ハボックは執務室にいるであろう上司にどんな顔して会えばよいのか、昨夜からずっと考えていた。

昨日は後始末だけして帰ってしまった。
これでもハボックなりに色々考えたのだ。そのまま残って、意識を取り戻したロイにまずは謝罪して、それから いい訳じみててもどれだけロイのことを想っているかを話そうかと考えた。

だが、はたして強姦した男が目覚めるまでずっとその場にいたらどうだろうか。
目が覚めても、強姦した相手がずっと傍にいたら恐怖しか感じないだろう。

また、残るにしろ帰るにしろ、どちらにせよロイをこのままにはしてはおけない。
ロイの身体中にハボックとロイ自身の体液が飛び散っていて、ハボックが 注いだ液が中から零れてシーツを濡らしていた。
シーツまで交換すると、ロイを起こしてしまうかもしれない。 ここで起こすことが果たして事態を好転させるのか分からない。お互いに一晩くらい時間を置くことが必要 な気もする。今起こさなくても、どうせ明日になれば嫌でも顔を合わせなくてはいけないのだ。
ハボックはせめてもの罪滅ぼしに、次の日が少しでも楽になるようにと思い、身体を拭こうとした。 その前に中の液を出した方がいいだろう、と先ほどハボック自身を収めていた部分にそろりと指を這わせる。
罪悪感に苛まれながらも、犯されて気を飛ばしたロイに欲情する自分がいることにハボックは自己嫌悪に陥った。
悪循環だ。 指を差し入れると、流れ出てくる自分が放った量に何回ロイを犯したのか自覚させられた。
あの時の自分はこれが最後かもしれないと思い、それだったら枯れるまで出し尽くしてしまえと自分本位過ぎる 衝動に駆られ、只腰を突き動かしたのだ。







(本当にすいませんでした・・・だけど・・・)

いつ燃やされてもおかしくないのは重々承知している。 今更言い訳をしたところで、火に油を注ぐようなものだ。
ロイにしたことは、確かに弁解のしようのない事で、立派な犯罪なのも分かっている。

(どう考えても燃やされるよな、オレ)

不機嫌オーラが全開のロイは人を寄せ付けない威圧感を出していた。
見えない空気の壁に塞がれ、ハボックは近づける限界の場所から書類を丁重に渡した。 紙の音だけが室内に響く。互いに終始無言だった。
部屋の空気はハボックにとって針のむしろで、謝罪するタイミングを掴めないまま、沈黙に耐えていた。
ロイは全て目を通し終わると、すぐサインをして無言でハボックに付き返し、ハボックもまた黙ってそれを受け取る。

(燃やされる前に言わないと)

己の謝罪が先か、燃やされるのが先か。戦々恐々していたが、まだ身は無事だ。
態勢を立て直すために部屋を一旦後にしようか考えたが、これ以上、後回しにしても、気まずいだけだ。 サインをもらったので、後は持ち場に戻るだけなのだが、意を決してあとしばしこの部屋に留まることにした。

「大佐」

ずっと逸らしていた視線を上げて、ロイの正面に向かう。 ロイは不機嫌を隠さずに、無言でハボックを睨みつけていた。

「昨日はすいませんでした」

頭を深々と下げ、謝罪の言葉を口にする。

「取り返しのつかないことをしたと思っています。謝って済むことじゃないのも分かってます。 燃やされてもおかしくないです。というか、今日は会ったらすぐ燃やされると思ってました。」

腕を組み、ロイは表情一つ変えず、沈黙を保ち続けている。

「ただ、燃やされる前にこれだけは言っておきたくて・・・。 大佐、オレは本気であんたのことが好きなんです。だからといって、許されるとは思ってません。 でも、ただヤリたかったからとか、そういう性欲だけで突っ走ったとは思われたくなくて・・・って オレ何言ってるんだろう・・・」

黙って、じっとこちらを見るロイの視線に居た堪れなくなってきたのも相まって、ハボックは自分でも何を言っているのか混乱してきた。

「誤解しないために言っておきますが、ヤルことが目的で大佐の家に入ったんじゃないんですよ!! まあ、その・・・結果的に送り狼になってしまいましたが・・・。 初めて大佐の家に入って嬉しくて、そういう時に・・・その・・ヒューズ中佐の話を聞いて、勢いあまって・・・ その・・・オレも途中で止まらなくて・・・もっと大佐のコトを考えられるくらい余裕があればよかったんでしょうけど、 初めてだったのに、あんな無理矢理で・・・」

ロイはまだ無言だった。せめて何か一言でもよかった。
聞いているのだろうが、一方的に捲くし立てているこの状態はどうも落ち着かず、ただ焦りだけが出てくる。
かといって、自分が黙り込むわけにはいかない。今は誠意を込めて謝罪する場なのだ。 許してほしいとは言わない。燃やされる前にこれだけは伝えておかなければいけない、とハボックはロイ宅を去った後、心に決めていたのだ。
それでも、ロイの沈黙は想像以上に辛く、無理矢理奮い立てた心はどんどん萎んでいく。

「お願いします。何か言って下さい。燃やされる覚悟はあります。その前に、大佐の声を聞かせてください。 ・・・そうっすよね・・あんたを無理矢理犯したヤツと口を利きたくないですよね・・・。 本当に、オレって無神経なヤツですね・・・。それに、あの時も・・。その・・・大変言いにくいんですが、 あまり処女とはヤッた経験がないので・・・上手く痛みを感じないでっていうのが、ちょっと勝手が分からなくて・・・ やっぱり痛かったですよね・・・。大佐の初めての男だと思うとつい益々興奮してしまって・・あ、でも初めてじゃなくても 全然気持ちに変わりはありませんから!!別に初めてだとか、そういうの今まで気にしたことなかったんで、 うおっ!!」

「言いたいことはそれだけか」

ロイは発火布を右手にはめ、仁王立ちでいた。

「そこになおれ。調教しなおしだ」




(up.05.04.17)

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