しています。
 優れた作品を読むと、のめりこんで時間を忘れるか、戦意を喪失するかで、仕事をした
くなくなります。同じ作風を目指してもかなうわけはないので、古林は隙間商品を狙って
地道にこつこつ行きたいと思います。

2004.5.11
 原稿の試印刷をして仕上がりを確認しつつ、次のネームを直しています。
 古林の飲み込みの悪いのを察してか、担当さんが修正箇所を箇条書きにしてメールして
くれました。ありがたいことです。

2004.5.12
 未読のコミックスを放置することはこれまでの人生で滅多になかったのですが、最近は
どんどん増えています。うっかり読み始めるとあっという間に時間がたってしまうので、
別室に置いています。
 コマも一緒に遊ぶ時間が減ったのが不満なのか、ネームを描いている時に私の右腕に尻
を載せてじゃまをします。コマが淋しくないようにもう一頭猫を飼おうかなという誘惑に
かられますが、二頭で仕事のじゃまをされると大変そうです。

2004.5.13
 炊飯器のタイマーを押し忘れていたので飯ごうで炊きました。朝からキャンプ気分です。
 第2回のネームがやっと編集長からOKをもらえました。「もっと妖怪を出すように」と
言われたので、当初は普通の人間だった人が妖怪になってしまいました。
 可愛がって育てたにわとりを自分の手で唐揚げにするような心境ですが、ちゃんと食べ
ないと化けて出そうです。

2004.5.14
 小林まこと大賞の賞金の振り込み通知が届きました。
 ひょっとしてもらえないんじゃないかと心配していたので一安心。
 これでコマにももう少し良い缶詰を食べさせてあげられそうです。

2004.5.15
 畑にいつの間にか生えていたケシの花を、レタスと一緒にうっかり冷蔵庫へ。半日後に
気付いて花びんに生けたら、しゃんと立ち直りました。レタスの水分が良かったのかも。
 第1話を脱稿。ネームと同時進行とはいえ31ページに4週間もかかってしまいました。
 目標は20ページで2週間なので、もっとペースをあげねばなりません。

2004.5.16
 雨続きで湿度が高いせいか、家中の床が歩くとみしみし音をたてます。
 知人がこの音を「みしおとこ」と呼んでいました。
 ラップ音だとしたら怪談ですが、擬人化すると何やら可愛らしい感じがします。

2004.5.17
 データ入稿は原稿での入稿に比べて、出版社で出力する作業で1日余分にかかるときい
ていました。それで原稿だけ提出していたのですが、デザイナーさんからの指示でデータ
も提出することになりました。「そのほうが直しが入れやすいから」だそうです。
 いい機械で出力してもらえるのはありがたいことです。

2004.5.18
 原稿の修正の指示があり、手直しをしました。雑誌の「のど」(とじ目にあたるたての
余白部分)に絵を入れると切れてしまうので、断ち切りでも極力絵を入れないでください
とのこと。描く前に言ってほしかったけど、きっと業界では常識なんでしょう。CGでの
作業なので手描きよりは早く修正できました。
 昨日FAXした5件のプロットについての評価は「1件はまあ使えるかな。あとは…あー…、
楽しく読ませていただきました」というものでした。
 実家や書店から段ボールで宅配便が届き、箱を開けるたびにコマが中身をチェックして
います。夏の別荘を探しているようです。

2004.5.19
 直した原稿を発送。3日連続で郵便局に行ったせいか、窓口の局員さんに顔を覚えられ
たようです。「簡易書留と速達にするより、ゆうパックの方が安くつきますよ」と親切に
チラシを渡して説明してくれました。

2004.5.20
 担当さんから直した原稿がOKになったと連絡をもらい、ほっとしました。古林の要領の
悪さに手を焼いているでしょうに、「プロの原稿を見たことがないなら、参考にコピーを
送ります」とのこと。辛抱強い担当さんで良かった。
 業界には不出来な原稿を足で踏むような編集者もいるそうなので、私は幸運です。

2004.5.21
 仕事が遅いため、ネームを直す時に、使えるコマは捨てずにメンディングテープで切り
貼りして再利用します。担当さんの本日のお言葉。「『もったいない病』が出てますね。
以前描いた絵は思いきって整理して全部直してください」
 第3話のネームの修正が10回を越えました。もう数えるのは止めた方が良さそうです。

