『いけちゃんとぼく』西原理恵子(書籍)
西原理恵子さんのはじめての絵本。
「いけちゃんは ずっとまえから そばにいる。」
辛いとき、悲しいとき、ひもじいとき、嬉しいとき、一緒に気持ちをわけあってくれて、「ぼく」の日常によりそう不思議な「いけちゃん」。
私も子どもの頃、田舎の暗い夜の便所や風呂が怖くて、架空の友達と頭の中で会話して、そういう怖さをやり過ごしていました。
でも「いけちゃん」は、もっと深くて暖かい存在です。
大好きな人と悲しいお別れをしたことのある人なら、読んでいて涙がこぼれるかもしれません。
『パーマネント野ばら』西原理恵子(書籍)
山村のおばあちゃん達にパンチパーマをあてる「パーマネント野ばら」が舞台。
お客の女性達の濃い生き様と恋模様が、笑いと涙でつづられています。
店で働く出戻りの娘が主人公ですが、脇を固めるおばちゃん達に圧倒されています。
恋愛にうとい私には、いまひとつ入り込めない部分もありましたが、田舎のおばあちゃん達のあけすけな世間話をかたわらで聞いているような、耳年増な子どもの気分にひたれます。
フィリピンパブのママ「みっちゃん」がお気に入りです。
どうも私はこういうドラッグクィーンとか女怪みたいなキャラが好きなようです。
『4ジゲン』第1巻 にざかな(書籍)
奇才ユニット「にざかな」による風変わりな漫画。あえてジャンル分けすれば、学園怪奇コメディとでもいいましょうか(違う?)。
時々、息が止まる程おかしいところもあり、ぞくっとして笑えないところもあり。
絵柄は可愛らしいので、寝る前に読んでもうなされたりはしないでしょう。
前作『B.B.Joker』で、原作のにざさんと作画のかなさんが致命的なけんか別れをして、解散したと記憶していますが、色々あって再結成された由。またお二人の漫画が読めて嬉しいです。
「楢山節考」(DVD)
飢饉の村の、壮絶な棄老の実態が描かれていました。
歌舞伎調の演出で、なじみが無いと少ししんどいです。
でも老人を捨てる山の山頂の、この世の物とも思えない景色が強く印象に残りました。
民話の「姥捨て山」と違い、救われないラストですが、あえて奇麗ごとにしないところに、この作品の良さがあるのではないかと思います。
『宮本常一の写真に読む 失われた昭和』佐野眞一(書籍)
「汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ。田や畑に何が植えられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ。駅へついたら人の乗りおりに注意せよ、そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。また、駅の荷置場にどういう荷がおかれているかをよく見よ。そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。」
「人の見のこしたものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。」
宮本が15歳で周防大島を離れるさい、父親が贈った言葉だそうです。
その言葉どおり民俗学者宮本常一は、名もない貧しい人達の、何げない日常を膨大な数の写真におさめました。
漫画を描くときも、こうした何げない日常をしっかりととらえ、描けるようになりたいと思います。
「イヌゴエ」(DVD)
人並みはずれて匂いに敏感な若者・芹澤君と、フレンチブルドッグ”ペス”とのふれあいを描いたほのぼのした作品。
悪臭公害対策協会で働く「臭気判定士」の芹澤君の、仕事や私生活での悪戦苦闘ぶりや消極的な性格は見ていてほほえましいです。どすのきいた関西弁をあやつるペスは逆に厚かましくて、好対照をなしています。
芹澤君の父がまたマイペースでいい味だしています。
人気ブログ「富士丸な日々」の、作者のお父様に通じるキャラかも。
児童虐待、動物虐待についてもちらっと出てきます。話にふくらみを持たせたかったのかもしれませんが、重い問題なのにさらっと流しすぎ。いっそ出さない方がいいのではと、そこだけ気になりました。
動物の出てくる映画やテレビ番組の、感情的なアテレコには違和感を感じることが多いのですが、この映画に関してはとても自然な感じですんなり見ることができました。
いびきをかいて爆睡するフレンチブルドッグを見たい方にはおすすめです。
ドリームボックス―殺されてゆくペットたち(書籍)
