USB親指シフトキーボードの内部構造
02/03/06 さらに画像追加、記述修正
01/12/21 画像追加、記述修正
01/12/16 公開
新発売されたUSBキーボード。丸四日間使ってみてわかったことは、意外に疲れないことです。最初のカサカサしたフリクション(摩擦による重さ)が大分とれたとはいえ、お世辞にもよいキータッチとはいえないのは変りませんが、反面、妙に楽だなあという感じもします。
そこで中を開けてみましたので、観察結果をレポートしましょう。
1.基本的構造
このキーボードのスイッチ構造を下図に示します。
キーボード内部には、厚さ約1ミリの鉄板(1)が仕込んであり、これがキーボード面を支えています。
スイッチはメンブレンスイッチと呼ばれるもので、電極(4の青い部分)を印刷したプラスチックのシート(2)を二枚、電極を向かい合わせて置き、間に穴の開いたシート(3)を挟んだ構造です。キーを押していないときは、シート(3)の厚み分だけ電極は離れています。
(5)はゴムの成形品で、キーはドーム状の(9)の部分で押し上げられいてます。キーを押すとゴムが変形して、ゴムの突起(10)が電極を接触させてスイッチを入れます。キーを離すと、ゴムの復元力でキートップが戻ります。
この画像は、メンブレンスイッチの上電極とゴムカップ(5)です。電極が印刷されているシートは透明なので、ゴムカップの裏と、電極を押す突起が見えています。
こちらは反対側の下電極とスペーサシート(3)です。上の画像の電極とこの画像の電極が、ゴムのカップの突起で押されて接触してスイッチが入るわけです。
2.ピストン軸の存在
さて、キートップ(8)は、その下のデルリン製のピストン部品(7)に取り付けられています。つまりキーボードを支え、運動方向を決めているのはこのピストンです。ピストン構造は普通すべてのキーボードにありますが、安物はキートップと一体成形することが多く、キートップと別の部品が使われている構造は優秀です。
また(11)部のスキマがキーの押し下げのストッパーになっています。これも安物はゴムを押し切ってそのままというものも多く、節度感がありません。このキーボードの気持ちよい節度感はこのストッパー構造にありますが、接点が確実に閉じることと節度感の両立には、結構設計力がいるはずです。
結局このキーボードは、ゴムの役割は復元力と接点を閉じることにかぎられていて、ドームも大きくとられているため、ゴムキーの割には良い感触となっています。
この画像は、キーボードのアッセンブリーを本体ケースから外して、ケースの上にのせた状態で撮影してあります。もちろん通常はキートップより下の部分はケース内に埋まって隠れているわけです。
ケースのすぐ上に明るい灰色に見えている薄い板が鉄板(1)です。その上の少し灰色が濃く(モニターによっては茶色っぽく)見えるのがゴムシート(5)です。メンブレンスイッチを構成するフィルムはこの間にありますが、非常に薄いので見えません。
その上に見えているのがキーを支えているモールド(6)です。左から1、2、5番目のキートップ下には円筒状のピストンシリンダ部分が見えています。このシリンダはゴムシート部の上に湾曲して見えるクリーム色のモールドベースと一体成形されています。鉄板はスイッチシートとゴムを挟んで、このモールドベースに(下から)ビス止めされています。
3番目と4番目のキーは横長キーなので、シリンダは少し奥にあり、画像では見えません。
また針金のようなものが幾つか見えますが、これはキーを安定に上下動させるスタビライザー(横揺れ防止機構)で、横長キーにはすべて付いています。こういう仕掛けは安物のキーボードにはないもので、OASYSキーボードとしてのこだわりを感じます。
3.円筒配置されているキートップ
KB211や611は、金属バネを復元力に使えるのでリニアリティーがよく、指にぴたーっと吸いつくような風のようなキータッチを実現できますが、二つの欠点をもっています。ひとつは高価であること。現在メカスイッチを使ったキーボードは私は他には出会ったことがありません。
もう一つはキースイッチを平面であるプリント基板にマウントしなければならないことです。つまりすべてのキーのストロークは平行に移動します。
