雑  記

〜どこかでだれかがひとりごと〜

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2012年4月14日(土)
異常な「扇動報道」がもたらすもの

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の「人工衛星ロケット」発射にあたって繰り広げられた日本政府の対応とマスメディアにおける連日の過熱報道には、朝鮮を悪魔化することを常態化させた劣悪ぶりが如実にあらわれていた。それはもう、発射直後に爆発・分解したロケット同様、ほとんど「ポンコツ」といっていいだろう。

 宇宙条約第一条には「宇宙空間は、すべての国がいかなる種類の差別もなく、平等の基礎に立ち、かつ、国際法に従って、自由に探査し及び利用することができる」とある。もちろん、そんなことはマスメディアだって当然知っている。「人工衛星」の打ち上げは、少なくともそれを実行している側であれば誰も非難することは出来ない。メディアがことさらに「事実上のミサイル」などという意味不明な言葉にすり替えて非難するのはこのためである。自国へも跳ね返る批判を言葉の言い換えで済まそうとする何とも白々しい姑息な振る舞いだ。日・米はもとより、世界各国で人工衛星搭載のロケットは打ち上げられ、切り離される残骸は洋上などに落下するし、その「危険性」を馬鹿丸出しで騒ぎ立てたりしないことを我々は知っているはずである。
 
 その科学技術は日常生活の隅々で利用されている。人工衛星が無ければ、我々が享受している正確な天気予報やナビ・システムやBSテレビ放送やオリンピックや緊急報道などの海外生中継はおぼつかない。そして、やはり当然のことながら、この技術は「大陸間弾道ミサイル」といった軍事運用の技術でもある。それこそ「軍事用偵察衛星」そのものも常時利用されているのだ。すなわち、衛星ロケットを飛ばす国々は、この軍用技術を獲得し、それを他国へ誇示していることに他ならない。
 かつて、米・ソが何年にもわたってしのぎを削り、天文学的予算を費やした宇宙開発競争は、地上からではなく、大気圏外から相手国を攻撃できるという圧倒的優位性を奪い合おうとするものだった。

 北朝鮮に科せられたミサイル開発を禁止する国連安保理決議違反を主張することは可能だろう。しかし、人工衛星ロケットの技術が高性能ミサイル技術でもある以上、人類平等の権利である宇宙利用を制限しかねないこの決議自体の妥当性もまた疑わしいものであることは否めない。
 政府と報道が一体になって煽るだけ煽り、あらぬ不安を国中に撒き散らすことによってもたらされるのは、PAC3やイージス艦といった迎撃装備を国内各地へ配備する軍事行動であり、利用価値も効果も定かでない予算獲得のための既成事実づくりであり、人々をその軍事行動の支配下におくことの正当化である。原発再稼動や消費税論議といった自国内に抱える問題から眼をそらせるカムフラージュ、溜まるフラストレーションの「ガス抜き」への利用である。
 「国民を飢えさせて700億円を挑発に使う」と難じるが、一方で朝鮮への人道的支援は拒否し、徹底的な経済制裁を続け、親族への物資援助や民間交流による学術資料や観光土産の持込さえ妨害しているのが日本なのであり、その政治姿勢のあり方への疑問がメディアで論じられることはない。
 繰り返される非難報道によって沸き立ち再生産される憎悪は、在日朝鮮人への、とりわけ子供たちに対する差別行為、ヘイトクライムへとつながる。前回もそうであったように、すでに13日、神奈川県の朝鮮学校生徒が通学途中に罵倒を浴びせられ、暴力行為を受けたことが少なくとも2件以上報告されている。政府やメディアのインチキ言説が、こういった行為に「お墨付き」を与えているのだ。

 「はやぶさ」の帰還に歓喜し、美談に美談を重ねて盛り上げるマスメディアが、朝鮮の「人工衛星」ロケットには、ミサイルへの不安と恐怖だけを煽りまくることによってさらけ出したのは、日常的に差別の脅威に晒されている在日朝鮮人への配慮など微塵も見られない、完全に想像力の欠如した差別の誘導・助長者としての姿である。


(参照)

 北朝鮮からの手土産を全部没収して日本政府は何をしたいのだ?
 http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20120410/1334013519 

 朝鮮の人工衛星打ち上げをめぐる狂騒を正す。 
 http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2012/440.html

 馬鹿騒ぎの結果…(怒)
 http://ameblo.jp/korea-one/entry-11221869464.html

 関連記事
 「ミサイル」と「ロケット」

 