ペットブームの陰で、飼い主に捨てられたり、徘徊しているところを収容されて引き取り手がない犬や猫が、毎年40万頭も殺処分されるそうです。
この本はその現場(動物愛護センター)で働く獣医師の苦悩や、「殺処分」の過程を克明に描いています。
動物を飼うのは命を預かることだと、改めて痛感しました。
一度飼った動物は、家族として一生面倒をみてほしい。
そして今から犬や猫を飼いたいと思っている方は、ぜひペットショップやブリーダーから買うのではなく、愛護センターや保護施設から1頭でも多くひきとって、命を救ってほしいです。
「東京ゴッドファーザーズ」(DVD)
今敏監督。
クリスマスに捨て子を拾ったホームレス3人組が繰り広げるドタバタ喜劇。
元ドラッグクィーンのハナちゃんがいい味出しています。
「ネコのミヌース」
(DVD)
アニー・M・G・シュミット原作。
児童文学を映画化したオランダの作品です。
人間になってしまった猫の女の子が、新聞記者の秘書になって、猫の情報網を使って特ダネを集めるという”ねこ”コメディ。
出てくる猫がみな可愛くて、猫好きにはたまりません。
もしミヌースが女の子ではなく老猫やニャジラだったら、もっと渋い展開になっていたかもしれませんが、そういうのも観てみたい気がします。
『夕凪の街 桜の国』こうの史代
(書籍)
座右の書その1。
原爆をめぐる市井の人々の生き様を、丁寧に描いてあります。
被害者に対する自分のスタンスを問われる気がします。
『大漁!まちこ船』三宅乱丈
(書籍)
座右の書その2。
まぐろの餌として健気に働くまちこが可愛いです。
読むと元気が出ます。
『とりぱん』とりのなん子(書籍)
雪深い東北での暮らしを自然体で楽しむ著者の、身の丈エッセイ漫画。
庭に飛来する野鳥や小さい生き物たち、山菜採りなどのエピソードにほのぼのとさせられます。
流行のスローライフやロハスと違い、そこはかとなく漂うお気楽さと貧乏感。
そして著者も生き物もどこかちゃっかりマイペースに描かれているのがいいです。
大判コミックスです。
帯の不思議なあおり文句も見逃せません。
『蟲師』(書籍/DVD)
漆原友紀原作。異形の存在「蟲」に、つかずはなれずあたたかく寄り添う視線で描いています。
ナウシカの「蟲」は、人類と敵対する脅威として描かれている気がしますが、「蟲師」に出てくる蟲は、なんとなく気味が悪いけど敬して遠ざける感じです。
おそれられ時には忌み嫌われる蟲と、蟲にかかわるゆえに異端視される蟲師。
作者のいう「鎖国し続けている日本」のような世界観も好きです。
「瞼の光」の、奇病を病んだ娘が土蔵に隔離され、親身に世話をしていた少年に伝染するというシチュエーションは、せつなくて泣きそうになりました。
アニメの鮮やかさはありませんが、原作も味わいがあっておすすめです。
「砂の器」 監督 野村芳太郎(DVD)
松本清張原作。殺人事件の捜査線上にうかびあがる天才音楽家と、その過去。
父子の放浪の旅の背景に、ハンセン病患者とその家族に対する偏見が描かれています。
患者を悲惨に描き過ぎているという否定的な意見もありますが、子を思う父親の心情にうたれました。
最近、原作を読みました。原作は、謎解きがメインでした。映画を見て印象的だったシーンのほとんどが、原作にはなくてびっくり。
原作では犯人の父は事件の前に亡くなっていて、刑事との面会も父の慟哭も出てきません。
演奏会の成功と、父子の過去という明暗を交互に演出することで視覚・聴覚に訴えたのは、映像ならではの「進化」でしょう。
やたらと汽車の旅が出てきます。旅情が好きな人には、それも魅力になっていると思います。
『水木しげる[妖怪]人生絵巻』朝日新聞社
(書籍)
「『荒俣宏・京極夏彦プロデュース 大(OH!)水木しげる展』の展覧会図録を元に加筆・再編集したもの」だそうです。
個人蔵を含む貴重な作品の数々、写真の量に圧倒されます。
鬼太郎の家や人魂の天ぷらのレプリカ、水木しげるロードの妖怪ブロンズ像の写真などは、何度も取り出して眺めたくなる楽しさです。
『九州遺産』砂田光紀
(書籍)
橋や古い建造物、鉄道施設など、産業、軍事、公共・生活、商業といった多分野にわたる遺産101件をオールカラーで紹介してあります。
土木建築様式や歴史的意義を知ることができるのはもちろん、眺めるだけでも楽しく、旅情や絵心をそそられます。
夏季のみ湖面から姿を現す曽木発電所の煉瓦建物、長崎の軍艦島など、廃墟マニアでなくても訪ねてみたくなる美しい景色が満載。
九州の旅のおともにぜひ。