親指シフト応援演説(親指シフトは国力だ)

2000年5月23日更新
1999年8月8日公開


・親指シフター、数は劣勢だが、入力は速い

親指シフト入力方式をワープロだけのものと思っている方も多いようですが、パソコンでも使えます。

またキー配列がものすごく特殊で、買ったはいいがあとが困ると勘違いしている人もいます。しかしアルファベットの配列は、通常と全く同じQWERTY配列で、実はローマ字入力もできる配列です。したがってなんら困ることはないのです。

さて、現在日本人でキーボード入力をする人の9割以上は、効率の悪いローマ字入力でしょう。JISキーボードの仮名入力をする姿はたまには見かけますが、親指シフターは私の職場では1%以下です。

私は親指シフターとしてはそれほど速い方ではありませんが、通常の作文でキーボード入力を苦痛に感じたことは、まずありません。

また親指シフターとしては遅くても、ローマ字入力者の平均速度よりはずっと速いと思います。私と別の親指シフターのチャット画面をのぞいた人が、そのスピードにびっくりしていましたが、そのくらいのスピードは出ます。

しかしそれは、親指シフトが速いのではなくて、画面をのぞいた方の常識、つまり不合理なローマ字入力の速度が遅いのです。

 

・ローマ字入力は合理的でないいくつかの例

ローマ字入力は覚えるキーが少ないという意見もありますが、実際は実用速度に達する入力が出来る人は、一文字あたりの打鍵の組み合わせをパターンで覚えているはずです。つまり「か」なら「K」の次に「A」という意識ではなく、指が自動的に「KA」とセットで打つはずです。したがって一文字に付き一パターンを覚えているわけで、これは仮名入力を覚えるのと同じです。

であるなら、ローマ字入力は、覚える上での優位性はあまりありません。実際アルファベットをブラインドタッチ出来ない人がローマ字入力をブラインドタッチ出来るようになるまでと、親指シフト入力をゼロから初めてブラインドタッチ出来るようになるまでに覚えることは大差ないと思います。

ですので、両者は覚えた後の入力速度だけを比較すればよいのですが、ここでローマ字入力は基本的に一文字2打鍵の速度で入力するという速度的な遅さとリズムの悪さが注目されます。

入力作業中は頭の中で一定の速度で文章を読み上げて、それを打鍵してゆくのが普通ですが、ローマ字入力は、文字によって1打鍵と2打鍵がありますので、リズムが乱れやすいという問題があります。

1打鍵のところはカラ打ちでリズムを整えるとしても、どうしようもないのが1指2打鍵です。これは「ゆ」「ぬ」「じゅ」「む」「き」「で」「ざ」の各文字は、一指で2打鍵しなくてはならないということです。ローマ字入力のような一文字2打鍵方式は、うまく作ればキーの段数が減りますから便利なものだと思いますが、QWERTY配列はローマ字入力に対して著しく不合理だといえるでしょう。

キー配置が日本語用として合理的な親指シフターから見ると、こうした点は単に「不合理」を通り越して「気の毒」ですらありますが、その点を指摘すると「いや、私はこれで使いやすい」と猛然と抗議されますから、きっとローマ字入力しか使わない人は、この不合理に全く気づかないのでしょう。本人の気づかない疲労も大きいと思うのですが。

 

・さらに指が覚える量も二倍

もう一つ、親指シフターは「思います」「ありません」などの決まりきった日本語の語尾は、5〜6文字単位で指が覚えてしまっていることが多いと思います。指がひとしきり「グシャ」っと動くと、画面には「思います」が現れ、目が確認して「。」を打ち込んで確定、という流れですね。こういう単語は、自分の指がどう動いているかを私自身把握していません。

ローマ字入力でもかなりの単語を指に覚えさせてはいるでしょうが、大略倍の長さを覚えさせなければならないので、その能力も親指シフトの半分でしょう。

 

・ローマ字入力リミッタ説

結局ローマ字入力にはいろいろな欠点があって、親指シフトにくらべて速度は遅いし、疲労も多い、生産性の悪い方式です。

一般に(親指シフトを含めて)、どんなキー入力よりも人間の思考のほうが速いですから、人間の思考は喋っている時よりは遅くなっていると考えられます。親指シフトでもそれはそうなのですが、ローマ字入力はさらに遅いわけで、日本語の入力方式の主流がローマ字入力であるということは、日本人の電子文書作成の知的生産性にはローマ字の速度で速度リミッタがかかっているといえるでしょう。

海外のビジネスの現場で欧米人が26文字のアルファベットだけであっと言う間にパソコンの画面をうめてしまうのを私は何度も目の当たりにしています。海外からのお客さんを迎えてミーティングするとパソコンに議事内容を打ち込んでいる人がいるケースが多く、会議終了後に見ると、ちょっと整理するだけで議事録として発行可能な文書量が打ち込まれています。私はこうした状況をしじゅう見ていますが、日本人として当然あせりと脅威を感じます。

私は折にふれて「親指シフトの普及は国力にかかわる」と書いていますが、その理由は、こうした知的労働生産性の違いで世界規模での競争に負けたくないからです。

実は、ローマ字入力が主流の中で親指シフトを使うというのは、日本人社会で私自身にとっては有利この上有りません。実際、他人様よりは、少しはいい仕事をできていると思いますし、自分の価値を高めることができているという実感もあります。端的に言って私の決定年俸のなかに、親指シフトに由来して高まった部分があるといういうことです。

その一方で、親指シフターの勧めに耳を貸さないばかりか、勧めに対しては「自分は十分満足なのに何が悪い」、あるいは「そんな特殊な方式は潰しが効かなくてかえって不利」というのがローマ字入力派の主たる反応です。私はそこに均質社会にどっぷり漬かり何の危機感も持たず、外圧によってしか自己を改革できない日本民族の本性を感じます。

・結論

しかしこのリミッタに限っては外圧は外してくれないでしょう。日本語の入力ですから、日本人にしか改革出来ないのです。

結局、日本人全体が国際社会でどのように競争力を維持、発揮してゆくか、という観点からは、ローマ字入力が最善の選択であるはずがないことに、日本人自らが気づかなければならないのです。そういう意味では、日本人にとっていかにあるべきかという理想を考えず、就職に有利だから、道具が買いやすいからと安易にローマ字入力を覚えさせる教育現場は、A級戦犯に相違有りません。

昨今JIS化の話も聴こえてきますが、国際競争力の観点からは親指シフトのJIS化が成れば、それはそれは喜ばしいことです。しかし、制定されたとして、その後どう普及させるか。何の理想も描けない教育現場にそれを望めるのか…。

いずれにしても私は親指シフトを自分の武器として毎日活用しています。願わくは日本国民が共通の武器として日本人同志のコミュニケーションの武器として親指シフトを使い、国際競争力を極限まで高められることを願ってやみません。そのためにも私は親指シフトを応援し続けたいと思います。

 

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