2012年3月16日(金)
大阪府による植民地主義

 中央政界への進出を画策し、大阪ではやりたい放題の橋下大阪市長率いる「大阪維新の会」だが、その橋下は府知事時代の2010年に大阪朝鮮学園に政治介入し、「肖像画をおろすこと」などを補助金支給の「条件」とした露骨な嫌がらせを臆面も無く見せ付けた。
 公的な支援に乏しく、保護者、卒業生による寄付や、民族互助組織である朝鮮総連による支援によって必死に運営が保たれている朝鮮学校を追いつめることを憚らない橋下の背景には、単に排他的、差別的な個人の思想信条にとどまらない、日本における「朝鮮人にはなにをしてもかまわない」という底意地の悪い「蔑視」と、「民族教育」というものに対する無知と無理解がベースとして下支えしていることは言うまでもない。
 その差別政策は、同輩である「維新の会」幹事長の松井知事によって引き継がれ、そのやり口は、当初の予想通り、腐臭を放ちながら増長している。


 総連HPに「朝鮮学校指導」 大阪府・松井知事が補助金取りやめに言及

 2012.3.15

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が公式ホームページ(HP)で朝鮮学校の運営を指導していると明記している問題を受け、朝鮮学校側に補助金8100万円を支給する方針を示していた大阪府の松井一郎知事は15日、「朝鮮総連と一線を画したことになっていない」と述べ、支給取りやめに言及した。

 朝鮮総連のHPは「朝鮮学校の運営は、朝鮮総連の指導のもと教育会が責任を負っている。教育会は中央、県、学校単位で専従の活動家と同胞学父母を中心に組織されている」などと明記している。

 別ページでは「指導」は「協力」に書き換えられているが、松井知事は「ごまかしはやめてほしい。協力だの連携だの、総連と学校の関係が続いているのであれば支給できない」と語り、担当部局に対し朝鮮総連に真意をただすよう指示することを明らかにした。

 府は朝鮮学校への補助金支給にあたり、朝鮮総連との関係を清算する▽金正日総書記らの肖像画を教室から撤去−などの4要件を提示。職員室に肖像画を掲げていた学校に対し支給を凍結していたが、朝鮮初、中級学校8校は肖像画を撤去したとして、今月9日に平成23年度分の補助金8100万円の交付を申請した。

 http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120315/waf12031514130019-n1.htm


 戦前の併合・植民地支配の結果によって生まれた在日朝鮮人に対しては、日本は一義的にその責任を負っている。朝鮮学校の前身である「国語講習所」は、「皇民化」「同化」政策によって奪い取られた「民族性回復」の土台であり、日本で唯一子供の成長過程に沿った民族教育が実施されている朝鮮学校はその系譜としての象徴でもある。
 戦後の反省なき政策によって在日朝鮮人の民族教育は人命まで奪われる弾圧を受けた。その地位は貶められたまま社会の差別対象として放置され、ことあるごとに警察・公安権力介入の的にされてきた。近年は「拉致問題」や「核開発」といった話題で朝鮮をことさらに悪魔化し、愚弄し、嘲笑し、バッシングを助長する偏向報道は垂れ流され、ネットは捏造と誹謗中傷に溢れ、排外・差別主義者たちによる醜いヘイト・クライム、ヘイト・スピーチに一般社会は見向きもしない状況が続いている。そんな中で、国の政策である「高校無償化」からの朝鮮学校除外は、もう3年目に入ろうとしているのである。
 
 そもそも学校教育というものを存続させたいのなら、それぞれの学校方針や思想、運営のあり方に政治が介入することは厳に慎まなければならない。公立高校に対し日の丸・君が代を、それになじまない人にまで強要するというあり方は異常である。ましてや、朝鮮学校に対してあれこれ注文をつけることは、そこが民族学校であることと同時に、その歴史的経緯に鑑みても許されることではなく、それは、直ちに「では、日本がいったいどのようにマイノリティや民族教育の提供と保証をしてきたのか」が問われることになり、日本においてそれは「戦後責任」の問題と切り離すことは出来ない。一般論としての観点から言っても、日本における民族マイノリティに対する教育保障の杜撰さ、差別性は、国連の度重なる是正勧告をみるまでもなく明らかなことだ。