2004.5.22
 インクジェット用紙を受け取りに車で文具店へ。近くで大きな祭りがあり、パレードの
通過する交差点には警察官が鈴なりでした。交通規制と渋滞にまきこまれている目の前を、
ふんどし姿の男性達が通り過ぎていきました。
 夜な夜なネームの修正に追われています。左ページの最後に期待感をもたせるコマを、
めくった右ページの最初に眼を引くコマをもってくるといいそうですが、なかなかうまく
はまりません。
 収拾がつかなくなって手を止めると、コマが机にどかっと座ってじゃまをします。

2004.5.23
 窓際の机で夜中までライトをつけているので、いろんな虫が寄ってきます。体長6cm位の
ヤモリが窓に貼り付いて羽虫を捕らえていました。先日見たヤモリかどうかはわかりません。
成長したのか、それとも1匹見たら30匹いるのか...
 食べるのに忙しそうで「けっけっけっけっ」と鳴くかどうかは確認できませんでした。
 ライトが電照菊と同じ作用をしたらしく、窓の外に置いたバラが予想外に早く咲きました。

2004.5.24
 トッコさんは睡眠をこよなく愛し、家では寸暇を惜しんで眠っています。
 でも最近は休日も午前中から起きてCG作業を手伝ってくれます。これがあのトッコさん
かと、目頭が熱くなる思いです。今日も数時間手伝ってくれた原稿を、ネームにさかのぼっ
て直すことになりました。気の毒です。

2004.5.25
 郷里の叔母から宅配便が届きました。九州新幹線と桜島の切手が同封されていて、「これ
で帰ってこい」と言われたような気がしました。深読みというか、潜在意識のなせる技かな。
 昨日のCG作業がふいになるかもしれなくなり、トッコさんは急に労働意欲を失ったよう
です。ネーム用のコピー用紙にシャーペンで内枠線を入れる作業を頼んだら、数十枚で挫折
していました。

2004.5.26
 ヤモリの住むアパートで暮らしていた友人が、鳴き声は「ちっちっちっちっ」だと教えて
くれました。母がヤモリだと思っていた声はなんだったんでしょう。
 以前は9時〜5時の間だけ執筆していたのですが、卓上蛍光灯を購入して以来、朝から晩
まで描いています。しばらく夕飯の支度を免除してもらうことになりました。トッコさんは
外食すると自分の食べたいものしか食べないので(大抵そうでしょうが)、多少心配です。

2004.5.27
 本日のディナーは卵ごはんとさつまあげ、漬け物。単身赴任の中高年でも、もう少し品数
が多いんではないかというシンプルな食卓です。
 割り箸にリボンを結んだ猫じゃらしで、ネームを描きながらコマの遊び相手をしています。
上の空で動かしていると、「もっと真剣にやりなさいよ」と猫パンチが飛んできます。

2004.5.28
 作り置きのきくカレーを作りました。畑でとれたタマネギと余った福神漬けを入れたので、
妙に甘いカレー汁。自分でも食べるのが嫌になります。
 中断していた第2話の作画を、やっと進められることになりました。折よくトッコさんも
休みなので、これから遅れを取り戻さねばなりません。

2004.5.29
 ごちゃごちゃ物が置いてあるオフィスの背景を描くときに、パソコンや椅子の裏に貼って
ある備品シールをつい描き入れてしまいます。総務課勤務が長かったせいかもしれません。
 細部にこだわる前にパースをなんとかしないと、事務所が四次元空間になりそうです。

2004.5.30
 蒸し暑いのでかるかんが換毛期に入りました。手をぬらしてなでると、抜け毛がごっそり
とれます。久々にエアコンを稼働し除湿しました。
 トッコさんがCG処理を中断してテレビを見にリビングへ移動。珍しく連続ドラマを見て
います。「もうあの番組をやってるのか〜、一週間がたつのは早いなあ」と思っていたら、
障害者を主人公にした似たようなドラマが他にもあるようです。

2004.5.31
 ガスレンジの上にクモが糸を張っていました。山上憶良の貧窮問答歌のようですが、米に
不自由しているわけではありません。気温があがって虫の活動が活発になり、早朝からコマ
が虫を追いかけてどたばた走り回っています。カーテンや網戸に駆けのぼるので、あちこち
穴があきました。
 第3話のネームを直しています。この先どうなるのか予想もつきません。
(作者がそんなことでいいのでしょうか)。
                                         

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