「大佐って一人Hするんすか?」
ロイは眉間に思いっきり皺を寄せた。
何を訊くんだ、この馬鹿は。
無視しようと決め、黙ってグラスを傾ける。
「ちょっと〜〜無視しないでくださいよ〜。可愛い部下が質問してるんですから
答えてくださいよ〜」
「可愛い部下はそんな質問はしない」
ぴしゃりと言い付け、この酔っ払いめ、と心の内で呟く。
ハボックは顔を真っ赤にして終始笑顔だ。
酔っているのは一目瞭然。
おそらく明日は二日酔いだろう。意外に酒に酔いやすいことが初めて分かった。
今まではかなりセーブして飲んでいたにちがいない。
こんなに酔っ払ったハボックを見た事がなかったので、ロイはそう解釈した。
いつも帰ることを考えなくてはいけないから、心行くまで飲めない。
ハボックがそう言うから、だったら自宅で飲むか、と言ってみた。
ハボックの家では自分が落ち着かないからだ。
上官の家で飲むのを拒否するかと思ったが、ハボックは一切躊躇うことなく頷いた。
やけに嬉しそうだった気がするが、おそらくロイの家に常備してある高価な酒に期待しているのだろうと思う。
仕事を終えると、帰宅中に少し酒を買い足して、ロイ宅で2人で飲み始めた。
ハボックはロイよりもピッチが早く、量も飲む。
身体の大きさに見合っていると言ってよいのかもしれない。見ていて気持ち良い飲みっぷりを発揮した。
士官学校を卒業してすぐの頃はヒューズと無茶な飲み方もした。
あの頃の自分はやっぱり若かったのだと、ハボックの飲み方を見ていて、ロイはしみじみ実感した。
今ではすっかり落ち着いてしまって、悪酔いせず、次の日に響かない飲み方以外しないようになった。
そんなことを考えながら、酒を嗜んでいたら、ソファに座る部下は立派な酔っ払いになっていた。
「大佐〜」
「私はそんなことをする必要がない、馬鹿」
腰にまでしがみついて尋ねてくるでかい男に、軽い溜息をつき、投げやりに答えてやった。
「まさか不能?」
ロイは拳骨でハボックの頭を殴った。
「いて〜〜〜っ!!ひでーーっ」
「お前がおかしいことを言うからだ!!」
「だって、普通するでしょうが」
「私はお前と違って、自慰をする必要があるほど溜まっていないんだ」
「あー、大佐はおモテになりますもんね」
「まあ、そういうことだ」
刺されてもおかしくない内容を、何事もないかのように述べる。
ロイとしては、多くの女性と関係を持っても悪気はない。
今まで一度も女性関係で揉めたことはないのは不思議だと、東方司令部の裏で常に囁かれている。
「でも昔はしたでしょ?ちなみにおかずは?」
「私は酔っ払いでも容赦しないぞ」
「燃やさないでくださいよー」
何がおかしいのか、けらけら笑い出す。
「やっぱり、最初はその辺のポルノ雑誌でした?オレはそうでしたよ」
「お前のそんな話なんか聞きたくない。大体、そんなこと訊いて何が楽しいんだ?」
「男同士の軽い下ネタ話じゃないっすかー」
またケラケラ笑い出す。
「あいにく私はもうそんな下世話な話をする年齢じゃないんだ」
「三十路間近だとそうなるんすか?」
「お前、酔ってたら何でも許されると思っているのではあるまいな?」
酔っ払いの戯言と思って適当に相手していても、一々癇に障るのだ。
「こんな時じゃないとこんな話できないでしょうが。
大佐は若かりしとき、こういう下世話な話はしなかったんで?」
「してないな」
「またまた〜」
「してないと言っているだろうが!」
「分かりましたって。じゃあ、昔しなかった分、今話しましょうよ」
「お前が女性に振られる理由が分かるな・・・」
「オレ、女の前じゃ、明け透けには話さないっすよ〜」
「最低だ・・・」
「最低ついでに、最近シテます?」
「これ以上しがみつくなーっ!!」
「えーいいじゃないですかー」
ますますしがみつく腕に力を込める。
酔っ払っていてもしっかり力は健在だった。
「オレはしっかりヌいてますよ〜」
「だから聞いてない!!」
「オレのおかずは大佐です」
気が一瞬遠くなり、思考が停止した。
今、こいつは何を言ったのか。
自慰で思い浮かべる相手を誰と言ったのだろう。
いや。そもそも相手は酔っ払いだ。自分が何を言っているのか分かっていないにちがいない。
そう考えないと、どんどん恐ろしい方向に思考が行ってしまう。
「冗談は・・・顔だけにしろ・・・」
これ以上はないと言うほど、顔を引き攣らせて、腰にまとわり付く腕を引き剥がそうと試みるが、びくともしない。
「それって失礼ですよー」
「どっちが失礼なんだ!!」
「だから、いつもオカズにしている人がこうして目の前にいるとついこうキちゃって」
「わーーーっ!!何を押し付けてるんだ!?」
腰に押し付けられた固い物からロイは逃げようとしたが、やはり腕の拘束が解けなかった。
「落ち着け!!お前は今酔っ払っている!!だから正常な思考ができていないんだ!!
私はお前の上司で、しかも男だ!!お前は女性大好きだろうがっ!?」
「確かに女は好きですが、大佐の方が好きで〜す」
視界が急に反転し、部下の背後に天井が見えた。
押し倒されたのだと分かった。
「というわけで、大佐。オレ、もう我慢できないんです」
「な、な、な、何がだ!?」
「いただきます」
「ぎゃーーーーっ」
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