 「拉致」や「核」を朝鮮総連と直接結びつけたネタにしてバッシングや差別政策にまい進する姿には、侵略と植民地支配による責任からの逃避や忘却、あるいはその犯罪を相殺させて優位性を得ようとする欲望が垣間見える。しかし、どんなに自己満足に浸ったところで「歴史」が覆えることはないし、日本の責任が消えることも無い。彼らが醜悪な言説とともにその政策を実行すればするほど、その差別的人間性は露呈し、権力によって「他民族」を支配・蹂躙することを抑えられない陰湿な植民地主義人格であることが証明されていくのである。


【追記】

 大阪府は補助金の不支給を決定した。


 大阪府、朝鮮学校に補助金不支給「総連と一線」に疑問

 大阪府は19日、府内で朝鮮初中級学校を運営する「大阪朝鮮学園」に対し、今年度の運営補助金約8100万円(8校分)を支給しないことを決めた。同学園が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と一線を画すことなどを支給要件としていたが、その確証が得られないためとしている。

 運営補助金を巡っては、府は昨年12月、要件を満たすと判断した1校分800万円の予算を可決したほか、ほかの7校についても、23日の府議会最終日に計7300万円の予算案を追加提案する考えを示していた。

 府によると、その後、同学園の複数の生徒が1月から2月にかけ、北朝鮮へのツアーに参加していたことが判明。府は、ツアーが朝鮮総連主催かどうかについて、学園側に書面での回答を求めたが返事がなく、昨年12月の1校の可決分も含め、8校すべての予算を執行しないことを決定した。

2012319  読売新聞)

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120319-OYT1T00785.htm


 弱みに付け込んで「踏み絵」をさせ、心をもてあそび、蹂躙し、地域社会の一員としての努力や実績を顧みず、人間の尊厳を踏みにじる最悪の差別行為が繰り返されたことは、大阪府政の歴史として消えることは無い。
 
参照サイト
「朝鮮学校について思うこと」(日刊イオ) 「大阪の朝鮮学校補助金不支給について(Arisanのノート)


関連記事「読んでほしいブログ記事(2)」

関連おすすめサイト「朝鮮学校無償化問題FAQ」

2012年3月1日(木)
「河村たかし発言」に関しての秀逸な記事いくつか

 「河村発言があぶりだしたこと」Apes! Not Monkeys! はてな別館 2012/2/29)

 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20120229 (記事内のリンク先もぜひ)


 「河村たかし、南京大虐殺の否定に挑む」(誰かの妄想・はてな版 2012/2/29)

 http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20120229/1330531776 (前・後、数日の関連記事も)



(関連おすすめサイト「南京事件FAQ」
 http://wiki.livedoor.jp/nankingfaq/                                                                       

2012年2月24日(金)
最低の「歴史修正主義者」に対する返答(追記あり)

「虐殺はなかった」と繰り返し発言している河村たかし名古屋市長に対する「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館」館長の朱成山氏による抗議文。

 《名古屋市長の「南京事件はなかった」発言に公開抗議》
 http://www.janjanblog.com/archives/


「自分の父親は南京で親切にされた」から「虐殺なんてなかったはず」などと人間の善意や分別を根底から否定し、「目撃者がいない」といったデタラメな世迷言を繰り返す恥知らずな男に、この抗議文を「読める」だけの「心」は備わっているのだろうか。

【追記】
案の定、「差別の総合商社」石原東京都知事は下記のように河村発言に賛意を表明している。


《河村市長発言に賛意=南京事件で―石原都知事

時事通信 2月24日(金)17時24分配信 

 東京都の石原慎太郎知事は24日の記者会見で、河村たかし名古屋市長が1937年の南京事件を否定する発言をしたことについて、「河村市長の言うことは正しい。彼を弁護したい」との考えを明らかにした。
 知事は「当時あれだけの装備しかない日本軍が、あれだけの期間に(中国が主張する)40万人を物理的に殺せるわけがない」と述べ、大量虐殺はなかったとの認識を示した。
 また、自身を党首とする新党構想に関連し、「私が参加するなら憲法破棄を持ち出す」と述べ、新党を立ち上げる場合には、綱領に現行憲法の破棄と新憲法の制定を盛り込む意向を表明した。
 知事は「主権を奪われた国が占領のためにつくられた憲法を中心とする法律体系を独立した後でも続けることは、歴史的に正統性がない」と語った。》