もちろんキートップの指に触れる面の角度が各段ごとに変えてあったり、中央の「はときいん」の列より数字キーのほうがキーが高くなっているなど、自然な運指ができるような工夫がされています。
しかしそれは、キートップの形状で実現されている(たとえば数字キーはかなり背高のキーになっている)にすぎず、キーのピストン運動方向自体はどのキーも基板に対して垂直で、指の運動の都合に対しては最適ではありません。
これに対してUSBキーボードは、キートップの高さは基本的にすべて同じで、その下の構造、つまりピストンや接点全体が立体的に配置されています。つまりキーボード内部の鉄基板(1)やモールド(6)は、上の画像でわかるとおり、最前列と最後列部分が高く、中央のはときいんの列が低くなるように配置されています。つまりキートップは大きな円筒の表面のような形状に配置されているのです。
この結果、キーは各段ごとにストローク方向を変えることができ、手前のキーは鉛直に近いのに、数字キーは斜め向こうに押される方向に沈み、その角度は段ごとに連続的に変化します。
また、親指左/右キー(これはわざと高くしてあります)を除く、すべてのキーのキートップが、手から大略等距離になるメリットが生じます。この結果、中央付近以外(つまり前列や数字キー)の打鍵安定度がよくなります。
次に全部で6段あるキーのストローク方向がすべて違いますから、近くのキーはかき寄せるように押し、遠くにある数字キーは斜め向こう方向に押すことができ、これは明らかに指の運動にマッチしています。
一般にキーボードの正確に速く打つには、姿勢を正して指を立てて、ピアノを弾くようなタッチで打つのが理想といいます。リズムも肝心とです。私の打鍵にNGを出したパソコン通信仲間もいます。私はどちらかというと「ごにょごにょ」と打鍵するからです。
ところがこのキーボードは、キーの立体的配置が良いため、キーボード上で指をごにょごにょ動かしているような感じで打鍵しても正確に打鍵できます。このことがキー入力をずいぶん楽にしてくれます。これはメンブレンスイッチならではの構造であるといえるでしょう。
4.キーの重さについて
KB611のような軽いキータッチは、高速に入力しているときはたいへんにありがたいのですが、考えながら打つときは、手のひらを持ち上げておくための力が必要で、これが意外に腕を疲れさせます。
前項とも関連しますが、USBキーボードの押し下げ力はKB611なんかにくらべるとかなり強いんですが、実はキーがこのくらい重いと、キーボードの上にのせた指がうっかりキーを押すということはなくなります。ですので考え事をしながら打つときは、意外に楽です。無理して応援しているわけではなくて、実際にその点では楽なのです。
残念ながらDELキーが独立していないので、しばしばホームポジションが崩れますが、文字の消去を後退動作中心にすれば(ワープロ時代は、そういえばそういう操作でした)、かなり使いやすいキーボードだといえるでしょう。
この三日間、実はかなり考えごとが必要な作文をしていましたが、このキーボードを意外にいいな、と感じた理由はこんなところにもあるかもしれません。
5.改善すべき点は?
コストも絡むので難しいでしょうが、多少の不満を書いておきましょう。
まずキーストロークの重さ。上記のようにメリットもありますが、高速にガツガツと入力するときは、さすがにちょっとつらい重さです。つまりもう少し軽くしてもよいかと思います。
それとシリンダーの精度をもっと良くしてほしいです。もっと径を絞って軸長を長く取り(つまりD/Lをよくする)、スキマ精度も良くすれば、滑り感触が相当よくなるはずです。見たところ、深さ方向に数ミリの余裕がありますが、これはいかにももったいないですね。鉄板をケース内でギリギリまで下げて、その分キー下の部品の軸長とシリンダー長を長くすれば、かなり感触がよくなるでしょう。
ついでに鉄板を底板に当ててしまえば、現在のポコポコした安っぽい打鍵音もかなり改善されるでしょう。現在はスキマがあり共鳴音がしているのです。円筒形状のキーベースはかなり剛性がありますので、この処理をすればかなり快適になると思います。
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