肌が外気に晒され、空気の冷たさに震えるが、原因はそれだけではない。
肌に触れてくる指先が、凍えるように冷たいのに比例して、心の芯までもおぞましさで背筋に寒気が走る。
心を通わせていない相手との肌の触れ合いがこんなにも嫌なものなのか。
これまでセックスしてきた中で、こんな気持ちになることなどなかった。
女とのセックスは勿論、ヒューズとのセックスでも。
男に抱かれるなんて、ヒューズ以外考えられず、想像するだけで御免だ。
自分がその窮地に追いやられているこの現状は、何としても阻止したいもので、
押さえつけられている身体を無理に捻る。
そのロイの姿を見て、ハボックは薄く笑った。
「この状況で逃げられると思ってるんすか?」
固く閉じられていた両足をこじ開け、ハボックは身体を進めた。
「っ!!今ならまだ許してやる。私の上からどけっ!!」
「まーだ、そんなことを?そういえば明日でしたね、中佐が来るの」
「・・・」
ロイは身体を強張らせた。
「中佐、どう反応すると思います?大佐の身体にたくさんの痕があったら」
「お前・・・まさか・・・」
「中佐になんて言い訳します?」
「お前・・・それを知っていてわざとなのか・・・?」
「ええ。だって、どうせヤルんだったら、中佐に知れた方がおもしろいでしょ」
ハボックが吐息がかかるくらいに顔を近づけると、ロイはそれを避けるように顔を背けたが、
顎を掴まれ、無理矢理顔をハボックに向けさせられた。
「あの人、いつも何だかんだ理由をつけてはあんたに会いに来るじゃないっすか。
でも、オレがあんたを犯すって決めてから、全然来なくなっちまって。なかなか来る予定がなかったから、
もういいからヤッちまおうかなーって思ってたんすよ。そしたら、やっと来るみたいなんで・・・ずっとこの日を待ってたんですよ」
ロイは耳を疑いたくなった。
今日こんなことがあるまで、ハボックは自分に忠実に接していたのだ。
それはずっと変わらず、この直前まで変わらなかった。
いつから彼はそんなことを考えていたのだろうか。
ハボックの表面に騙され、自分は彼の何を見ていたのだろう。
こんな冷たい目をする男だとは思っていなかった。
「お前は何をしたいんだ・・・」
「おしゃべりはこれくらいにして、始めましょうか」
我慢もそろそろ限界なんで。
それが開始の合図だった。
指が1本入ったソコは、侵入を拒んでいて、なかなかその先を許さない。
緊張と恐怖でガチガチに強張っているのと、拒絶の意味も込めて、力を込めて抵抗していた。
「キツイっすね。もう少し力を抜いてくださいよ」
ロイの抵抗を何とも思っていないのか、口元が笑っているように吊り上げられている。
それでいて、目は全く笑っていない。
ロイは冷たい青に竦む感覚を覚える。
それが、また恐怖を生み、ソコに力を入れてしまう結果となる。
無理矢理捻じ込められる指は激痛を与え、冷や汗が背筋を伝う。
苦しさに短くて浅い呼吸で少しでも痛みを散らそうとするが、指は入り口付近で留まることなく、グリグリ奥に進んでいく。
無理矢理こんなことをされる屈辱に身体が震えた。
「そんなに力入れてたら、痛いと思うんすけど」
おそらく、痛がっている様子も、屈辱に耐えている様子も全て楽しんでいるのだろう。
声の響きでそれが伝わると、また悔しさでロイは涙を一筋流した。
「はっ・・お前・・何でこんなこと・・」
ハボックの暴挙が理解できなかった。
突然のことで頭が付いていかない。
自分のことを抱こうと思っていた、とハボックは言った。
何でそんなことを思い至った理由が分からない。
怒り、恨み、憎しみ・・・それとも。
ヒューズと恋仲関係であることもハボックは知っていて、あえてヒューズに知らせてやるのだという。
だから、ヒューズが東方に来る前日であり今日を待っていたのだと。
「理由?ああ、もしかして勘違いしてます?大佐のことが大嫌いとか、
中佐に嫌がらせをしてやるとか、そんなこと思っちゃいませんよ。」
「・・・っ、だったら・・何で・・こんなこと・・」
声が震える。
入れられた指は動くことを止めず、奥をかき乱し、ところかまわず刺激していた。
ヒューズに抱かれているときはこんな扱いを受けたことが無い。
常にロイの身体を気遣ってくれて、乱暴なことは決してしないのだ。
時間をかけて身体を開くヒューズとのセックスしか知らなかったロイは、
痛さと恐怖しか感じない乱暴なハボックの行為に、悲鳴を上げていた。
まだ終わらないのも分かっているので、この悪夢がいつまで続くのかと思うと、気を飛ばしてしまいたくなる。
「愛してますよ」
「え?」
自分でも間抜けな声を出したと思う。
信じられなかったのだ。
非道な行為を行っている張本人が、今更合いの言葉を紡いだことが。
これは愛とは程遠い行為だと思う。
相手を傷つけることしかしない行為だ。
そして、愛の言葉を紡ぐ男の目は、冷たく凍っているのだ。優しさなんて微塵も感じられない。
どうやって、その言葉を信じればいいのだろう。
「嘘だ・・・」
ロイは力なく首を横に振った。
「本当ですよ。あんたを愛してます、大佐」
噛み付くように口付けがなされた。
深く深く入り込んでくる舌に、ロイは息苦しさを覚える。
限界まで口を開かされて、それでもなお、奥に向おうとするハボックに、噛み付いた。
ハボックは反射的に唇を離し、滲んだ血を軽く指で拭った。
「こっちは愛してるって言ってんのに酷いっすね。これがあんたの回答ってわけっすか?」
「嘘・・をつくな・・・」
「嘘にしたいんですか?でも、これからっていうか、今してることは全部現実ですよ。
あんたが、どんな理由つけても勝手ですけど、オレはあんたを愛してる。
少しは、健気な部下の気持ちも汲み取ってくれたっていいんじゃないっすか?」
「勝手なことを・・」
呼吸が乱れて、思うように言葉にすることができない。
まだ指は入ったままで、ハボックが話している間も、自分が言葉を発する間も、
身体に響いて、中を探られている感触がまざまざと分かるのだ。
中で動かされる度に、反応する身体をこれほど疎ましく思ったことはなかった。
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