 「40万人」という、現状だれも主張していない犠牲者数を否定の根拠にすることが単に石原の無知によるのか、虐殺を肯定する人間を荒唐無稽な主張をしているように思わせるための詐術かはとにかく、東京(石原)、大阪(橋下)、名古屋(河村)という日本の3大都市が、差別主義者・歴史修正主義者のそろい踏みというおぞましい現実は、この国のおぞましい将来像を暗示している。

【追記】

南京大虐殺否定発言 日中友好協会、名古屋市長に撤回要請
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120322-00000003-xinhua-int

毎日中国経済 322()1143分配信

【新華社東京3月21日=呉谷豊】 

日本中国友好協会はこのほど常任理事会を開き、名古屋市の河村たかし市長に南京大虐殺否定発言の撤回を求める決議を採択した。

決議では、旧日本軍による侵略戦争で、中国を含むアジア各国の市民が未曾有の災難に苦しんだ。同じ誤りを犯さない約束のもと、日本側は国際社会に復帰。南京大虐殺は旧日本軍の対中侵略行為を裏付ける典型的な事例であり、市長発言は国際社会の共通認識を否定し、日本への不信感を招いたとしている。

河村市長の発言は名古屋市と南京市の友好関係を傷付けただけでなく、日中両国民の相互信頼関係も損なった。同協会は河村市長に南京大虐殺否定発言の撤回と、正しい歴史観を持つことを求めた。

(翻訳 劉英/編集翻訳 阿部陽子)




                                          (参考図書) 

2012年2月18日(土)
読んでほしいブログ記事 (2)

<「日刊イオ」 月刊イオがおくる編集後記>

 何の「恥じらい」もない弾圧

 その眼差しから眼を逸らすことは許されない




                          (参考図書)     
2012年2月15日(水)
読んでほしいブログ記事 (1)

<「詩空間」河津聖恵のブログ>

「こるむ」第9号掲載エッセイ:「裁判を傍聴しながら考え続けていること──透明な怪物、可能性、現実化・・・」


(関連おすすめサイト「朝鮮学校無償化問題FAQ」
 http://w.livedoor.jp/mushokamondai/d/

2012年2月4日(土)
朝鮮学校への「高校無償化」制度即時適用を求める詩人の要請書
 以下転載です。
 元サイト記事はこちらです。→<「詩空間」河津聖恵のブログ>賛同をお願いします!「朝鮮学校への「高校無償化」制度即時適用を求める詩人の要請書」

★朝鮮学校に無償化を求める要請文への賛同のお願いです!★ 転載歓迎!

 2011年1月23日現在、朝鮮学校の無償化は、一向に実現の見通しがついておりません。昨年8月末に菅前首相が手続き再開を指示しましたが、その後12月には金正日総書記の逝去を口実に、政府は再び朝鮮半島情勢を持ち出し、中川前文科大臣は無償化か否かの判断が遅延する可能性を口にしました。年が明けまた文科大臣が変わりましたが、朝鮮学校の無償化について前大臣からどのような申し送りがされたのかも不明です。拉致担当大臣等、関係閣僚の顔ぶれからも不安なものが胸によぎります。
 いずれにしても、3月初めの卒業式までには無償化が実現されるよう、最大限の努力をしなくてはなりません。もうすでに1月も終わりで焦燥感を抱いています。そこで、2月に再度要請を行います。要請文を下記のようです。ぜひお読み頂き、賛同いただければと思います。

賛同して下さる方々は、
1皆様の中でこの要請文に賛同して下さる方々のお名前を、要請文の下に加筆いたします。その際、名前の公表の可否については次のabcをお選び下さい。なお名前を公表可能な方で、肩書きも公表可能な方は名前の後に( )を付けてお記し下さい(例:河津聖書(詩人)、※肩書きはもちろん詩人に限らず、多様な方の賛同を求めます)

要請の際に渡す紙の上にだけ、名前(肩書き)の公表が可能。
ネット上でも名前(肩書き)の公表が可能。
紙の上でもネット上でも名前(肩書き)の公表は不可能(この場合は、全賛同者の名前を記述した後の「他何々名」の人数に含めさせて頂きます)

2賛同者の方々で希望者には、コメントも寄せて頂きたいと思います。コメントは、要請文と賛同者名の後に、無記名で順次記載いたします。

要請文の内容に賛同して下さる方は、上記1について明記の上、私の下記のアドレスまでおお送り下さい。なお、この要請文は「詩人の要請書」となっておりますが、もちろん詩人以外の方々でも賛同大歓迎です。何かご質問、ご不明な点があれば何でもおたずね下さい。

賛同の送り先:kiyoe51803291@kib.biglobe.ne.jp(メールタイトルは「要請文賛同」でお願いします)

私たちのこどもたちのために、多くの方々がお力を貸して下さることを願っております!

