疥 癬


 疥癬はダニの一種であるヒト疥癬虫が皮膚の表層に寄生して起こる、かゆみと伝染力が強い厄介な皮膚病です。戦後の大流行のあと激減しましたが、'70 年頃から海外旅行者が外国で感染して持ち帰ったため再び増え始め、近年では要介護者に多くみられます。普通の虫刺されと違い2〜4週間の潜伏期間があり、感染した患者さんが気付かれずに入院・入所し、施設内で集団発生することがあります。ときに家族や看護・介護関係者にも感染します。



〈疥癬虫〉 ヒゼンダニとも呼ばれます。約 0.4mmと小さいため肉眼ではまず見えません。人体を離れて長くは生存できず、2、3日で死滅します。そのため主に感染者との接触により感染しますが衣類・寝具・こたつなどを介し間接的にも感染します。感染者一人に数十匹程度の虫体がいると考えられます。

〈症状〉 腋(わき)のした・腹部・外陰部など、皮膚のやわらかい所や、特に小児では指間部・手のひら・足の裏に好発します。褐色のやや硬いツブツブが多発するのが特徴で、夜間に非常に強いかゆみがあります。この褐色の変化をとらえることが特に重要です。赤いツブツブや皮膚のカサカサもあり、全体に何となく汚く見えます。男性では陰のうに小さいシコリが多発することもあります。これらの発疹は疥癬虫に「刺された」ものではなく、虫体やフンなどに対する一種のアレルギー反応と考えられています。指間部などに虫が移動した跡が線状に見える「疥癬トンネル」も有名ですが、近年これがない例が多くなりました。
 一見、湿疹と似ているため湿疹と誤って副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を用いると、この薬剤の免疫抑制作用により爆発的に悪化してしまいます。皮膚科医は患者の皮膚からカサカサを採取し、顕微鏡で虫体や虫卵を見つけて診断しますが、逆にこれらが確認できない限り診断できません。
疥癬の症状(写真)
〈治療〉 おなじみのオイラックス軟膏(成分名クロタミトン)は、はじめ疥癬治療薬として開発された経緯があり、現在でも治療に用いられます。ただし、その殺虫効果は強くないため、医師の判断で強力な有機塩素系外用剤(γ-BHC)が用いられることもあります。これらは首から下にくまなく塗らなければなりません。この処置は通常4週間程度行う必要があり、手間と根気がいる作業です。可能なかぎり毎日入浴することも非常に大切です。イオウ入浴剤の六一〇ハップ(ムトーハップ)が効果的ですが、これは風呂釜や浴槽を傷めることがあり、どの家庭でも使えるものではありません。

〈感染予防対策〉
 疥癬虫は50℃以上で死滅するので、患者の衣類・シーツ類は毎日とり替え、熱湯に数分間以上つけてから洗濯します。寝具は日光消毒します。同居者・同室者は感染している可能性があるため皮膚科専門医(必ず顕微鏡検査が可能なところ)を受診してください。集団発生を瀬戸際で食い止めたいものです。
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