ヘルペス(単純疱疹)
現在のところウィルスを除去し再発を防ぐ方法はない
この項目は「やなぎばし快快通信第11号」の記事(図入りです)と一部重複します

【単純疱疹 と 帯状疱疹】
 「ヘルペス」という名で有名な皮膚病は大別して2種あり、どちらもいつでも、誰にでも起こりえるものです。病原体はいずれもウィルスで、たがいに「兄弟」のような関係にありますが、症状には大きな違いがあり、これら2つは別々の病気です。

【風邪のふきでもの】
 俗に「風邪のふきでもの」とよばれるもので、きわめてありふれた皮膚病です。免疫力が低下したときに発症すると言われています。風邪などによる発熱・紫外線・ストレス・重い病気のときなどがこれに当たります。
 免疫力の低下、などと言うと、なんだか怖そうな表現ですが、実際にはほかの健康上の問題が、なにもない人にも発症します
 単純疱疹は体じゅうどこにでも発症します。唇に出るもの(口唇ヘルペス)がおなじみですが、男女とも性器にもよく発症します(性器ヘルペス)。発症部位によりウィルスはT型とU型に分類されますが、詳細は省略します。

【なが〜い付き合い】
 単純疱疹の感染様式は接触感染です。初めてこのウィルスに感染したときは、何の症状もなく知らないうちに免疫ができてしまうことが多いと言われています(不顕性感染)。しかし小児期に感染すると発熱、ひどい口内炎・歯肉炎を起こすことがあります。
 発展途上国ではほとんどの人が小児期にヘルペスに感染しますが、日本では近年初感染年齢が高くなりつつあり、20歳成人の抗体保有率は50%前後です。
 いちど感染するとウィルスは知覚神経節(脳または脊髄の近く)に遺伝子の形で住みつきます。そして、前に述べたようなきっかけがあると、ある日突然発症(再発)します。
 現在のところ神経節内のウィルスを除去する方法はありませんので、この再発は生涯にわたり何度でも繰り返します。再発が少ないか多いかは個人によって異なり、毎週のように繰り返し続ける症例も知られています。また、数ヵ月の間だけ集中的に反復発症することも珍しくありません。

【単純疱疹の治療は時間との勝負】
 単純疱疹ウィルスに非常に有効な抗ウィルス薬が1988年に開発され、早く治すことができるようになりました。1日5回も内服しなければならない薬でしたが、その後改良され1日2回の内服ですむ薬が2002年から使用できるようになりました。
 ただし、この薬で早く治すには条件があります。発症後、1時間でも早く内服を始めなければなりません。せっかくの薬も、何日もたって皮膚病変が完成してしまってから飲んでもあまり意味がないのです。この薬はあくまで「進行をおさえる」ものであり、完成してしまった「キズ」を治すものではないためです。もし、手元に薬があれば、ムズムズ感などの特有の「前ぶれ」の時点で飲んでしまえば、発症を防ぐこともできます。
 ひんぱんに繰り返す人は、少量の抗ウィルス薬を毎日飲み続けることによって発症を予防できることが知られています。ただし、この「少量長期投与法」は、先進諸国でことごとく保険適応が認められているのにもかかわらず、日本では認められていません。さらに、投与期間が原則として5日以内に限られています。

【アトピーの患者さんはご用心】
 アトピー性皮膚炎の湿疹の部分に、突然小さい水疱がびっしりと多発し、もともとのアトピーも一時的に悪化します。単純疱疹ウィルスによって起こり、カポジー水痘様発疹症と言います。顔に出るとすごい形相となることもありますが、適切な治療で3日くらいで治っていきます。

貝瀬皮膚科情報紙「やなぎばし快快通信」11号にも「ヘルペス[その1](単純疱疹)」を図入りで特集しています(本文はほぼ同じです)。


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