                         2012年1月23日       河津聖恵   


内閣総理大臣 野田佳彦様
文部科学大臣 平野博文様

    朝鮮学校への「高校無償化」制度即時適用を求める詩人の要請書
 
 2010年2月、鳩山元首相は、当時の拉致大臣の要請を受け、朝鮮学校を高校無償化の対象から当面除外すると宣言しました。私達詩人は、同年8月に『朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー』を出し、一日も早い無償化の実現を訴えてきましたが、この二年の間、錯綜する情報に一喜一憂し、希望を抱くたび打ちのめされてきました。何よりも、一日千秋の思いで文科大臣の決断を待っていた生徒達の心の傷はいかばかりでしょうか。さらに、昨年結局は無償化の対象とされず、信じていた日本社会に裏切られた思いを抱いて巣立った卒業生達は、後輩もまた同じ思いを強いられているのを見て、どれほどやるせない思いでいるでしょうか。かれらの心を想像すると、私達の心も果てしなく痛みます。
 首相も文科大臣も二年で何度も交替しましたが、去っていった誰一人として、無償化の恩恵から理不尽に取り残されたままの子供たちのことを、もはや振り返ろうともしていません。子供達は、人間としての当然の権利から排除され放置されてしまいました。政治家たちとマスコミに煽られた世間の誹謗中傷も止まない中に。こうした事態の責任はすべて、みずからの利害と保身に走ったために無償化を実現できなかった政治家、高校無償化の理念を守り通せないでいる民主党、そして当初は朝鮮学校の無償化を決めていたにも関わらず、政治の介入を毅然とはねつけられない文科省にあるのではないでしょうか。
 首相は「政治家の仕事は、みなさんが安心して、それぞれがやりたいことが出来るようにお手伝いすることです」と先日テレビで言われました。その「安心して自己実現できる」という首相の言葉には、子供たちが安心して学べるようにする、ということも当然含まれると理解しています。その趣旨で行けば、朝鮮学校の生徒達もまた、日本の高校生と同じように、社会全体が慈しむ中で、安心して学べなくてはならない筈です。
 文科省もまた、菅前首相が無償化の手続き再開を指示したにも関わらず、積極的に動いているようには思えません。さらには同省の曖昧な態度につけ込むかのように、地方議会では補助金の打ち切りを次々決議されました。とりわけ震災時に被災者に炊き出しをした東北朝鮮学校に対する宮城県議会の補助金打ち切りの決議は、在日同胞社会に大きな悲痛とショックを与えています。
 しかし皮肉なことではありますが、この二年間、政治からのあからさまな非人間的な仕打ちを契機に、日本の良識ある人々の間で支援の輪は大きく拡がり出しました。各地で新たな支援組織も生まれました。さらに昨年11月には、海の向こうの韓国で、私達の『アンソロジー』のダイジェスト・朝鮮語版が上梓されました。これは同国の俳優権海孝(クォン・ヘヒヨ)氏(「冬のソナタ」等に出演)が朝鮮学校生達の描いた絵にエッセイを寄せた絵本との同時出版です。出版を企画した韓国の写真家は言いました。「私が朝鮮学校を支援するのは、同じ民族だからではありません。民族の文化や言葉を学ぶ生徒達の輝きに感動したからです。それは普遍的な気持です」。この言葉には、真の人間的な深さと温かさがあります。人間は、どんな心の壁も国家のエゴイズムも乗り越えて、人間を目指し続けるべきではないでしょうか。
 首相と文科大臣にお願いです。もうこれ以上、朝鮮学校の無償化除外という事態を引き延ばし、子供達の心に理不尽な悲しみを背負わせないで下さい。国策や政治の思惑で、いま現在も朝鮮学校でふつうに学び生きている生徒達の学ぶ権利と喜びを奪わないで下さい。首相と大臣は、朝鮮学校無償化実現という私達の悲願に、人間として向き合い、必ず叶えて下さい。
 一日も早く朝鮮学校の無償化が実現され、今の三年生が晴れ晴れとした気持で卒業できることを、私達詩人は切に願ってやみません。        
                         2012年1月18日    
                  『朝鮮学校無償化除外反対アンソロジー』刊行会
                                                    代表 河津聖恵


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